運営体制

平成27年度採択研究開発課題 平成26年度採択研究開発課題 知財戦略課題 推進委員会 PS・PO

本事業は、文部科学省との連携の下、AMEDによって推進されています。 本事業では、1名のプログラムスーパーバイザー(PS)と2名のプログラムオフィサー(PO)が配置されており、事業全体の進捗状況を把握し、事業の円滑な推進にあたり必要となる指導・助言等を行っています。 推進委員会は、医薬品の研究開発に精通した有識者からなる機関であり、事業推進、導出活動、成果の公開・利用方策の検討や課題の進捗管理にあたり、PS及びPOに意見を述べるとともに補佐をしています。 また、PS、PO及び推進委員をメンバーとする課題評価委員会が設置されており、事前評価、中間評価、事後評価等を実施していきます。

革新的なバイオ医薬品の基盤技術を開発する研究開発課題は、平成26年度に17件、平成27年度に9件が採択されました。また、これら研究開発課題における知財・出口戦略の策定を支援するため、平成26年度に知財戦略課題が採択されています。

推進委員会/課題評価委員会 委員名簿

プログラムスーパーバイザー(PS) 兼 課題評価委員

委員 所属・役職
宮田 敏男 東北大学 大学院医学系研究科 教授

プログラムオフィサー(PO) 兼 課題評価委員

委員 所属・役職
堀内 正 慶應義塾大学 医学部 特別招聘教授
大滝 義博 株式会社バイオフロンティア パートナーズ 代表取締役社長

推進委員 兼 課題評価委員

委員 所属・役職
岡﨑 寛 株式会社カイオム・バイオサイエンス 研究本部本部長
落谷 孝広 国立がん研究センター研究所
分子細胞治療研究分野 プロジェクトリーダー
川口 勉 学校法人埼玉医科大学
リサーチアドミニストレーションセンター 非常勤講師
小梅川 純一 株式会社バイオフロンティア パートナーズ 技術顧問
後藤 俊男 理化学研究所 産業連携本部
創薬・医療技術基盤プログラム プログラムディレクター
津本 浩平 東京大学 大学院工学系研究科 教授
南学 正臣 東京大学 大学院医学系研究科 教授
宮田 満 株式会社宮田総研 代表取締役社長
株式会社日経BP 特命編集委員
藤本 陽子 ファイザー株式会社
アップジョン事業部門 メディカル・アフェアーズ統括部 統括部長

2019年1月時点

PS、POあいさつ

PSあいさつ

プログラムスーパーバイザー・東北大学 大学院医学系研究科 教授 宮田敏男

プログラムスーパーバイザー
東北大学 大学院医学系研究科
教授 宮田 敏男

革新的なバイオ医薬品の創出に向けて

医薬品の開発は、我が国が目指している知識集約型産業の良い例であり、高齢化により増加する市場を背景に、日本再興戦略でも次世代の成長産業として位置づけられています。 現在の新薬は、従来の化学合成に基づく「低分子医薬品」だけに頼ることは難しくなり、バイオテクノロジーに基づく「バイオ医薬品」の創出が期待されていますが、我が国ではバイオ医薬品開発で欧米に出遅れたと言われています。 そこで、文部科学省「革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業」が、平成26年度から5年度の事業計画でスタートしました。 我が国の国際競争力を強化するため、当該分野が抱える技術的課題を解決し、知財やノウハウを企業に繋ぎ(導出)、日本発の革新的な次世代バイオ医薬品を創出しなければいけないからです。

日本の基礎研究レベルは高く、医薬品開発においても、多くの基礎研究成果が蓄積され、創薬標的に対する情報も充溢しています。 近年の実用化研究を加速する様々な政策の下、アカデミアからの医薬品開発は、低分子医薬品を中心に、基礎研究からヒトでの有効性を確認する医師主導治験(POCの取得)までを繋げる環境が整備されてきました。 現在では、医薬品開発業務受託機関(CRO/CMO)などとうまく協業すれば、アカデミアからでもヒット化合物探索から始まって構造最適化、GMP合成/製剤、非臨床GLP試験を経て、医師主導治験まで実施することが可能になりました。 低分子医薬品は、化学合成により構造や品質が均一な製品を製造できますし、現在の分析技術で簡単に構造・品質解析が可能ですから、アカデミアからでも比較的簡単に開発実績やノウハウを蓄積できつつ有ります。

