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2017年2月7日研究開発成果 低分子化合物との併用によるPD-1阻害抗体がん免疫治療効果の大幅な増強

国立大学法人京都大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

京都大学大学院医学研究科の 本庶 佑(ほんじょ たすく)客員教授、茶本 健司(ちゃもと けんじ)特定講師、理化学研究所統合生命医科学研究センター Fagarasan Sidoniaチームリーダーの研究グループは、PD-1阻害による抗腫瘍効果を大幅に増強する併用治療法を発見した。ミトコンドリアを活性化する低分子化合物をPD-1阻害抗体と併用すると、キラーT細胞のミトコンドリア活性の増強に伴い、マウスに移植したがんが急速に退縮し、生存期間が大幅に延長した。この研究成果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)で発表された。

1.背景と目的  

PD-1阻害抗体の登場により末期がん患者の長期有効例や完治例がみられ、がん治療のありかたが大きく変化した。一方で無効例も少なくない。そこでPD-1療法に無効な患者に対する新しい併用治療法の開発が緊急の課題である。また前もって有効例を選別する方法の開発も急がれる。

免疫のブレーキ分子であるPD-1はキラーT細胞上に発現し、がん細胞などが発現するPD-L1と結合するとキラーT細胞のがんに対する細胞傷害活性を減弱させる。本庶研究室ではPD-1とPD-L1の結合を阻害することで、がん反応性T細胞を再活性化しがんを縮退する方法を2002年に発見した。現在ではヒトの各種がんでPD-1阻害抗体治療法が実用化されている。本グループはPD-1を欠損するマウスでT細胞のミトコンドリアが活性化していることを発見した。ミトコンドリアは細胞内において非常に効率的にエネルギーを産生するため、T細胞の分化・活性化に大きく影響を与える。これらの事実に基づき、ミトコンドリアを活性化させる薬剤とPD-1阻害抗体とを併用すると、がん反応性T細胞がさらに活性化し、抗腫瘍効果を増強できるのではないかという仮説を立て検証した。

2.方法と結果

本研究ではマウス大腸癌MC38を皮内接種したマウスにPD-1阻害抗体を腹腔投与して治療するモデルを使用した。PD-1阻害抗体治療時にがん近傍の所属リンパ節を切除すると抗腫瘍効果が完全に消失した。すなわち、所属リンパ節でのキラーT細胞の活性化が非常に重要であることが明らかとなった。さらにこの時、所属リンパ節におけるがん反応性キラーT細胞のミトコンドリアが活性化し、活性酸素を産生していることを発見した。そこで低濃度の活性酸素発生剤をPD-1阻害抗体と同時に投与し併用治療を実施したところ、PD-1阻害抗体単独投与に比べ腫瘍抑制効果を増強することができた。この時がん近傍の所属リンパ節よりキラーT細胞を単離し、エネルギー代謝関連シグナルを解析したところ、エネルギー代謝に重要なシグナル伝達因子AMPK、mTOR、PGC-1αが活性化されていることが明らかとなった(図1)。そこでこれらの因子を直接活性化するいくつかの薬剤とPD-1阻害抗体を併用したところ、各活性化剤によって抗腫瘍効果が増強された。中でもPGC-1αを活性化させるベザフィブラートは最も下流のシグナルを刺激し、直接ミトコンドリアを刺激することができるので有望な併用薬である(図2)。これらの結果は、がん患者においてもT細胞のエネルギー代謝を制御することでPD-1阻害抗体の有効性を増強できる可能性を示している。現在、ベザフィブラートとPD-1阻害抗体の併用治療の治験を計画中である。

説明図/1枚目(キラーT細胞増殖・活性の図)説明は本文中に記載

説明図/2枚目(併用治療の仕組みと実例の図)説明は本文中に記載

3.まとめ

  1. がん反応性キラーT細胞は所属リンパ節で増殖し、がん局所に移行する。リンパ節切除が外科手術で行われているが免疫治療には有害である可能性がある。
  2. ミトコンドリアを活性化する低分子化合物、即ち承認薬であるベザフィブラートとPD-1阻害抗体の併用で腫瘍縮退効果が著しく増強した。
  3. ミトコンドリア活性化マーカーがPD-1阻害治療法の有効性判定マーカーになり得る。

4.研究プロジェクトについて

本成果は、以下の研究費によって得られた。

(本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水 孝雄)における研究開発課題「腸内細菌叢制御による代謝・免疫・脳異常惹起メカニズムの解明と治療応用」(研究開発代表者:Fagarasan Sidonia/ファガラサン・シドニア)の一環で行われた。なお、本研究開発領域は、平成27年4月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より移管されたものである。)

論文タイトルと著者

タイトル:「Mitochondria activation chemicals synergize with PD-1 blockade for T cell-dependent anti-tumor activity」
掲載誌:PNAS

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研究に関する連絡先

〒606-8501 京都市左京区吉田近衛町京都大学医学部A棟1階129号室
京都大学医学部医学研究科免疫ゲノム医学 茶本健司

AMEDに関する連絡先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)戦略推進部 研究企画課

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最終更新日 2017年2月7日

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