プレスリリース ベトナムにおけるジカ熱の流行とジカウイルス感染による小頭症の関連性を確認
プレスリリース
国立大学法人長崎大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
長崎大学熱帯医学研究所 病原体解析部門のMoi Meng Ling(モイ メンリン)准教授と、同熱帯医学研究所 附属アジア・アフリカ感染症研究施設の長谷部 太 教授は、WHOおよびベトナム国立衛生疫学研究所(NIHE)と協力し、ベトナム中央高地Dak Lak省地域におけるジカ熱の流行とジカウイルス感染による小頭症の関連性を確認しました。
今回ベトナムで確認されたジカウイルス感染による小頭症例は、診断データを添えて論文報告された症例としては、東南アジアで初めてとなります。今回のジカウイルス感染による小頭症の症例について診断データを添えて論文報告することで、アジアにおけるジカウイルスの先天性感染の調査の必要性を唱えます。
今回の研究成果は、英医学誌「ランセット・インフェクシャス・ディジージーズ(Lancet Infectious Diseases)」に2017年7月19日(水)23時30分(UK time)(※日本時間 7月20日(木)7時30分)に掲載されます。 なお、本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業、および感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)の支援により行われました。
研究の背景・概要
2016年3月にベトナム南部のホーチミン市とニャチャン市においてジカ熱疑い例が見つかり、長崎大学はハノイにある国立衛生疫学研究所(NIHE)と協力して、このジカ熱疑い例の検体からジカウイルス遺伝子を検出し、シーケンス解析によりウイルス遺伝子の塩基配列を決定し、ベトナムで初めてのジカウイルス感染例と確定しました。ベトナムはデング熱の流行国でもあり毎年数万人のデング熱患者が発生しています。通常の血清診断ではデング熱とジカ熱の鑑別診断ができないことから、同年8月に長崎大学はWHOと協力してNIHEにデング熱とジカ熱を鑑別できるプラック減数中和試験(PRNT)を導入しました。これにより同年10月にベトナム中央高地にあるDak Lak省からNIHEに送られてきた小頭症児の血清について、NIHEによりジカウイルスに対する中和抗体が確認されました。この小頭症児の母親は妊娠中期にデング熱様症状を発症していたことが確認されています。そこで、長崎大学とNIHEは11月上旬に現地の研究機関と協力して、この患児の家族と周辺住民から血清を採取し、WHO協力機関である長崎大学熱帯医学研究所のウイルス部門に送付し、ジカウイルスと交差反応を示す他のフラビウイルス(デングウイルス1,2,3,4型、日本脳炎ウイルス)に対する中和抗体価についても測定した結果、母子と同居家族、及び周辺住民にジカウイルスに対する高い中和抗体価(4倍以上)が確認され、この地域におけるジカ熱の流行とジカウイルス感染による小頭症の関連が証明されました。
今回ベトナムで確認されたジカウイルス感染による小頭症例は、診断データを添えて論文報告された症例としては、東南アジアで初めてとなります。
今後、ベトナムに限らずアジアにおけるジカウイルスの先天性感染の調査、及び、妊婦の感染予防対策が重要です。
お問い合わせ先
研究内容について
国立大学法人長崎大学
熱帯医学研究所 附属アジア・アフリカ感染症研究施設
教授 長谷部 太(はせべ ふとし)
TEL:095-819-7806
E-mail:rainbow“AT”nagasaki-u.ac.jp
報道担当
国立大学法人長崎大学 広報戦略本部
TEL:095-819-2007
E-mail:kouhou“AT”ml.nagasaki-u.ac.jp
事業について
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
戦略推進部 感染症研究課
TEL:03-6870-2225
E-mail:kansen“AT”amed.go.jp
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。
掲載日 平成29年7月20日
最終更新日 平成29年7月20日