平成27年度採択研究開発課題

糖タンパク質バイオ医薬品の糖鎖の高機能化のための解析・制御・管理システムの開発

研究開発代表者:川崎 ナナ

横浜市立大学 大学院生命医科学研究科 教授

川崎 ナナ

多くの糖タンパク質が医薬品として承認されています。 糖タンパク質の糖鎖部分は、不均一性が高く、製造方法の変更(スケール,培養方法,精製方法など)によって変動することが知られています。 糖鎖不均一性の変動は、その糖タンパク質医薬品の生物活性,体内動態,免疫原性,及び物理的化学的性質などに影響し、結果として、有効性・安全性に影響を及ぼす可能性があります。 そのため、糖タンパク質医薬品の開発においては、糖鎖の構造、及び、その糖鎖が品質・有効性・安全性に及ぼす影響を十分に理解し、目標とする品質・有効性・安全性を確保するために必要な糖鎖プロファイルを維持することが重要です(糖鎖の高機能化)。 多くの場合、糖鎖の高機能化は、製造工程パラメータ,原材料,及び,試験(工程内管理試験や規格及び試験法)の最適化などにより行われます。

現在、糖タンパク質の糖鎖の構造解析に最もよく用いられている方法として、質量分析があります。 構造が複雑で、多様性が高い糖タンパク質の糖鎖を、MSを用いて解析するためには、十分な経験と知識が要求されます。 また、糖鎖に影響する製造工程パラメータや試験の最適化には、莫大な費用と時間が費やされます.そのため,糖タンパク質医薬品の糖鎖の構造・定量解析、製造工程開発、及び製造工程管理を、迅速に、かつ自動で行うことができる糖鎖管理システムの開発が求められています.

本開発研究では,公立学校法人 横浜市立大学、三井情報科学株式会社、及びサーモフィッシャーサイエンティフィックス株式会社が、LC/MSとアルゴリズムを含む糖鎖の構造・定量解析、及びそれらを組み込んだ糖鎖管理システムを開発します。 公益財団法人 木原記念横浜生命科学振興財団は、シングルユース パーフュージョンシステムの小スケールモデルを用いて、糖鎖管理システム開発に必要な様々な糖鎖を持つモノクローナル抗体を試験的に製造します。 また、木原記念横浜生命科学振興財団は、抗体製造における糖鎖管理システムの実用性を、大スケールモデルを使って検証します。 私たちのプロジェクトの成功により、糖鎖管理が可能な製造工程が提供され、革新的糖タンパク質バイオ医薬品や、糖タンパク質バイオ後続品の開発が加速されると期待されます。

<図1>

糖タンパク質医薬品開発の現状と課題、及び、研究組織

<図2>

糖タンパク質医薬品の糖鎖の解析・管理システム開発に向けたストラテジー

<図3>

抗体製造のための糖鎖管理可能な培養システム開発に向けたストラテジー

<図4>

プロジェクトメンバー(横浜市立大学、及び木原記念横浜生命科学振興財団)、木原財団GMP管理施設前にて