国際連携研究課 HFSPフェローシップ獲得の方法とコツ

平成30年7月20日

著/原田慶恵先生
大阪大学(蛋白質研究所)教授。大阪大学大学院基礎工学研究科修了。工学博士。2016年より現職。HFSPフェローシップの審査員を務める。大阪大学のマスコットキャラクター「ワニ博士」が多くの人に認知され人気者になることを願っている。

受賞者の声/山形一行先生
千葉大学大学院薬学研究院 特任助教。筑波大学大学院 生命環境科学研究科修了,学術博士。2009年から'14年までHarvard Medical School博士研究員。'14年同志社大学特任助教を経て'17年より現職。

HFSPフェローシップとは

HFSPフェローシップとは、若手研究者が自国外の優れたラボで研究経験を得ること(端的には「留学」)を支援するプログラムで、筆者はその2018年度審査員を務めています。HFSPフェローシップの母体であるHFSP(Human Frontier Science Program)とは、生体の複雑な機能の解明を目的とした基礎研究を支援する国際共同研究助成です。提唱国である日本をはじめとした15の国・極(日本、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イタリア、韓国、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、スイス、英国、米国、EU)の共同出資により運営されています。

日本学術振興会の海外特別研究員制度(いわゆる海外学振)と比較されることも多いHFSPフェローシップですが、ここであらためて違いを強調したい点があります。それは、HFSPフェローシップは単なる留学サポートというより、受賞の色合いが強いということです。世界では、日本人が考えるより数倍も名誉ある研究助成だと認知されています。日本国内で履歴書に「さきがけ」とあればポジション獲得に有利だと言われるように、履歴書に「HFSP」の4文字があることが強みになります。将来、研究者としてラボを構え国際的に活躍したい若手がこぞって狙うトップレベルのaward。それがHFSPフェローシップなのです。

残念ながらここ数年、日本からの申請は減少傾向にあります。確かに英語での申請はなかなかハードで、採択率も高いとは言えません(年により10~20%程度)。でも逆に、HFSPフェローシップへ申請することにデメリットやペナルティもありません。まずは挑戦してみませんか? 本記事ではHFSPフェローシップ獲得に役立つコツを紹介しますので、お役立ていただければ幸いです。

申請資格

HFSPフェローシップに申請できるのは、博士号(PhDあるいはそれに準ずる研究博士)取得から3年以内の若手研究者に限られています。他にも細かい条件はありますが、日本国内で博士号を取得した方であればまずOKです。

申請の際の主な要件は3つです。①運営支援国→他国、あるいは非運営支援国→運営支援国の留学であること、②留学に伴い新しい研究分野へ移ること、③生体のもつ複雑な機能解明のための基礎研究であること、です。それぞれ具体的に解説していきます。

1)留学と申請のタイミング

上記の要件①を見ると、博士課程→ポスドク留学のタイミングで申請するもの、というイメージをもたれるかもしれません。しかし実際は、ポスドクを始めて半年以上の方の応募が多くなっています。後で詳しく解説しますが、ある程度の業績が必要であったり、留学受け入れ研究室がどれだけサポーティブかが審査基準にあったりしますので、「応募前に留学している」方が有利です。

戦略的には、まず海外学振などの助成金を活用して留学し、翌年からHFSPフェローシップに切り替えていくような計画がよいでしょう。もちろん、助成金なしで留学し、その後HFSPフェローシップに応募できるのであればそれも結構です。審査員は「助成金がない状況で受け入れられている=そのポスドクは受け入れ研究者から本当に評価されている」と考えます。

受賞者の声

私は留学「後」に申請しました。学位取得後の時期がタイトですので気をつけなければなりませんが、私が申請した頃は4月1日以降留学の申請者はその年のHFSP フェローシップの申請をすることが可能でした。留学先のボスと積極的に申請書のやり取りができるタイミングがベストだと思います。私の場合は、留学後に指示されたプロジェクトが留学前に言われていたことと全く異なっていたこと、4月中旬から留学して申請書提出のタイミング(8~9月)までに予備データが得られていたことから、予備データがない状態で書くよりも非常に書きやすい状態でした。さらにボスから申請書の草稿の添削を積極的に受けられる状態でしたので、非常にラッキーだったように思います。

