イベント 開催日:令和6年7月26日(金) 「産学連携による次世代創薬AI開発(DAIIA)公開シンポジウム~産学協働で拓くAI創薬の未来~」を開催しました
開催報告

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⽇本医療研究開発機構(AMED)にて実施している『産学連携による次世代創薬AI開発(DAIIA)』では、令和7年3月末で事業終了を迎えるにあたり、成果報告の一環として、令和6年7月26日に公開シンポジウムを開催しました。
コングレスクエア日本橋(東京)にて会場のみの開催でしたが、製薬企業や大学等の研究者を中心に約180名の方にご参加いただきました。
日下部哲也 AMED創薬事業部長の開会挨拶、厚生労働省 研究開発政策課 飯村康夫 治験推進室長の来賓挨拶に続き、本事業のプログラム・オフィサーである中村春木先生に、近年の科学分野で起こった計算科学によるパラダイムシフトとその創薬分野への応用を概略いただくとともに、本事業の趣旨・目的についてお話いただきました。
続く成果報告のパートでは、まず、研究代表者である本間光貴先生(理化学研究所)に、本事業で開発中の3つの予測AIを統合した低分子創薬の構造最適化に資する「統合創薬AIプラットフォーム」の全体像をご紹介いただきました。本間先生には引き続き、「新規化合物提案AI」についてご発表いただきました。複数の構造生成AIを組み合わせて、複数の標的分子に対する活性・選択性・ADMET(薬物動態・毒性)を同時に最適化して構造発生させるAIを開発中であることが報告されました。続いて、研究分担者である奧野恭史先生(京都大学)に、「化合物プロファイル予測AI」についてご発表いただきました。本予測AIは、公共データとDAIIA参加企業が提供するデータを統合して構築したデータベースを用いたオン・オフターゲット・薬物動態・毒性予測が可能なAIです。予測精度をさらに向上させるため、提供データだけでなく、秘匿性の高い企業データを外部に持ち出すことなく(提供することなく)AI学習に用いる連合学習(Federated Learning)という仕組みを構築し、多拠点による連合学習に成功したことが報告されました。次に、研究分担者の山西芳裕先生(名古屋大学)から、「オミクス情報等の多階層データを用いた創薬AI」についてご発表いただきました。細胞に化合物を添加したときの遺伝子発現パターンの変化を基に標的タンパク質を予測するAIや、疾患特異的な遺伝子発現パターンから化合物を構造発生させるAIの開発を行っており、従来にない新しい切り口での創薬を提案するAIとしてご報告いただきました。
本シンポジウムの後半では、成果報告を行った先生方の他、DAIIAに参加する製薬企業から東レ株式会社の上田寛先生と田辺三菱製薬株式会社の鳥本奈緒先生、ライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)の志水隆一先生を加えてパネルディスカッションを行いました。モデレーターはAMED創薬事業部の寺坂忠嗣調査役が務めました。パネルディスカッションに先立ち、鳥本奈緒先生にはDAIIAへの参加に至る製薬協の活動経緯と当時の議論ポイントについて話題提供いただきました。続いて、上田寛先生には、企業データの提供や分科会参加等を通した製薬企業のDAIIAへの関わり方について話題提供いただきました。志水隆一先生からは、DAIIAの成果である統合創薬AIプラットフォームの社会実装に向けた取り組みとして、事業化の骨子案が紹介されました。パネルディスカッションでは、企業秘密とも言える企業データを各製薬企業から提供いただくために、信頼関係の構築や技術的な工夫を行ってきたことや、実際の創薬現場で使えるレベルのハイクオリティを目指して開発を進めてきた活動の経緯が共有されました。また、本事業で得られた成果の活用方法について意見が交わされ、DAIIA参加企業だけでなく、DAIIAに参加していない製薬企業やアカデミア研究者にも使っていただき、日本の創薬力向上のために幅広く活用してほしいということが議論されました。さらに、今後の展望として、低分子以外のモダリティにも対象を広げていくことや、シミュレーションとの組み合わせや富岳の活用といった新技術の導入など、DAIIAの発展形についても議論が及びました。
最後に、本事業のプログラム・スーパーバイザーである田中博先生に本シンポジウムを総括していただきまして、本シンポジウムは盛況のうちに幕を閉じました。
ここに、ご登壇いただいた先生方、ご参加の皆様に、深く御礼申し上げます。
本シンポジウムの様子は下記のAMED YouTubeチャンネルからご覧いただけます。
https://youtu.be/g4ouuEuYvrk
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会場
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パネルディスカッション
掲載日 令和6年10月11日
最終更新日 令和6年10月11日