プレスリリース 深層学習技術を応用した手術検討ソフトウェアでクラスⅡの医療機器の認証を取得

プレスリリース

東京大学
株式会社Kompath
東京医科歯科大学
日本医療研究開発機構

発表者

齊藤 延人(東京大学医学部附属病院 脳神経外科 教授)
金 太一(東京大学医学部附属病院 脳神経外科 助教)
道家 健仁(株式会社Kompath 代表取締役)
小山 博史(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 教授)
斎藤 季(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 助教)
五十嵐 健夫(東京大学大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授)
中島 義和(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 医療デバイス部門バイオ情報分野 教授)

発表のポイント

  • 三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を用いた手術計画を検討することに特化したソフトウェア「GRID」(注1)を開発し、医療機器(クラスⅡ)の認証(注2)を取得しました。
  • 「GRID」は病気を診断するソフトウェアではなく、手術計画を検討することを目的として、深層学習技術(注3)などを駆使して開発された世界初の手術検討ソフトウェアです。
  • 手術計画の精度向上や、外科手術の安全性や技術向上に資することが期待されます。

発表概要

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が展開する「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靱化事業」における「術前と術中をつなぐスマート手術ガイドソフトウェアの開発」プロジェクトの支援を受けて、世界初となる手術計画の検討に特化したソフトウェア「GRID」(グリッド)を開発し、医療機器(クラスⅡ)の認証を取得しました。「GRID」は病気を診断することが目的ではなく、手術計画を検討することに特化し、深層学習技術などの画像処理技術を駆使して開発された世界初の手術検討ソフトウェアです。「GRID」には手術シミュレーションを効率よく検討するための多数の機能(自動位置合わせ機能、自動セグメンテーション(注4)機能などの自動処理や、組織の部分移動や削除機能などのバーチャルリアリティ操作)が搭載されています。「GRID」の使用によって、これまで医師の負担となっていた手術計画時の読影作業や医用画像処理の手間を大幅に効率化することが可能であり、手術計画の精度向上や、外科手術の安全性および技術向上などに資することが期待されます。

発表内容

東京大学医学部附属病院脳神経外科(齊藤延人教授)、株式会社Kompath(道家健仁代表取締役)、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻(小山博史教授)、東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻(五十嵐健夫教授)、および東京医科歯科大学生体材料工学研究所医療デバイス部門バイオ情報分野(中島義和教授)らのグループは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が展開する「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靱化事業」における「術前と術中をつなぐスマート手術ガイドソフトウェアの開発」プロジェクトの支援を受けて、世界初となる手術計画の検討に特化したソフトウェア「GRID」(グリッド)を開発し、医療機器(クラスⅡ)の認証を取得しました。開発ソフトウェア「GRID」は深層学習によって得られたパラメータを用いることで、医用画像から簡単に効率よく高精細な三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を作成することが可能です(図)。更に仮想開頭機能や組織の部分移動機能などを活用することによってバーチャルリアリティ手術シミュレーションを実施することも可能です。「GRID」を用いることによって、手術計画の精度向上や手術の安全性に資することが期待されます。

図:開発したソフトウェア「GRID」の画面
医用画像から簡単に効率よく高精細な三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を作成することが可能であり、バーチャルリアリティシミュレーション機能によって実際の手術に近い状態を再現することが可能。

「GRID」には、深層学習技術などを駆使して開発された最新の医用画像処理機能が搭載されており、数百~数千枚の医用画像データを入力すると自動的に3DCGが作成されます。この機能は東京大学附属病院脳神経外科が有する医用画像処理技術のノウハウを深層学習技術によって具現化したものです(この機能はソフトウェアを使用するに従って性能が変化するものではありません)。更に手術シミュレーションを効率よく検討するための多数の機能(自動位置合わせ機能、自動セグメンテーション機能などの自動処理や、組織の部分移動や削除機能などのバーチャルリアリティ操作)が搭載されています。「GRID」は病気を診断することが目的ではなく、手術計画を検討することに特化し、深層学習技術などの画像処理技術を駆使して開発された世界初の手術検討ソフトウェアです。

これまでは、数千枚の医用断面画像を丹念に読影して、それを医師の頭の中で3次元的にイメージして手術計画を行うという、不正確で時間のかかるものでした。「GRID」は膨大な医用画像データを1つの3DCGとして簡単に表示することが可能であり、これまで多大な労力と時間、および高度な技術を必要としていた画像処理や手術計画の大幅な効率化を達成しています。更に開頭位置や、臓器を部分的に移動させるなど手術を模したバーチャルリアリティシミュレーションも実行可能であり、実際の手術に近い状態を再現することが可能です。他の画像診断ソフトウェアや手術ナビゲーションシステムとの連携も可能で、作成した臓器モデルや画像を出力することによって医療機器間での情報共有も可能です。これによって、術前・術中・術後までの情報をシームレスにつなげ、外科手術に必要な医療画像情報のトータルサポートシステムを目指します。

用語解説

(注1):GRIDについて
管理医療機器
販売名:医用画像3DCGシミュレーションソフトウェアGRID
認証番号:303AGBZX00028000
一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
クラス分類:プログラム1 疾病診断用プログラム
(注2):医療機器(クラスⅡ)の認証
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、人体に与えるリスクの程度によって医療機器を分類している。クラスⅡ(管理医療機器)は不具合が生じた場合、人体に与えるリスクが比較的低いとされる医療機器が該当する。
(注3):深層学習技術
人間の神経細胞の仕組みを模した機械学習の手法のひとつで、多層の人工ニューラルネットワークによる機械学習手法のこと
(注4):セグメンテーション
医用画像に写っている組織を区分けして抽出すること

お問い合わせ先

研究に関するお問い合わせ

東京大学医学部附属病院 脳神経外科
助教 金 太一
TEL:03-5800-8853(直通) FAX:03-5800-8655
E-mail:tkin-tky“AT”umin.ac.jp

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東京大学医学部附属病院 パブリック・リレーションセンター
担当:渡部、小岩井
TEL:03-5800-9188(直通)
E-mail:pr“AT”adm.h.u-tokyo.ac.jp

株式会社Kompath
担当:道家 健仁
TEL:03-3830-0785 FAX:03-6700-1932
E-mail:info“AT”kompath.com

東京大学医学部・医学系研究科
総務チーム(総務担当)
TEL:03-5841-3304(直通)
E-mail:ishomu“AT”m.u-tokyo.ac.jp

東京大学大学院情報理工学系研究科 広報室
E-mail:ist_pr“AT”adm.i.u-tokyo.ac.jp

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AMEDの事業に関するお問い合わせ

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
担当:小山 昇
医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課
E-mail:Noboru-koyama“AT”amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

掲載日 令和3年5月10日

最終更新日 令和3年5月10日