AMEDシンポジウム2017開催レポート:招待講演① iPS細胞がひらく新しい医学(1)

(抄録)

5月29日(1日目)講演招待講演➀ iPS細胞がひらく新しい医学
山中 伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所 所長)

写真/1枚目

山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所[以下、CiRA]所長)が2007年にさまざまな細胞に変化できる「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」の開発を発表してから今年で10年。再生医療と創薬の臨床応用に向けて研究が進んでいます。再生医療の分野ではすでにiPS細胞から作製した眼の網膜細胞で臨床研究が開始され、角膜疾患やパーキンソン病、心不全、脊髄損傷、輸血用の血小板などでも臨床を目指した研究が進められています。CiRAでは、臨床応用への時間短縮と費用削減を目指し、安全性が確保されたiPS細胞をあらかじめ作製して備蓄する取り組み「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」をAMEDの支援により始めています。

医学研究の2つの大きな課題

私の父は、約30年前、私が研修医の時にC型肝炎による肝硬変で亡くなりました。当時は原因も治療法も分からず、何もできませんでした。父が亡くなった1989年に、米国でC型肝炎の原因ウイルスが判明、世界各国で研究者や製薬企業が治療薬の開発に乗り出しました。2014年には、1日1回、約3カ月服用すると、99.9%の患者さんからC型肝炎ウイルスが消失するというものすごい特効薬が承認されました。30年前に治らなかった父の病気が、今では治る病気になったのです。これがまさに医学研究の力で、私たち研究者が目指していることです。

このC型肝炎の歴史は、医学研究の勝利の一例ではありますが、同時に2つの大きな課題を物語っています。1つは時間の問題で、C型肝炎では原因が特定されてから治療薬ができるまでに25年かかっています。もう1つは費用の問題で、この薬は1錠5万5000円と高価で、90日間服用しますと、1人あたり500万円近い医療費がかかるのです。

1日でも早く、できるだけ安価で患者さんに届けるためのiPS細胞研究

説明図1枚目(説明は本文中に記載)
図1 iPS細胞の臨床応用
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます

この2つの課題を解決するためには、iPS細胞を使った研究が有効だと考えています。CiRAでは現在、約600人の教職員と学生がiPS細胞の医療応用の実現を目指して研究を行っています。iPS細胞は主にヒトの血液などの体細胞をリセットすることで作製され、ほぼ無限に増殖させることが可能です。刺激を与えて他の細胞に作り替えることもできるので、新しく作り出した細胞を体内に移植して機能を回復させる再生医療や、大量に増殖させた細胞を使った病気の仕組みに関する研究や創薬への応用に期待が高まっています。

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