プレスリリース インドで分離されたロタウイルスのゲノム解析により新型ロタウイルスの発生加速とワクチン効果低下の一因を解明
プレスリリース
国立大学法人岡山大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
岡山大学インド感染症共同研究センターの前センター長・篠田純男名誉教授、今村大輔准教授と北里大学片山和彦教授(前国立感染症研究所室長)は、インドでのロタウイルス分離株の遺伝子全ゲノム解析により、非定型ウイルス株の成立・流行の要因、ワクチンの影響等について明らかにしました。本研究成果は7月25日、科学誌「Infection, Genetics and Evolution」に掲載されました。
同一患者に遺伝子型の異なるロタウイルスが複数株同時感染する事象が頻繁に起こる非衛生的な環境が、ワクチン効果を減少させ、新型ウイルスの出現頻度を上昇させています。インドなどの発展途上国では、年少者のロタウイルスが主要な下痢症病原体となっており、流行予防のためにも、ウイルスの継続的な解析・動向調査が必要です。
概要
篠田名誉教授らの研究グループは、発展途上国における低年齢層の下痢症の最も主要な病原体であるロタウイルスについて、インドでの分離株を中心にゲノムを解析しました。
インドは、同一患者に遺伝子型の異なるロタウイルスが複数株同時感染する現象が頻繁に起こる非衛生的な環境ですが、使用されているワクチンの有効な遺伝子型は限られているため十分な効果を発揮していないので、中途半端なワクチン接種は、かえって抵抗性株が流行し、変異して、新型株の誘導を助長する可能性を示唆しました。
ロタウイルスは11本の遺伝子文節をもっています。典型的なロタウイルスの遺伝子はG1P[8] I1-R1-C1-M1-A1-N1-T1-E1-H1で表されますが、近年、非典型的なロタウイルスG2P[4]I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2にG9やE6、N1などの遺伝子が入り込んだ新型ロタウイルスが流行の兆しを見せており、問題となっています。本研究グループは、このような非典型的ロタウイルスの遺伝子文節が変化を起こし、新型が生じていることを示しました。この非典型株は、インドなどで使用されているワクチン株とは異なるため、インドでワクチンの効果が良くない原因の一つでもあり、流行の要因につながっているといえます。
インドで発生した非典型的G2P[4]ロタウイルスは、世界規模の流行の兆しを見せており、ワクチン導入国を含めた全ての国々で今後の流行の継続的な監視が必要です。インドのように衛生環境が十分に整っていない発展途上国に遺伝子型の合わないワクチンを導入しても、効果が期待できず、かえって新型ロタウイルス発生の温床となる可能性があります。そのため、今後も継続した調査研究が必要であり、岡山大学インド感染症共同研究センター、インド国立コレラおよび腸管感染症研究所、国立感染症研究所、北里大学との連携のもと、いち早く新型ウイルスの出現を検出して報告し、適切なワクチン開発のための情報提供をすることが重要です。
なお、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)による支援の下実施したものです。
インドは、同一患者に遺伝子型の異なるロタウイルスが複数株同時感染する現象が頻繁に起こる非衛生的な環境ですが、使用されているワクチンの有効な遺伝子型は限られているため十分な効果を発揮していないので、中途半端なワクチン接種は、かえって抵抗性株が流行し、変異して、新型株の誘導を助長する可能性を示唆しました。
ロタウイルスは11本の遺伝子文節をもっています。典型的なロタウイルスの遺伝子はG1P[8] I1-R1-C1-M1-A1-N1-T1-E1-H1で表されますが、近年、非典型的なロタウイルスG2P[4]I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2にG9やE6、N1などの遺伝子が入り込んだ新型ロタウイルスが流行の兆しを見せており、問題となっています。本研究グループは、このような非典型的ロタウイルスの遺伝子文節が変化を起こし、新型が生じていることを示しました。この非典型株は、インドなどで使用されているワクチン株とは異なるため、インドでワクチンの効果が良くない原因の一つでもあり、流行の要因につながっているといえます。
インドで発生した非典型的G2P[4]ロタウイルスは、世界規模の流行の兆しを見せており、ワクチン導入国を含めた全ての国々で今後の流行の継続的な監視が必要です。インドのように衛生環境が十分に整っていない発展途上国に遺伝子型の合わないワクチンを導入しても、効果が期待できず、かえって新型ロタウイルス発生の温床となる可能性があります。そのため、今後も継続した調査研究が必要であり、岡山大学インド感染症共同研究センター、インド国立コレラおよび腸管感染症研究所、国立感染症研究所、北里大学との連携のもと、いち早く新型ウイルスの出現を検出して報告し、適切なワクチン開発のための情報提供をすることが重要です。
なお、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)による支援の下実施したものです。
補足・用語説明
近年の日本における食中毒の病因は、ノロウイルスまたはカンピロバクターが多く、患者数ではノロウイルスが最多数となっています。一方で、低年齢層では、ロタウイルス下痢症が多く見られます。
インドでは、図に示すように全年齢層ではコレラなどの細菌性下痢が多数を占めていますが、低年齢層ではロタウイルスが大多数を占めており、大きな問題となっています。
ロタウイルス用のワクチンには、世界的にはRotarix (GlaxoSmithKline) とRotaTeq (Merck) が広く使用されていますが、いずれも近年の流行株の遺伝子型には十分適応しておらず、インド用に開発されたRotavac も近年の新型非定型ウイルスには対応できていません。
なお、WHOの統計では、インドの5歳未満の下痢症死亡数は13万人余と記録されており、急性呼吸器感染症と共に若年齢死亡の大きな要因になっています。
インドでは、図に示すように全年齢層ではコレラなどの細菌性下痢が多数を占めていますが、低年齢層ではロタウイルスが大多数を占めており、大きな問題となっています。
ロタウイルス用のワクチンには、世界的にはRotarix (GlaxoSmithKline) とRotaTeq (Merck) が広く使用されていますが、いずれも近年の流行株の遺伝子型には十分適応しておらず、インド用に開発されたRotavac も近年の新型非定型ウイルスには対応できていません。
なお、WHOの統計では、インドの5歳未満の下痢症死亡数は13万人余と記録されており、急性呼吸器感染症と共に若年齢死亡の大きな要因になっています。

論文情報等
- 論文名:
- Complex reassortment events of unusual G9P{4} rotavirus strains in India between 2011 and 2013.
- 掲載誌:
- Infection, Genetics and Evolution
- 掲載号:
- vol., 54, 417-428 (2017)
- 著 者:
- Yen Hal Doan, Yoshiyuki Suzuki, Yoshiki Fujii, Kei Haga, Akira Fujimoto, Reiko Takai-Todaka, Yuichi Someya, Mukti K. Nayak, Anupam Mukherjee, Daisuke Imamura, Sumio Shinoda, Mamta Chawla-Sarkar and Kazuhiko Katayama
お問い合わせ先
研究に関するお問い合わせ
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
インド感染症共同研究センター
名誉教授・非常勤研究員 篠田 純男
TEL:086-462-5371
E-mail:sumio_shinoda“AT”hotmail.com
インド感染症共同研究センター
名誉教授・非常勤研究員 篠田 純男
TEL:086-462-5371
E-mail:sumio_shinoda“AT”hotmail.com
AMED感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)に関するお問い合わせ
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
戦略推進部感染症研究課
TEL:03-6870-2225
E-mail:jgrid“AT”amed.go.jp
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。
関連リンク
掲載日 平成29年10月27日
最終更新日 平成29年10月27日