これに対し、バイオ医薬品は分子量が大きく、構造も遥かに複雑です。 ある一定の品質を確保するためには、培養条件、精製や濃縮など厳密な管理が必要で、大量の製品の同等性を確保することが難しい分野です(低分子医薬品の後続品であるジェネリック開発とバイオ医薬品の後続品であるバイオシミラー開発のハードルの高さの違いを見ても明らか)。 アカデミアとバイオ医薬品専門のCRO/CMO(バイオCRO)との連携も極めて乏しいために、たとえアカデミアが革新的なシーズの開発に理論的に成功したとしても、実用化までのハードルはまだまだ高い状況にあると言えます。 低分子医薬品と異なり、多くの製薬企業にも十分な経験・ノウハウが蓄積できていません。 現在、世界の医薬品市場の主要品目では、抗体医薬を中心とするバイオ医薬品が1/3以上を占めるに至っていますが、このうち日本発のシーズを上市している製薬企業は数社だけです。 このように、アカデミア、バイオCRO、製薬企業(バイオベンチャー)すべてが当該分野で独立して経験を積んでいる段階で、それら連携や協業はこれからの課題になっています。

日本発の革新的な次世代バイオ医薬品を創出するためには、単に要素技術やシーズ(コンセプト)を発見するだけではなく、複数の革新的な要素技術の組み合わせで付加価値や実用化可能性を高めたり、アカデミア、バイオCRO、製薬企業(バイオベンチャー)間でのオープンイノベーションの「場」を提供して経験やノウハウを繋いだりするなど、多くの課題を抽出して解決しなければいけません。 そうでなければ、学術的に画期的な成果を出したとしても(日本からは達成できると思います)、生産技術上の課題、知的財産上の課題、薬事法上の課題、コミュニケーション・ネッワーク上の課題がネックとなり、革新的な次世代バイオ医薬品は生まれません。

多くのアカデミアシーズは開発の初期段階であり(育成フェーズ)、この初期段階でしっかりとした動機づけあるいは出口(導出や実用化)を見据えた支援をする必要があります。 また、製薬企業は、アカデミア発の全てのシーズを導入してくれるわけではありませんから、ただちに導出できないシーズは、アカデミア側で、適宜バイオCROなどを活用した上で、マテリアルの最適化、品質保証、薬事法に則ったGLP試験というステップを踏んで育成していかねばなりません。 低分子医薬品の開発とは異なった経験やノウハウをこれから蓄積していかねばならないわけです。 本事業の趣旨とは若干違いますが、各研究開発課題の推進と並行して、このような問題解決に向けた議論や対応も重要であると認識しております。

バイオ医薬品は、低分子医薬品に比べ、その歴史も浅く、開発上の様々な課題がありますが、一方では革新的な医薬品が生み出されるポテンシャルも秘めています。 平成26、27年度で26件の多様な研究開発課題を採択しました。 これらは、いずれも革新的バイオ医薬品につながるポテンシャルを秘めたシーズや技術基盤であり、これら研究の進展を楽しみにしています。 幸い、バイオ医薬品開発に精通した専門家の方々に本事業を管理推進する推進委員にご就任いただいていますので、皆で協力して柔軟な事業運営を行い、当事業を有意義なものとしたいと思います。

平成27年4月からは、本事業は日本医療研究開発機構(AMED)に移管され、「オールジャパンでの医薬品創出」の一つの柱となりました。 日本医療研究開発機構で予定される他の事業とも連携を図るとともに、規制当局、さらには民間企業(バイオベンチャー、バイオCRO、製薬企業)とも対話を交えながら、活動して参りたいと思います。 皆様方のご支援を切にお願いする次第です。

POあいさつ

プログラムオフィサー・慶應義塾大学医学部 特別招聘教授 堀内正

プログラムオフィサー
慶應義塾大学 医学部
特別招聘教授
堀内 正

「革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業」に期待すること

「抗体医薬」は1990年代後半に登場しましたが、当時の日本の大手製薬企業は比較的低分子医薬の開発指向が強く、バイオ医薬品の開発能力で、2000年代初期には、日本の製薬企業と欧米の企業との間に大きな差が生じていました。 しかし、この差も、抗IL-6レセプター抗体や抗PD-1抗体、ポテリジェント技術、等の日本発のバイオ医薬品(抗体医薬)・技術が続々と開発されるに至り、現在はその差が少なくなったと言っても過言でありません。