正確には、私は留学「前」にも申請しようとしました。しかし、その際にボスに言われていたざっくりとしたプロジェクトだけでは、HFSPフェローシップに応募できるだけのストーリーをふくらませることが困難でした。私の経験では、ラボに漂っている雰囲気、出そうなデータなどが見えてくる留学後の申請をオススメしたいです。

私が考える良いタイムスケジュールは以下になります。

  1. 留学前に留学前のラボで良いJournalにPublishすること
  2. 学位取得後2年以内のうちに4月1日以降に留学すること、かつ翌4月1日までに学位取得後3年以内であること(フェローシップ開始の条件が学位取得後「満3年以内」という条件が当時あったためです)
  3. 実験を進めて研究申請書の種を作ったうえで、ボス、同僚に校正してもらいながらより良い申請書を完成させること

ただし、HFSPフェローシップの応募資格やルールは頻繁に変わります。ぜひ、HFSPAMED ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム のサイトをチェックして、最新の情報をフォローアップしてください。

2)研究分野の変更

「研究分野の変更」はHFSPが最も重要視する要件の1つといっても過言ではありません(図1)。しかし、ただ変更すればいいというものではありません。いくらD論のテーマから180°転換していたとしても、受け入れ研究室のテーマをそのままなぞるような内容では一発退場です。まず申請者が、受け入れ研究室にはないスキルをもっていることが前提となります。そのうえで、「学ばせてもらう」姿勢ではなく、大学院で身に着けたスキルと、受け入れ研究室のスキルを融合して、1つステップアップした自分自身の新しい強みを生み出すようなゴールを設定します。

なお、研究分野が変わっていたとしても、過去に共同研究関係にあったり、論文共著関係にあったりする研究者を、受け入れ先に選ぶことはできません。

3)基礎研究

出口出口…と強調される昨今において戸惑われるかもしれませんが、HFSPは出口の見える研究を支援していません(表1)。逆に、生命の根幹に迫る研究で、まだ誰も成し遂げていないものであれば、すべからくHFSPの支援対象となります。HFSPフェローシップも、そのポリシーから外れることはありません。誰もが重要と認識しているクエスチョン、あるいは分野の今後の発展を妨げる障壁、にあえて挑戦する課題は奨励されるでしょう。誰もできなかったことを達成するためには、当然これまでとは異なる技術やアプローチが必要となり、新しい方法論の確立には学際研究(分野の変更・融合)が必要、というのがHFSPの理念です。

+α:生命科学分野外からの応募は特に狙いめ
HFSPフェローシップは<長期フェローシップ(LTF)>と<学際的フェローシップ(CDF)>の2つに分かれています。申請書類は共通ですが審査は別です。簡単に説明すると、LTFは生命科学分野の博士号取得者向け、CDFは分野外の博士号取得者向けです。実はCDFの方が申請数も少なく、生命科学の知識や経験が少ない申請者によって作成された申請書であるため、総じて点数が低めになる傾向があります。ハイレベルな申請がしのぎを削るHFSPフェローシップですが、ボーダーが下がる分CDFの方が通りやすいのです。化学や計算科学などの分野で博士号を取得し、生命科学に興味のある方は、特に積極的に申請いただくとよいでしょう。

HFSPフェローシップのその他のメリット

最初に述べた強み以外にも、HFSPフェローシップ受賞者には様々なメリットが知られています。

メリット1

助成期間が3年で、家族手当もあること。これは日本国内の他の留学助成と比較してめずらしいと思います。

メリット2

受賞者ミーティングがあること。人脈作りの場として高い満足度が報告されています。

メリット3

HFSPにはフェローシップ以外にも、CDA(Career Development Award;独立を支援)とグラント(3年間で1億円を超える研究費)があります。このCDAはなんとフェローシップ受賞者しか申請できません。また、グラントの申請には国際共同研究(3~4人のチーム)が必須なのですが、ここにはフェローシップで培った人脈が活きてきます。

