プレスリリース 『指揮細胞』である間葉系幹細胞と『実働細胞』であるマクロファージは効果的に肝硬変症の線維化改善、再生促進をもたらす事をそれらの細胞の生体内での動態も含めて明らかにしました

平成30年11月5日プレスリリース

国立大学法人新潟大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

本学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野(寺井崇二教授、土屋淳紀講師)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服緊急対策研究事業*の支援の下、研究を進めてきた『肝硬変に対する間葉系幹細胞およびマクロファージの線維化改善機序のイメージングおよびエクソソーム解析による解明とその応用』について、研究成果が英国の論文誌「STEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINE」にfeatured paperとして2018年11月5日に掲載されます。

*平成27年度、AMEDの創設に伴い、厚生労働省からAMEDに実施主体が変更となった研究事業です。肝炎の予防、診断、治療に係る技術の向上、肝炎医療を行う上で必要な医薬品・医療機器の開発につながる基盤技術の開発も含めた基礎・臨床研究を実施しています。

本研究成果のポイント

  • 間葉系幹細胞が、肝硬変の際に炎症、再生、線維化改善を制御する“指揮細胞”として働くことを明らかにした。
  • 間葉系幹細胞はマクロファージをM1(炎症性)からM2(抗炎症性)へと表現型を変化させるのに関わり、肝線維化改善を促進させた。また我々は生きたままマウス肝臓をイメージング出来る技術を用いて、投与後の間葉系幹細胞やマクロファージの動態を確認することに成功した。また投与マクロファージが壊死肝細胞を貪食するライブイメージング画像をとらえることに世界で初めて成功した。
  • 新潟大学では肝硬変症に対する他家脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた再生治療開発を目的とした治験(Phase Ⅰ/II)が行われているが、今回明らかにした機序は、今後間葉系幹細胞を用いた治療のさらなる発展のため重要である。

研究の背景

肝硬変は、肝臓に高度の線維化をきたし、肝機能が低下し黄疸、腹水などの症状を呈する疾患ですが、一部は不可逆でありその場合根本的な治療は肝移植のみで新たな治療法が求められています。研究代表者の寺井崇二教授は肝硬変症に対する自己骨髄細胞投与療法を開発し臨床上の有効性を明らかにしていましたが、骨髄中のどの細胞が作用するか明らかになっていませんでした。また間葉系幹細胞と骨髄由来培養マクロファージはそれぞれ肝硬変モデルマウスにおいて線維化を改善させるという報告がありましたが、いずれが有効かは検証されていませんでした。

研究の概要

はじめに培養細胞を用いた実験で間葉系幹細胞はマクロファージを抗炎症性マクロファージへと性質を変化させるために働くことを解明しました。

次に肝硬変モデルマウスに骨髄由来の間葉系幹細胞(100%)投与, マクロファージ(100%)投与, 間葉系幹細胞とマクロファージの混合投与(それぞれ50%)をそれぞれ行ったところ、混合投与で最も肝線維化が改善し、再生も促進するという新たな結果を得ました。

さらに混合投与の際のそれぞれの投与細胞の動態について、大阪大学大学院医学系研究科免疫細胞生物学 石井優教授、菊田順一助教との共同研究で二光子顕微鏡を用いてライブイメージで肝臓内を観察することに世界で初めて成功しました。その結果、投与直後からマクロファージが肝臓の障害部の線維に近いところに存在し、壊死した肝細胞を貪食している像をとらえることに成功しました。一方、間葉系幹細胞は多くが肺にトラップされ肝臓に行くのは僅かにもかかわらず効果を及ぼし、その産生する何らかの物質が間接的に線維化改善に寄与することが示唆されました。

また投与した細胞は投与されたマウス自身(ホスト)のマクロファージなどを効果的に肝臓内に呼び寄せる作用もあり投与した細胞と力を合わせて線維化改善再生促進を行うことが推定できました。

相関図

研究の成果

今までの自己骨髄細胞投与療法、幹細胞を用いた細胞療法で明らかにされていなかったメカニズムで、細胞療法における間葉系幹細胞、マクロファージそれぞれの細胞の役割をはっきりさせた点はまず貴重な成果と考えられます。さらに、それぞれの細胞がいつどの組織のどの場所に定着しているといったことは未知だったため、この研究により、細胞投与後の動態を明瞭に示すことができたことは貴重な成果と考えます。今後、間葉系幹細胞がマクロファージに効果を及ぼした物質等がさらに明らかになれば、細胞に頼らない新たな治療法の開発につながる可能性があります。

研究成果の公表

これらの研究成果は、2018年年11月5日(月)18時(日本時間)にSTEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINE 誌(IMPACT FACTOR 4.929)へ掲載されます。

雑誌名:
STEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINE 誌
タイトル:
『Mesenchymal stem cells and induced bone marrow-derived macrophages synergistically improve liver fibrosis in mice』

謝辞

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業の肝炎等克服緊急対策研究事業である「肝硬変に対する間葉系幹細胞およびマクロファージの線維化改善機序のイメージングおよびエクソソーム解析による解明とその応用」の支援により行われました。

本件に関するお問い合わせ先

研究成果について

新潟大学大学院医歯学総合研究科
消化器内科学分野
教授 寺井 崇二
E-mail:terais"AT"med.niigata-u.ac.jp

講師 土屋 淳紀
TEL:025-227-2207/Fax:025-227-0776
E-mail:atsunori"AT"med.niigata-u.ac.jp

AMED事業について

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
戦略推進部 感染症研究課
(肝炎等克服実用化研究事業 担当)
TEL:03-6870-2225/FAX:03-6870-2243
E-mail:hepatitis"AT"amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス”AT”の部分を@に変えてください。

最終更新日 平成30年11月5日