再生医療研究開発課 再生医療研究における倫理的課題

倫理課題について

再生医療実現拠点ネットワークプログラム(再生NWP)再生医療の実現化支援課題「再生医療研究とその成果の応用に関する倫理的課題の解決支援(通称:倫理課題)」(令和2年度~)では、再生医療等およびiPS創薬等の研究開発に伴う「生命倫理上の問題」に関して調査・検討し、再生NWP実施機関が研究開発を円滑に行えるように支援しています。

1.再生医療と倫理

iPS細胞やES細胞などをはじめとした、加工した細胞を元に治療を行う医療を再生医療といいます。再生医療は、これまで治療法のなかった疾患の治療ができるようになるなど、社会的な期待が高い医療の一つであります。

しかし、再生医療をより安全かつ適切に促進していくためには、再生医療における倫理面にも目を向ける必要があります。例えば、細胞の種類一つをとっても、その由来により異なる倫理的な課題があります。ES細胞は、ヒトの胚を利用して作成する必要がありますが、日本では「胚は人の生命の萌芽である」と位置づけられ、胚を滅失することの是非が問われました(ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方[2004年])。

また、基礎研究や動物での検証を進める中で、ときにはキメラ細胞を作製することもあるかもしれませんし(特定胚の取扱いに関する指針[2019年改正])、iPS細胞から生殖細胞を作成するといった用途も考えられます(ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針[2015年改正])。産業界を中心に、「再生医療等製品の原料として利用可能なヒト細胞原料の国内における安定的な供給体制の構築」が目指される中(ヒト(同種)細胞原料供給に係るガイダンス(初版)[2020年])、こうしたニーズにアカデミアがどう対応するかも重要なポイントです。

さらに、はじめて人を対象として実施される臨床試験の段階では、参加者の権利と福利を保護するための取組みが重要になります。具体的には、研究の参加者を公正かつ適切に選択する方法、参加者に過大なリスクや負担をかけすぎないこと、参加者が治療としての効果を期待しすぎないようにすることなどを考えながら、臨床試験の計画を立てていく必要があります。

2.倫理課題チームのご紹介

1.で述べたような課題の検討を行い、再生医療をより安全かつ適切に促進していくために、再生NWPにおいて実施している倫理課題の研究チーム(以下、倫理課題チーム)は、倫理支援・倫理教育・調査研究を3つの柱として、それぞれに研究開発項目を設定して日々活動しています。

  1. 倫理支援:再生医療研究に携わる研究者及びその現場を倫理面から支援する
  2. 倫理教育:倫理審査委員への研修や再生医療に関する患者・市民への教育機会を提供する
  3. 調査研究:再生医療の倫理的課題を解決するために必要な調査研究を行う

倫理課題チームは、社会学者、倫理学者、公衆衛生学者、幹細胞生物学者、医師、臨床試験の専門家など多様なバックグラウンドを持つメンバーで再生医療における倫理的課題の検討に多角的に取り組んでいます。このような多様なバックグランウドを有するメンバーで、再生NWP採択課題に対して、気軽に利用できる相談窓口を設置し、随時、相談を受け付けています。

これまでに受けたご相談の例:
「この細胞を使うのは倫理指針の対象?」
「オプトアウトって何をしたらいいの?」
「説明文書をチェックしてほしい」
「倫理審査員会からの指摘の対応に困っている」
「研究テーマAとB、どちらが患者さんのためになるか、患者さんに意見を聞いてみたい」

また、法令・指針等の改正など倫理面の最新情報を提供し、倫理的問題を共有するとともに、さらなる問題の掘り起こしや新たな事態への迅速な対応を図りながら、その解決に向けて日々取り組んでいます。

StemCell&Ethicロゴ

3.役立つツール等のご紹介

ここで紹介しているツール等は、倫理課題チームの前身である、再生NWP 再生医療の実現化ハイウェイ「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究(課題D)」が作成したものです。課題Dの研究実施期間終了後も、研究や研修、コミュニケーション等のツールとして役立つと思われますので、ご活用ください。

研究者向け

再生医療臨床研究における感染症検査結果の取扱いに関する方針策定のためのガイドライン

本ガイドラインは、再生医療研究において、細胞由来者の適格性判断のために実施する感染症検査において陽性反応が得られた場合の結果の取扱いに関する基本的な考え方を示したものです。補論では、代表的な5つの感染症を取りあげ、具体的な返却の必要性についても例示しています。

再生医療臨床研究における感染症検査結果の取扱いに関する方針策定のためのガイドライン(PDF)
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疾患特異的 iPS 細胞の利活用促進・難病研究加速プログラム_説明文書ひな形

本文書は、再生医療実現拠点ネットワークプログラムで実施されている、iPS細胞の作製ならびにiPS細胞を使用した創薬・疾患研究に関する説明同意文書のひな形です。本文書は、細胞やゲノムデータの解析、カルテ情報を用いた研究における説明の特徴を考慮した内容となっています。

疾患特異的 iPS 細胞の利活用促進・難病研究加速プログラム_説明文書ひな形(PDF)
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再生医療研究のインフォームド・コンセント(e-learning)

本e-learningは、人を対象とする医学系研究に携わるすべての方を対象に、インフォームド・コンセントの重要な要素について学ぶことを目的として作成されました。再生医療を題材として使用していますが、ここで述べられている内容は、他の研究のインフォームド・コンセントにおいても共通する要素が含まれています。そのため、本講座は、再生医療に限らず、実践的インフォームド・コンセントの教材として広くご活用頂くことができます。

