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2017年9月8日研究開発成果 比較ゲノミクスでコレラ菌流行株の進化が明らかに

国立大学法人岡山大学
国立感染症研究所
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の三好伸一教授らの研究グループは、国立感染症研究所などと共同し、コレラ[1]流行の中心地インド・コルカタ市において、2007〜2014年に患者から単離されたコレラ菌80株のゲノムを解析。ゲノム情報に基づく比較ゲノミクス[2]の結果、2010年を境に流行株が強毒株に置き換わったことや、それ以降も流行株が継続して変異していることを明らかにしました。この結果は、コレラ流行が毎年繰り返されるコルカタ市において、流行株が頻繁に交代していることを示唆しています。本研究成果は2月13日、米国のオンラインジャーナル「PLoS Neglected Tropical Diseases」に掲載されました。

今後は、コレラ菌流行株の発生経緯や伝播経路を解明するため、環境水(河川やため池の水など)や周辺国(バングラデシュなど)から単離されたコレラ菌についても、同様の比較ゲノミクスを行うことを計画しています。また、取得したコレラ菌のゲノム情報は、広く共有して積極的に活用してもらうため、データベースにまとめ、Web上で公開する予定です。

業績

三好教授らの研究グループは、国立感染症研究所、本学インド感染症共同研究センター(インド拠点)が設置されているインド国立コレラおよび腸管感染症研究所(NICED)と共同して、コレラ流行の中心地インド・コルカタ市において、2007〜2014年に患者から単離されたコレラ菌80株(各年10株ずつ、8年間)のゲノム解析を行いました。得られたゲノム情報に基づいた比較ゲノミクスの結果、2010年を境にして流行株がクラスター1[3]からクラスター2[3]に置き換わったこと、2010年以降もクラスター2の流行株に継続して変異が生じていることを明らかにしました。また、クラスター2の菌株は、コレラ毒素の生産量が多く、クラスター1の菌株よりも毒性が強いことも解明しました。この結果は、コレラ患者の入院期間が、最近は長くなってきている事実とも矛盾していません。

背景

本学は文部科学省「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」に採択され、2007年にコルカタ市のNICED内にインド拠点を設置しました。コルカタ市など、ベンガル地域はコレラ流行の中心地(震源地)です。1961年から現在まで続く第7次パンデミー(大流行)では、現在までに流行の波が3度ありますが、いずれの流行もベンガル地域から始まっています。この事実は、コレラ菌流行株がベンガル地域で発生していることを示唆しています。しかしながら、流行株がいつ発生し、どのような経路で伝播していったのかに関しては、不明な点が多く残っています。

これまで、コレラ流行の波が3度あることは、国際的な共同研究によって明らかにされていたものの、1カ国あたりの解析菌株数はわずかでした。また、どの国においても、複数年にわたる継続したコレラ菌のゲノム解析は行われていませんでした。

見込まれる成果

本研究により、コレラ菌流行株が頻繁に交代していることが明らかとなりました。今後は、コレラ菌流行株の発生経緯や伝播経路を解明するため、環境水(河川やため池の水など)や周辺国(バングラデシュなど)から単離されたコレラ菌についても、比較ゲノミクスを行うことを計画しています。 取得したコレラ菌のゲノム情報は、広く共有して積極的に活用してもらうため、データベースにまとめました。Web上(感染症研究国際展開戦略プログラム[J-GRID]で公開する予定です。

特記事項

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「感染症研究国際展開戦略プログラム」の一環として行われ、国立大学法人岡山大学、国立感染症研究所が推進している研究開発プロジェクトの成果の一つです。

用語解説

[1]コレラ:
コレラ菌(Vibrio cholerae O1/O139)を原因菌とする急性の下痢症であり、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)では3類感染症に分類されています。米のとぎ汁様と形容される激しい水様性の下痢、高度の脱水症状などが主な臨床症状です。また治療方法は、脱水症状の改善のための経口補液(ORS)による水と電解質の補給です。コレラはアジアやアフリカ地域を中心として流行が繰り返されており、毎年10万人前後(28,000〜142,000人)が死亡しています。なお、日本国内には菌が常在していないため、国内のコレラ患者は年間10〜20人程度となっています。コレラ菌には、古典型(アジア型)とエルトール型の2つの生物型が存在しますが、第1次パンデミー(1817〜1823)から第6次パンデミー(1899〜1923)は、古典型コレラ菌を原因として、コルカタ市などのベンガル地域(コレラの母国)から、世界各国に拡大しました。今日まで続く第7次パンデミー(1961〜)は、エルトール型コレラ菌が原因です。これはインドネシアのスラウェシ島(セレベス島)に端を発しますが、パンデミーはベンガル地域から始まりました。
[2]比較ゲノミクス:
本来は、異なる生物種のゲノムを相互に比較することによって、対象生物種の進化上の関連や進化過程を推定する研究を指します。本研究は、コレラ菌のみを対象としたものですが、多数の菌株のゲノムを比較して、各菌株の関連性を推定しましたので比較ゲノミクスという用語を用いました。
[3]クラスター:
特定の指標や特徴などに基づいて、集団を複数のグループに分類することをクラスタリングと言います。そして、分類された各グループをクラスターと呼びます。本研究では、コレラ菌の菌株の系統樹を作成するため、ソフトウェアBayesian Evolutionary Analysis Sampling Trees(BEAST)を用いて、ベイズ法に基づいた解析を行いました。その結果、コレラ菌をクラスター1と2に大別することができました。

論文名と著者

論文名:
 Comparative genome analysis of VSP-II and SNPs reveals heterogenic variation in contemporary strains of Vibrio cholerae O1 isolated from cholera patients in Kolkata, India.
掲載誌:
PLoS Neglected Tropical Diseases, 11(2):e0005386 (2017)
著者:
Imamura D, Morita M, Sekizuka T, Mizuno T, Takemura T, Yamashiro T, ChowdhuryG, Pazhani GP, Mukhopadhyay AK, Ramamurthy T, Miyoshi S, Kuroda M, Shinoda S,Ohnishi M
DOI:
10.1371/journal.pntd.0005386

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岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)
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TEL:086-251-7966 FAX:086-251-7966

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戦略推進部感染症研究課
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最終更新日 2017年9月8日

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