抗PD-1抗体は、小野薬品が、2013年12 月に悪性(進行性)黒色腫の治療薬として製造販売承認申請し、現在、臨床の現場で高い治療効果が得られていると聞いています。 悪性黒色腫以外に米国で進行非小細胞肺癌の治療薬として、米食品医薬品局の画期的治療薬に指定されたと発表されています。この様な夢の薬である抗体医薬が、近年続々開発されていますが、一方「価格が高い」「服用が注射に限定」等の問題点もあります。 この解決策として「生産方法の改良」「抗体の低分子化」の技術開発がありますが、現時点で、研究技術レベルは十分でなく、更なる研究開発が求められています。

核酸医薬は、従来と全く異なる創薬ターゲットや新しい医薬品の創出が可能です。核酸化学においての我が国発の論文数はトップクラスであり、更に、近年、ボナック、キラルジェン等の核酸化学をベースとした日本発ベンチャー企業が相次いで設立され、核酸研究も活発化しています。 2013年は、日本企業が開発した核酸医薬品2種類のフェーズI試験が開始され、さらに数種の核酸医薬品が医師主導型治験においてヒトに投与されています。しかし、核酸医薬は分解されやすく、体内動態・分解経路を把握することによる改良が必要になります。 更に、核酸医薬の合成技術は収率が低い等、抗体医薬と同様に核酸医薬にも問題点があり、更なる研究開発が求められています。

この様に近年画期的なバイオ新薬・技術が日本で開発され研究開発が活性化していますが、2012年に米国で開発されているバイオ医薬品は、ワクチン開発も含めると約900品目を超えているとの事です。 今後欧米レベルのバイオ医薬品を日本で創出させるには、産官学での更なる研究開発の加速が必須であると思います。バイオ医薬品の研究開発を加速するため、文部科学省は2014年にオールジャパンの事業として「革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業」を立ち上げました。 この事業のミッションは、革新的バイオ医薬品創出のための基盤技術を開発し、5年以内に企業等への技術移転を目指すものです。

前記の如く、この事業の大きな特徴の一つは、5年以内に企業等への技術導出にあります。そのためには、産業界で研究開発の経験のある人材が、アカデミアの研究者とは違う視点で、本事業の研究開発を評価・支援し必要なアドバイスを行うことが必須であると考えます。 小職は30年間以上、製薬企業の創薬現場で主に低分子医薬品の創薬研究に関わって来ました。詳しく申し上げると、ゲノム研究からの標的探索、数十万化合物の化合物ライブラリーの構築、HTS、タンパク質の構造解析、SBDD、計算創薬(バイオインフォマティックス)、等の創薬標的探索と初期スクリーニング系の構築を担当して参りました。 その後、慶應義塾大学に移り、現在は産官学連携業務及びTR(トランスレーショナル・リサーチ)研究に携わっています。 小職は、前記の如く、製薬企業での長年の研究開発経験があり、また医薬品や診断薬開発の企業の研究開発担当者との交流も深く、必要に応じて企業のサポートを得る事が出来る人脈も豊富であります。 福沢諭吉先生のお言葉に「活用なき学問は無学に等し」とありますが、この事業で得られた成果を、豊富な人脈を通じて積極的に技術移転(活用)して行きたいと考えております。

2015年4月には「日本医療研究開発機構(AMED)」が始動しました。それによって、日本のライフサイエンスの研究が大きく変化すると考えられます。この様な中で、本事業を確実に前進させ成果を得ることは、バイオ創薬の分野で「欧米に追いつき、追い越す」事になると確信しています。 更に、この事業の成果が「アルツハイマー病」「がん」「統合失調症」等、未だに真の有効な薬が見いだされていない疾患の治療薬の開発に貢献することを大いに期待しています。