※画像をクリックすると外部サイト「ICRweb 再生医療研究のIC」に移動します。

特定認定委員会、倫理審査委員会向け

特定認定再生医療等委員会倫理審査フローシート

本シートは「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の下で、研究として実施される第一種又は第二種再生医療等に対して特定認定再生医療等委員会が行う審査の際のチェックポイントを整理したものです。実際の審査の際以外にも委員教育の場面でも使用して頂けます。

特定認定再生医療等委員会倫理審査フローシート(PDF)
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「再生医療倫理審査研修会」報告書

再生医療の実現化ハイウェイ・課題Dでは、再生医療倫理審査研修会を6回開催して参りました。事業の最終年度に、今まで開催した倫理審査研修会の成果を取りまとめるべく、テキスト、資料集、模擬申請者のプレゼン等をまとめた動画集を作成いたしました。そして、倫理審査委員教育に役立てていただこうと関係者に配布いたしました。
今回、その時、配布した資料等のうち、下記を掲載いたします。

第6回模擬審査委員会用資料表紙画像
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  • 模擬実施計画書、模擬説明同意文書、模擬スケジュール表
  1. 膝関節軟骨損傷に対する自己骨髄間葉系幹細胞由来軟骨細胞移植療法(第I相試験)
      (平成27年度・第3回で用いた資料を改訂したもの)
       
  2. 歯槽骨欠損に対する臍帯間葉系細胞間葉系細胞移植療法(第I相試験)
      (平成28年度・第4回で用いた資料を改訂したもの)
      
  3. 肝硬変に対する間葉系細胞(自己骨髄由来、臍帯由来)移植療法 第I相試験
      (平成29年度・第5回で用いた資料を改訂したもの)
      

なお、第3回~第6回の研修会で行われた模擬審査委員会での研究者からのプレゼン等は、ブルーレイ・ディスクが配布可能となっています。研修等で活用される場合には送付いたしますので、nagamura"at"ims.u-tokyo.ac.jp(担当:長村 "at"を@に変えて送信ください)までご連絡をお願いいたします。

患者・市民向け

説明補助パンフレット「難病などの研究におけるiPS細胞の活用に関するご案内」

患者さんや健常人ボランティアの方に向けて、iPS細胞を用いた疾患の解明や検査・治療法の開発を目指す研究に細胞の提供を検討して頂く場合を想定して、一目で内容が分かりやすいようなレイアウトを目指して作成しました。
印刷してご利用される場合は、A2サイズ、横向き、両面印刷(短辺とじ)で印刷してください。


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絵本「病気を治す方法や新しいお薬を探すお手伝いのお願い」(web閲覧用)
幼児用

絵本「病気を治す方法や新しいお薬を探すお手伝いのお願い」幼児用表紙
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絵本「病気を治す方法や新しいお薬を探すお手伝いのお願い」(web閲覧用)
低学年用

絵本「病気を治す方法や新しいお薬を探すお手伝いのお願い」低学年用表紙
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漫画「病気を治す方法や新しいお薬を探すお手伝いのお願い」(web閲覧用)
高学年用

漫画「病気を治す方法や新しいお薬を探すお手伝いのお願い」高学年用表紙
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小児を対象とする研究の場合、保護者へのインフォームド・コンセント取得だけでなく、研究対象者となるお子さん本人へのインフォームド・アセントの重要性が述べられています。この絵本は、幼児、小学校低学年、小学校高学年を対象に、iPS細胞研究への参加協力のお願いに関する説明補助資料として作成されました。研究対象となる実際のお子さんの理解能力に応じて、適宜ご利用ください。
 

Hope beyond hype

本冊子の製作は、欧州における幹細胞研究コンソーシアムとの協同で、幹細胞研究に関するサイエンスコミュニケーションや患者参画などを促進している”EuroStemCell”のメンバーによって行われました(参考URL:https://www.eurostemcell.org/about-eurostemcell)。EuroStemcellによると、幹細胞を治療に応用するまでの適切な過程は複雑ではありますが、その過程をリアルに感じつつ、正しく理解してもらえるようにと、この冊子が作成されました。様々な人が手にとりやすいように、絵を多用したとのことです。読者層も、患者や介助者、患者団体、教育者、研究者、患者・市民参画に携わる人達といった、多様な立場の方々が想定されています(参考URL:https://www.eurostemcell.org/hope-beyond-hype)。
EuroStemCellから依頼を受けて、本冊子を和訳しました。幹細胞研究の基礎研究から臨床応用という長い研究過程を、科学的側面のみならず社会的側面からも解説されています。内容の難易度から考えると、日本では、高校生以上の方に読んでいただける冊子であると考えています。高校の授業や患者会での勉強会など、色々な場面でぜひご活用いただけますと嬉しいです。

Hope beyond hype表紙
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「過剰な期待から確かな希望へ-発見から治療までの幹細胞の物語」活用ガイド表紙
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再生医療研究と倫理的課題

教育教材「再生医療研究と倫理的課題」と、その「使用の手引き」を作製しました。本教材の目的は、再生医療研究を題材とし、iPS細胞を用いた研究から治療に至るプロセスについて知るとともに、グループ・ディスカッションを通して価値観の多様性を認めつつ合意を形成するプロセスを学ぶことを目的としています。対象は、中学校以上の学生としていますが、対象を限定するものではなく幅広くご使用いただけます。例えば、道徳、総合学習、理科・生物、保健体育の時間などに活用いただくことも可能だと思います。親しみやすく、使いやすい教育教材を目指しましたので、多くの方に利用いただけますと幸いです。

教育教材「再生医療研究と倫理的課題」表紙
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教育教材「再生医療研究と倫理的課題」使用の手引き表紙
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掲載日 平成31年2月20日

最終更新日 令和3年3月17日