メリット4

HFSPフェローシップは留学の安全装置として機能します。どうせ留学するならハーバード大のようなビッグラボに行きたい! という方も多いと思います。ですが、そうしたビッグラボは入ってびっくり。同じテーマを数人のポスドクで競わされたり、歯車のように働かされてデータが出るまで声もかけてもらえなかったり、というようなことも間々あるようです。その点、天下に轟くビッグラボでも、HFSPフェローシップを受賞できるくらいのコミュニケーションを事前にとれれば、無下に扱われる可能性は低いと言えます。

受賞者の声

私の留学先はHarvard Medical Schoolでしたが、外部から留学資金をもってくることが強く推奨されております。逆に言うと、少なくとも私が留学していたラボは「金の切れ目が縁の切れ目」でした。外部からお金をとってくる(こようとする)ことに関して、ボスもFacultyも積極的でした。現在、世界的に研究費が圧迫されている状況ですから、外部資金を持参することが留学の条件になるケースも見聞しています。ですから、留学先が決まったら積極的に外部資金を調達することが必須になると思います。逆に外部資金獲得の有形無形の助力は得られやすい雰囲気なのではないかと思います。ぜひ積極的に協力を求めていってください。

よい受け入れ研究室を探すことが第一歩

ここまでHFSPフェローシップの概要を紹介してきましたが、もし「申請しよう!」と覚悟を決めたらどうすればいいか。それは、海外の学会に積極的に参加しておもしろい研究室(研究者)を探すことが第一歩です。

筆者としては、独立1~2年目の、テーマが魅力的で、ラボメンバーを大切にしてくれそうな研究者を探すことをおすすめします。もちろん、安定感ではビッグラボに敵いませんし、実際の申請はビッグラボが多いです。ですがHFSPフェローシップの審査員は、ビッグラボを選ぶなんて安直すぎると内心思っており、審査基準にも「新進気鋭の研究室を重んじる」むねが明記されています(後述)。

金がない状況で受け入れられている=そのポスドクは受け入れ研究者から本当に評価されている」と考えます。

受賞者の声

私は結果的にビッグラボに留学しました。その経緯というのが、留学希望のいくつかの候補を留学中の先輩に相談したところ、そのなかでは先輩の所属していたラボが一番高評価だった、ということで決めました。留学中の先輩の口添えもあり、ビッグラボに入り込むことができた次第です。

ラボを決めるに当たり、私はコネクションが非常に大事であると考えております。ただし、それは日本で言うところの「強いコネクション」ではなく、例えば「希望のラボに友人・先輩・知り合いがいる(私のケース)」「学会で話したことがある」などのコネクションが重要だと思います。

応募の時期と流れ

受け入れラボが見つかったらいざ申請です。HFSPフェローシップの審査は書類だけの1本勝負です。面接はありません。2018年は7月上旬に申請書配布開始、8月9日に受付開始、8月23日に申請〆切となり、年末にかけて書類審査が行われます。年明けに審査員による合議審査が行われ、結果が出るのは3月です。

申請書の概要

HFSPフェローシップの申請書は以下のパーツからなります(図2)。

図2 申請書の概要
  • 1. Applicant(申請者と受け入れ先の情報)
    • 1.1. Information on previous research(留学前の研究の概要)
        Curriculum vitae of applicant(博士号の取得状況など)
        List of publications(その名のとおり)
    • 1.2. Information on proposed research(助成を受けたい研究テーマの概要)
  • 2. Research project(助成を受けたい研究テーマについて詳しく記載)
    • Questions on the project(研究者としてのビジョンを記載)
  • 3. Host supervisor(受け入れ研究室の推薦状)
  • 4. Referee(指導教官+分野の研究者の推薦状)

申請「書」と言いつつ、実際はHFSPのシステムにログインし、必要項目を埋めていく形式です。まずは気軽にログインしてみていただけば、雰囲気がつかめると思います。

実は、審査員は1.Applicant~1.2. Information on proposed researchまでの内容で、その申請書が熟慮に値するかスクリーニングすることを求められています。はじめの一歩でつまづかないために、表2のような審査基準に対応した記述を確実にすることが大切です。