最後になりましたが、皆様のご指導ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。

プログラムオフィサー 株式会社 バイオフロンティア パートナーズ 代表取締役社長 大滝義博

プログラムオフィサー
株式会社バイオフロンティア パートナーズ 代表取締役社長 大滝 義博

世界に発信するバイオ医薬品の開発に向けて

近年のバイオテクノロジーの進展は目覚ましく、次世代シークエンサ―による全ゲノム解析データの蓄積、新規標的分子の同定、医薬品候補物質の作用メカニズムの分子レベルでの解明、ゲノム編集技術の発展等、日進月歩の状況を呈しています。 これら技術を利用することにより、従来にはなかった新規メカニズムのバイオ医薬品開発が可能となるのではないかとの期待が拡がっています。 この状況の下、バイオ医薬品の熾烈な開発競争が世界各地で繰り広げられているのです。現状、革新的医薬品の中でバイオ医薬品の占める割合は急速に増加しており、日本においてもこれに遅れをとることなくバイオ医薬品の開発を推進する必要があります。

これまで日本は基礎的研究の分野では標的となる分子の発見など世界に対して一定の貢献を続けてきました。しかしながら、それを受けての実用化が欧米の製薬企業により成し遂げられる等、開発の面では充分なシステム構築ができていなかったと指摘されています。

グローバルな企業間競争に勝ち残るためには、世界的に通用するバイオ医薬品を生み出す研究開発力とともに、開発した製品を迅速に市場に投入する為の取り組みも積極的に実行しなければなりません。 実用化のための開発段階は、全世界の開発者が競争相手となるため、確実なエビデンスの蓄積とともに、知財戦略、開発スケジュールの達成に向けたプロジェクトマネージメントなど、厳格な進捗管理、戦略が要求されます。 すなわち、アカデミア発のシーズを用いた研究開発に於いては出口戦略を明確にして、基礎研究からバイオ医薬品の製品化に至るまでを切れ目なく支援する為のバイオ医薬品開発支援体制の構築が必須となるのです。 まさに、この為に、2014年に文部科学省が立ち上げたのが「革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業」なのです。

本事業では出口を、「アカデミアでの研究開発成果を5年以内に企業に移転し、迅速に製品化に繋げる基盤技術を開発する」ことに置いています。

つまり、本事業はアカデミアの研究成果を企業が引き継いで開発を継続し、迅速に製品化を達成するための基盤となる技術開発を実施することにあるのです。 そのためには、アカデミアでの研究成果は、開発を引き継ぐ企業がその先の開発過程で利用できる根拠となる質と量を持ったデータを適切な研究期間の間に確保しなければならないことになります。 つまり、アカデミアが提供するデータの再現性を製薬企業が始めから検討しなおすなどの無駄な時間を費やす必要のない、信頼性を有する試験データを提供できなければなりません。 その意味で、アカデミアの研究者にも医薬品開発の過程を充分に理解していただく必要があります。本事業では創薬経験者を含む推進委員会を設置し、製薬企業への技術移転に必要となる試験デザインや項目を検討する際に一緒に議論して効率的に進める体制を構築しました。 これにより、オールジャパン体制下でのバイオ医薬品の継続的創出を可能とする仕組みの第1歩が始まるのです。

2015年4月から、本事業は日本医療研究開発機構(AMED)に移管されました。日本医療研究開発機構では、医薬品開発に関わる各種事業が併行して実施されます。これら他の事業とも有機的な連携を図り、世界に発信できるバイオ医薬品の開発を目指せればと考えています。

今後とも、皆様のご支援を切にお願い申し上げます。

知財戦略課題

革新的バイオ医薬品創出に向けての知財・出口戦略の策定

東北大学 大学院医学系研究科 特任准教授
赤堀 浩司

本事業では、研究開発課題の成果を企業等へ導出することを目指しており、企業導出のための知財戦略、出口戦略の策定を支援することが必要とされています。

本課題は、この支援を行うために設置されており、知的財産や医薬品開発の専門家をメンバーとしています。

知財戦略については、各研究開発課題の進捗状況や知財取得状況を分析し、必要に応じて周辺技術の調査を行って、その検討を進めています。そして、AMED、PS・PO、推進委員に相談をした上で、各技術開発課題やその知的財産部門へ助言を行っています。

また、出口戦略については、事業化の妥当性の評価・検討や、市場調査・評価を通じて、各技術開発課題に助言を行っていきます。企業連携や薬事規制に関する助言も出口戦略の重要な要素です。

知財戦略、出口戦略に磨きをかけ、研究開発課題の成果が企業等へ円滑に導出されるよう鋭意支援を進めています。