お知らせ

2016年9月30日プレスリリース 新種のバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を発見しました!

大阪府立公衆衛生研究所
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

日本医療研究開発機構(AMED)は、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発」事業において大阪大学を中心とする研究グループと国際共同研究開発を実施し、このたび、ベトナム国内に流通する鶏肉から新種のバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin Resistant Enterococci:VRE)を発見しました。

ポイント

大阪大学(研究代表者:大阪大学グローバルコラボレーションセンター・山本容正招聘教授)を中心としたグループは、ベトナムのホーチミン国立公衆衛生研究所との共同研究により、耐性菌検出率が著しく増加しているベトナムにおいて、薬剤耐性菌発生機構とそれが原因となる感染症の解析ならびに発生に関与する抗菌剤の実態を微生物学的、薬物学的さらには当該国の社会・経済的背景を基にした人類学・開発学的視点より研究解明し、これを基盤とした耐性菌モニタリングシステムの構築を、2011年度からJST・JICAの支援のもと、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発」事業の中で手がけてきました。2015年度からは日本医療研究開発機構(AMED)とJICAの支援において当該SATREPS事業を進め、このたび、大阪府立公衆衛生研究所チームは、ベトナム国内に流通する鶏肉から新種のバンコマイシン耐性腸球菌を発見し報告するに至りました。

薬剤耐性菌問題は、2015年のWHO総会や今年度のG7伊勢志摩サミットでも取り上げられ、今や国境を越えて世界で取り組むべき重要課題となっています。大阪府立公衆衛生研究所の原田哲也主任研究員を中心とするチームは、ベトナムのホーチミン国立公衆衛生研究所との共同研究により、ベトナム国内に流通する鶏肉から新種のバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin Resistant Enterococci:VRE)(*1)を発見しました。VREとは感染症の治療薬として重要な抗生物質「バンコマイシン(*2)」を無効にする性質を持った腸球菌の一種です。

今回の発見で、VREの新種が世界中の科学者に認知されることとなり、今後はその生息地域や病原性、さらに薬剤耐性遺伝子の獲得メカニズムなど、多くの研究が進むと思われます。そしてそれらはVREの拡散を防ぐ対策に繋がると期待されます。

なお、この新種のVREの腸球菌名は、発見された地名にちなんでE. saigonensis (エンテロコッカス・サイゴンエンシス)と命名され、近々、細菌分類の学会誌International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiologyにて発表(掲載)されることになっています。

(*1)VRE:
一般の健康なヒトの腸内にいても、病原性が非常に弱いので病気をおこすことはありません。また、たとえ鶏肉に存在しても通常の加熱調理で容易に死滅します。VREが問題となるのは、外科手術後や免疫不全など重篤な基礎疾患がある人が感染した場合です。
(*2)バンコマイシン:
腸球菌やブドウ球菌などのグラム陽性菌に抗菌作用をもつ抗生物質で、多くの抗生物質が効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の特効薬として使用されています。さらに、VRE感染症ではその他のほぼすべての抗菌剤が無効である場合が多く、臨床での治療に重大な支障をきたしています。

参考資料

大阪府立公衆衛生研究所の原田哲也主任研究員らは、ベトナムで流通する鶏肉から、新種の腸球菌を発見し、Enterococcus saigonensis(エンテロコッカス・サイゴンエンシス)と命名しました(図1、図2)。

腸球菌はヒトや動物の腸管内に常在している菌で、全ての腸球菌がバンコマイシンに耐性というわけではありません。そこで、バンコマイシン耐性を持つ菌だけを検出できる方法で鶏肉を調べたところ、20検体中2検体から腸球菌が分離されました。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)としては世界的にE. faecalisE. faeciumの二菌種が有名ですが、調べたところどちらでもなく、一番近いE. canintestiniE. disparとも異なり、これらが新種であることがわかりました。

説明図・1枚目
図1.16S rRNA遺伝子(1395 bp)に基づく系統樹

説明図・2枚目
図2.Enterococcus saigonensisの形態写真

この腸球菌の新種は、染色体上にバンコマイシン耐性遺伝子vanAをもち、ヒトのグラム陽性球菌感染症の治療薬として重要な「バンコマイシン」に強い耐性を示し、無効としてしまうことが特徴です。

このバンコマイシン耐性遺伝子vanAは「トランスポゾン(動く遺伝子)」と呼ばれる遺伝子の性質を持ち、菌から菌へ自由に動き回れる可能性があるといわれてきました。

そして、今回、発見された新種の腸球菌がすでにバンコマイシン耐性遺伝子vanAを染色体上に保有していたということは、薬剤耐性遺伝子が、考えられているより広範囲に菌種間を超えて伝播と拡散をしている可能性を示しています。

今後、E. saigonensisは新種として世界中の科学者に認知されることで、その生息地域や病原性、そして薬剤耐性遺伝子の獲得メカニズムなど、多くのことが明らかになると期待されます。

VREが世界に拡散した原因のひとつに、バンコマイシンに化学構造が類似したアポパルシンという抗菌剤を以前、鶏や豚の飼料に添加していたことが挙げられています。アポパルシン投与により鶏などの腸管内でVREが選択的に増加し、それがヒトまで広がったのではないかとも考えられています。

今回のプログラムの調査で、ベトナムでは食肉に高頻度で残留抗菌剤が検出されるという実態が明らかになっています(図3)。家畜に対する不適切な抗菌剤の使用が、VREに限らず様々な薬剤耐性菌を生み出している可能性があり、抗菌剤の適切な使用に向けての取り組み強化が今後重要となります。

説明図・3枚目
図3. ベトナムの食肉における残留抗菌剤の調査結果(2012〜2015年)

※上段:残留抗菌剤の検出率は鶏肉では38/277(14%)、鶏卵では13/125(10%)、豚肉では56/391(15%)であった。日本ではほとんど検出されない。
※下段:検出された残留抗菌剤の濃度は、10〜100µg/kgが53検体(6.6%)、100〜1,000 µg/kgが41検体(5.1%)、1,000µg/kgを超えるものが13検体(1.6%)あった。

以上

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最終更新日 2016年9月30日

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