表2 HFSPフェローシップの審査基準

それでは、ここからは申請書の各パーツを詳しくみていきましょう。なお、ここで紹介する申請書は2018年度助成のもので、2019年度助成では一部変更の可能性もあります。数年前に申請書のフォーマットが変わり、詳細なガイドライン(Instructions for applicants)が公開されています。ご興味の方は精読をおすすめします。システムへの登録は必ずしも申請書に記載の順番どおりではありませんので、ご注意ください。

1. Applicant

Applicantのページは以下の項目からなります。それぞれの記載のポイントは下記のとおりです。

申請者

申請者の氏名と現所属です。工夫のしようもありませんが、すでにポスドク先で研究を行っている、という事実が重要です。審査員が、申請者の英語力に問題がないか、受け入れ研究室がどれだけ乗り気なのかを判断する数少ない根拠となります。

Proposed research title(100字以上)

助成を受けたい研究のタイトルです。魅力的なタイトルを考えてください。ただし、研究内容に比べてタイトルがすごすぎるのも問題です。科学的重要性もさることながら、申請者のそれまでの経歴からジャンプを感じさせるもの、でなければなりません。例えば「がん」から「糖尿病」に分野が変わっていても、D論と同じ分子の名前が入っていたら、台無しでしょう。

受賞者の声

私はTET2という白血病で頻繁に体細胞変異が見られる遺伝子についての申請書を提案しました。実は留学直後(2009年)、
1)同じファミリーに属するTET1がDNAのメチル化シトシンをハイドロキシル化する活性がありDNA脱メチル化に関わること
2)白血病の複数のコホートからTET2の頻繁な体細胞変異が発見されたこと
がほぼ同時期に発表されたのです。このようにエピジェネティクスと白血病において重要なブレークスルーが発表された非常にタイムリーな時期にタイムリーな提案ができたことはラッキーだったと思います。

Host supervisor(s)

  受け入れ研究者名です。通常1人ですが、ビッグ(すぎる)ラボだと「指導が薄まる」と判断されネガティブな評価になることがあります。そうした場合、2つの研究室にまたがって受け入れていただくような形で、2名の名前を記載するケースもみられます。もちろん、主たる受け入れ先と、共同受け入れ先の関係に、研究計画上の必然性がなければなりません。

Host institution

受け入れ研究機関名です。施設の充実度も審査の対象となっています。

1.1. Information on previous research

1.1. Information on previous researchは申請者の留学前の研究を、以下の項目に沿ってまとめたものです。

PhD institution

博士号を取得した機関と、「何年で博士号をとったか」の情報です。日本人がこの項目でひっかかることはありませんが、博士号の取得にものすごく長い時間がかかっている場合は、不安材料になります。

Keywords of previous research topic

留学前の研究を、用意されたリストから1個、その他~3個の最大4個のキーワードで示したものです。1。2。 Information on proposed research内のKeywords of proposed research topicとパット見で違いがわかるように工夫することが大切です。
previous:electron microscope
proposed:X-ray crystallography
とあっても、よくよく見ればどちらも構造生物学でジャンプがない…といった申請書は低評価になります。

受賞者の声

HFSPではホストでの研究がこれまでの研究と大きく異なっていることが重視されます。私は転写因子の研究から留学先ではエピジェネティクスの研究にシフトしました。遺伝子発現とエピジェネティクスの関係は密接に関係していますから、このままですと審査員からはあまり研究分野が変わったようには見えませんでした。そこで、私が研究していた転写因子は糖代謝に関わっていること、研究プロポーザルではエピジェネティクス因子の研究については白血病の進展メカニズムを強調して、糖代謝研究からがんのエピジェネティクス研究へ分野を大きく変えたことを強く主張しました。幸運にも受賞できたということは、このアピールが功を奏したのではないかと予想します。

Summary of previous research(1,000字以内)

留学までの研究の概要です。D論のコピペ程度で問題ありません。さらに言ってしまえば、申請者の過去の研究状況は後述のList of publicationの情報の方が重視されます。

すでにポスドクとして経験を積んでいる方は、その業績について触れても構いません。ただし、受け入れ研究室にすでに在籍しているからと言って、受け入れ研究室での業績を書くことは禁止されています。あくまで、提案する研究より“前”の仕事に限ります。

Titles of two key publications(400字以内)

特に強調したい業績を2報選びます。

Curriculum vitae of applicant

いわゆる履歴書のようなページです。

Degree

学位、修士、博士取得期間の記載欄で、Applicantの情報と一部重複します。大学から留学しているような申請者には「頑張っているな」という印象がつきますが、日本人だとあまり評価に関係ない要素です。卒業大学のランクなども評価に値しないことがほとんどです。

指導教員以外に指導が受けた研究者がいたら、名前を記載することもできます。

Research experience / other activities

研究歴とあわせて、アルバイト、ボランティアの経験や、病気療養などを記載できます。学会や委員会などの活動は対象外です。

Past and present fellowships

他の研究助成の獲得状況です。審査への影響はほぼありません。

Honor / prizes(500字以内)

受賞歴です。正直、審査員からしてみると自国外のものはわからないことも多いので、あまり気負わず正直に書けば問題ありません。

Additional comments(1,000字以内)

表3 Additional commentsに記載できるネガティブコメントの例

評価に関係しそうな補足情報の記載です。ポジティブなものだけでなく、ネガティブなものも含みます。表3に例を挙げます。

受賞者の声

学会賞などを受賞されることもあるかと存じますが、ぜひ”Honors / prizes”で、研究がプレスリリースされている場合は”Additional comments”欄で主張すべきだと思います。論文のPublications以外にも主張できるポイントが数多くあります。謙虚にならず、「こんなことまで?」とも思わず、堂々と主張しましょう。

List of publication

業績リストです。冒頭に査読ありジャーナルに掲載された論文数と、筆頭著者論文数を記載します。

HFSPフェローシップと聞くと「3大誌に数本レベルじゃないと通らないんじゃ…」という先入観をお持ちの方も多いようですが、必ずしもそんなことはありません。分野ごとに事情は異なりますし、極端に数が少ない、ということでなければ論文のインパクトは個別に丁寧に評価されます。

受賞者の声

パブリケーションの量も質も重要です。HUMAN FRONTIER SCIENCE PROGRAM でAwardeesを個別にPubmedで検索しますと、とんでもない業績をもつ人達(具体的にはTop journalを何本ももっている人達)がゴロゴロしています。私はそれをやってしまって完全に自信をなくしました。一方で、JBC 1本しかもっていない方もいらっしゃいました。すなわち、HFSPでは業績も勘案されますが、申請書をかなり精読して評価しているということではないかと推察します。

学位取得までにすでにTop journalをもっている方は、世界の並み居る優秀な同士達と戦うスタートラインに立っていると言えます。トップジャーナル(姉妹誌含む)をすでにもっていて留学を希望する学位取得後3年以内の若手の研究者の皆様は、ぜひともHFSPフェローシップに挑戦していただければ、と思います。

Title of doctoral thesis(200字以内)

D論のタイトルです。工夫の余地はありません。

Publications from doctoral thesis

D論に関係する論文のリストです。ここで貢献度を%で示す必要があるのですが、正直に書きましょう。よく、筆頭著者でなく、著者が複数名連なっている論文なのに、貢献度50%と書いてくる申請者がいます(論理的にありえないことがお解りになると思います)。このような申請者は、書類全体にわたって疑念の目で見られることになります。

Other original research papers

Publications from doctoral thesis以外の論文のリストです。これはめずらしいケースですが、commentaryのような記事をさもresearch articleのように装って記載してくる申請者もいます。トップジャーナルの業績を記載したい気持ちはわかりますが、必ずばれるのでやめましょう。

Review articles

レビューの執筆歴です。

Update of publication list

HFSPフェローシップは申請〆切から審査まで数カ月あります。この間に新たに出版された論文は、後から追記することができます。

Titles of uploaded PDF files of publications

申請の際に、申請書と別にリストアップした論文のPDFを添付するので、その一覧を記載しておきます。

Abstract of publication(1つあたり2,000字以内)

代表論文のabstractをコピペする欄です。

1.2. Information on proposed research

研究提案の概要です。ここまでが書類審査の1stスクリーニングの対象となります。

Proposed research title

1. Applicantにあったのと同じものです。

Keywords of proposed research topic

1. ApplicantのKeywords of previous research topicと対になる項目です。こちらも用意されたリストから1個、その他~3個の最大4個のキーワードで示します。

Questions on the host lab(2,000字以内)

Proposalではないところに注目してください。なぜその研究テーマを実現するにあたりその受け入れ研究室を選ぶ必要があったか? その受け入れ研究室でどのような経験を積めるのか? 申請者が受け入れ研究室に持ち込める専門性/技術は何なのか? を記載します。

研究計画より先に「なぜ」を問われるのは、HFSPらしくておもしろいポイントではないでしょうか。

受賞者の声

受け入れ先のボスからは、1)申請書は「ビッククエスチョン」を必ず提示すること。2)ビッククエスチョンに対し、どのようにアプローチするか、具体的に提示していくこと。3)そのアプローチで研究することで、どこまでクエスチョンにアンサーできるか明確にすること。これを徹底的に指導されました。

添削されて「なるほど」と思ったことは、申請書の初期段階では論点が2つに分かれてしまったのですが、「どちらかにしろ」と指摘され、片方を完全に切ってしまったことです。それで申請書の目的がより明確になり、わかりやすく読みやすくなったと記憶しています。

2. Research project

ここまでで高評価をえた申請書は、Research projectに記載された研究計画をもとに深読みされます。Research projectの準備にあたり、HFSP経験者の協力を得ることは必須です。日本国外の有力ラボであればPIがHFSP受賞者だったり、メンバーが受賞者だったりする場合が多いので、とにかく受け入れ研究室と綿密に相談して書きましょう。ただし、くり返しになりますが、見るからに受け入れ研究室のon goingなプロジェクトの一部を割り振られたようなテーマは、一発退場です。

受賞者の声

分野外の審査員にアピールするため、可能な限り略語は定義化してから使いました(しかし文字数がタイトですので、最初にフルスペルで記入後、カッコ書きで略語を定義し、以後、略語を使用しました)。また、「ビッククエスチョン」を定義し、申請書がそれをどのように解決するのか、という点を留意して記載しました。逆に、申請書は可能な限り具体的に記述しました。

「計画がうまく行かなかった場合」のバックアッププランについても可能な限り記述し、計画を具体化することで専門外の審査員にも計画の成功確率が高いことをアピールしました。

Title

ここまでに登場したProposed research titleと同じです。

Scientific abstract(1,700字以内)

いわゆる研究計画です。書き方は一般的な申請書と同じで構いませんが、何をどこまで明らかにしたいのか、そのために必要と考える技術革新は何か、明確に記載しましょう。HFSPのウェブサイトで過去の受賞者の例が見られるようになっているので(Human Frontier Science Program・Awards Archiveページ)、フォーマットの参考にすると早いでしょう。

受賞者の声

ぜひ、うまく行った申請書を入手してください。受賞者ミーティングでも「うまくいった申請書を入手し、真似することから始めよ」とグラントマネージャーの方が述べていたほどです。実際、私は友人(2名)からうまく行った2つの申請書を入手することができました。最初書き殴っていた申請書がお粗末に感じられるできで、酷くショックを受けたのが今でも思い出されます。しかしながら、非常にうまくいった申請書を下書きに私の研究プロジェクトを書き換えていくと、当初の申請書とは全く別物ができました。重要なのは「そこがやっとスタート地点」ということです。その後、ボスと何度も何度もやり取りし、最終的にできあがったものは当初の原稿案がほとんど残っていないような有様でした。この「何度も何度もブラッシュアップする」というのが、HFSPフェローシップに限らず他の申請書においても、論文においても重要である、ということを何度も経験しております。

Research plan(15,000字以内)

本丸です。4つのセクションに分かれます。

  • Subject:研究分野の背景と、何が課題だったのかを明示します。審査員は必ずしも専門家ではないので、分野の異なる研究者にもわかるように書く必要があります。
  • Significance:そのプロジェクトで提示する大胆な仮説、特に革新的な要素、成し遂げることで分野に及ぼす影響をまとめます。ここでもSubjectと同様に分野の異なる研究者でも理解できるように書く必要があります。
  • Experimental design and methodology:審査の後半でしか参照されない項目です。科研費など一般的な申請書レベルの書き方で問題ありません。研究テーマがハイリスクかつジャンプの大きな提案であるときに、妥当性の1つの根拠になります。
  • References:Research plan全体で引用した文献をまとめます。書式に規定はありません。

Questions on the project

ここ数年で新設された項目です。

Intellectual contribution to the development of the research plan(1,700字以内)

申請書の内容が、申請者のオリジナルアイデアであることを確かめる項目です。新規性を強調すると共に、提案するプロジェクトによりいかに申請者自身のキャリアの幅が広がるかを記載します。

Why is this proposal frontier science? Potential impact(2,500字以内)

提案内容がどういった点で真にフロンティアか、成熟した分野であってもいかに常識を覆すような発想なのか、強調します。
審査員としては、この項目で申請者の「将来」を見極めたい気持ちがあります。つまり、そのプロジェクトの説明に終始するのではスケール感が弱く、「将来、研究者としてこういうことを成し遂げたい」「そのために必要なステップである」という書き方を期待しています。

3. Host supervisor

受け入れ研究者に記載していただく欄ですので、申請者が工夫できることはありません。経歴、業績リスト、推薦文からなります。圧倒されるような業績の方がほとんどです。

同等の業績であれば、新進気鋭の研究室が高く評価される傾向にあります。また、1つの研究室は1年に1人しか受け入れられないことになっています。ぜひ研究室探しには妥協せず取り組んでください。

4. Referee

一般的には、博士課程の指導教員と、同分野の研究者どなたかのあわせて2名に記載していただきます。業績リストは不要で、推薦文のみです。

Refereeの名前が審査に影響することはまずありませんが、指導教員の名前が書かれていないと人間関係に問題があったのかな? などの心配をされる可能性はあります。

なお、Refereeと受け入れ研究室とが密な共同研究関係にあるような場合も、HFSPに相応しくないという判断になりがちなので注意してください。日本では推薦書は褒めて書かれているのが当たり前で、あまり参考にならないので重視されませんが、海外では推薦書は比較的正直に書かれるので、審査員は推薦書をしっかり読みます。推薦書を書いてもらう場合は、その旨を伝え、気合を入れて書いてもらう必要があります。英語で推薦書を作成するのが大変だからといって、短かったり、定型的なことしか書かれていないと、印象が悪くなります。

おわりに

日本からの留学者が減っている今だからこそ、留学経験はポジション獲得にプラスに働きます。HFSPフェローシップは皆さんのキャリア形成の強い味方になります。本記事がその申請の助けとなれば幸いです。

受賞者の声

HFSPフェローシップの申請を種に、このような素晴らしい経験を積むことは今後の研究生活においても極めて重要な糧になります。HFSPフェローシップは狭き門ですが、給与、助成期間(3年間)、名誉共に非常に恵まれております。しかも、私は残念ながら不採用でしたが、HFSPフェローシップをもらっていた人だけが応募資格を得られるHFSP Career developing award(CDA)もありますので、フェローシップが終了し、独立してからもお世話になります。日本国内で研究費を獲得することは年々難しくなっている印象がありますが、国内だけではなく日本国外(この場合はHFSP)にも申請することができる、という観点は非常に重要だと思います。ぜひともHFSPフェローシップを受賞し、日本の、世界のサイエンスを盛り上げていきましょう!

最終更新日 平成30年7月20日