プレスリリース 東北メディカル・メガバンク機構、日本人多層オミックス参照パネル(jMorp2018)公開したメタボローム解析情報の人数が1万人を突破

プレスリリース

国立大学法人 東北大学東北メディカル・メガバンク機構
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

発表のポイント

  • 日本人多層オミックス参照パネル*1(jMorp)のメタボローム解析対象者数を10,719名に拡張しました。平成29年度更新時の5,093名から2倍以上に拡張し初めて1万人を超えることで、参照パネルとしてより高い信頼性が得られました。
  • 今回新たにガスクロマトグラフ三連四重極型質量分析装置(GC-MS/MS)をメタボローム解析に活用することで、高精度に169種類の代謝物の測定に成功しました。これにより、更に多くの種類の代謝物の統計情報を提供できるようになりました。
  • また液体クロマトグラフ三連四重極型質量分析装置(LC-MS/MS)により、尿毒症関連代謝物の高感度定量に成功し、新たにjMorpに加えました。これら尿毒症物質は腸内環境や生活習慣に依存する代謝物で、様々な疾患に関わることが報告されている重要な分子です。これらの代謝物の基準値を新たに提供することで今後の医学・生物学研究に大きく貢献します。

概要

東北大学東北メディカル・メガバンク機構(機構長:山本雅之、以下ToMMo)は、日本人多層オミックス参照パネル(Japanese Multi Omics Reference Panel、以下 jMorp)のメタボローム解析人数を従来の2倍以上の10,719人に拡張しました。jMorp は、ToMMo が世界で初めて500人以上の血漿の網羅的メタボローム*2及びプロテオーム*3統合解析を完了し、2015年7月2日に解析結果を公開したデータベースで、2018年6月からは約3,500人分の全ゲノム解読情報に基づくアレル頻度情報を加え、生命科学の総合的な解析情報を収めています。

メタボローム解析は、ゲノム情報と病気などの表現型をつなぐ中間の情報として近年注目を集め始めていますが、2018年8月現在、いまだ500人以上のメタボローム解析結果を公開しているデータベースは世界中でjMorpしかありません。

このたびデータ規模の拡大に加えて、

  • GC-MS/MSの活用で、新たに150種類以上の代謝物の測定データを追加
  • LC-MS/MSの活用で、尿毒症関連代謝物の高感度精密定量データを追加

という新たな拡張を行い、また本年6月から同一のプラットフォームで公開を行っているゲノム情報との連携で、疾患バイオマーカーなどの発見に大きく寄与していくことが期待されます。

なお、本研究は文部科学省ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による東北メディカル・メガバンク計画、AMEDゲノム医療実現推進プラットフォーム事業の先端ゲノム研究開発 (GRIFIN)、文部科学省ならびに国立研究開発法人科学技術振興機構による革新的イノベーション創出プログラム(COI-STREAM)のCOI東北拠点の支援により行われました。

jMorp

jMorpバナーサイト名:Japanese Multi Omics Reference Panel(jMorp)
言語:英語
URL:https://jmorp.megabank.tohoku.ac.jp/

参考1:日本人多層オミックス参照パネルにおける公開内容

項目 人数 公開内容
基本情報 10,719 性別・年齢・BMIの分布
代謝物(NMR解析) 10,719 37代謝物の定量値と分布
代謝物(LC-MS/MS解析:標的測定) 2,424 4種類の尿毒症物質
代謝物(GC-MS/MS解析:標的測定) 1,028 169種類の代謝物

参考2:jMorp利用実績

2015年7月2日のサイト公開以来、2018年7月31日までに、92カ国から延べ10,864のセッション、74,464のページビューがありました。

参考3:オミックス解析の試料について

本研究は、宮城県で実施中のコホート調査(地域住民コホート調査と三世代コホート調査)の協力者からご提供頂いた生体試料をもとに行われました。2013年5月に開始した『地域住民コホート調査』は宮城県と岩手県にお住まいの20歳以上の方を対象とする8万4千人の方々がご参加された長期健康調査事業です。また同年7月より開始した『三世代コホート調査』(妊婦とその家族が対象)は7万3千人の方にご参加頂いています。両調査では、住民の方々に対して本事業・調査のご説明を行い、同意を頂いた方々から、血液・尿及び各種健康調査結果ならびに調査票情報等をご提供頂いています。『地域住民コホート調査』と『三世代コホート調査』を合わせて、15万7千人の住民の方々よりご協力を頂いています。

参考4:東北メディカル・メガバンク計画について

本計画は、東日本大震災を受け、被災地住民の健康不安の解消に貢献するとともに、個別化予防等の東北発の次世代医療を実現するため、ゲノム情報やオミックス情報を含むコホート研究等を実施し、被災地域の復興を推進する、国の復興事業として行われているものです。平成27年度より、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が本計画の研究支援担当機関の役割を果たしています。

被災地に医療関係人材を派遣して地域医療の復興に貢献するとともに、15万人規模の地域住民コホートと三世代コホートを形成し、そこで得られる生体試料、健康情報、診療情報等を収集してバイオバンクを構築します。さらに、ゲノム情報、オミックス情報、診療情報等を解析することで、個別化医療等の次世代医療に結びつく成果を創出することを目指しています。また、得られた生体試料や解析成果を同意の内容等に十分留意し、個人情報保護のための匿名化等の適切な措置を施した上で、外部に提供することや、コホート調査や解析研究を行うための多様な人材の育成も行っています。

本計画の事業の実施は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構とが連携して行っています。

用語解説

*1.日本人多層オミックス参照パネル:
大規模な人数のオミックス解析を行った結果を総合し、各代謝物やタンパク質の分布や頻度情報などをまとめると共に、数千人規模の全ゲノム解読に基づくSNVの頻度情報を盛り込み、今後のオミックス研究の参照情報となるもの。将来的には診療情報や生活習慣情報などと統合することにより、我が国における次世代医療を目指す研究に幅広く活用可能なデータベースとなることが期待される。なお、オミックス解析とは、生命を構成する様々な生体分子(ゲノム、RNA、タンパク質、代謝物等)を網羅的・包括的に解析する方法である。
*2.メタボローム解析:
オミックス解析の一つ。生体中の代謝物を網羅的に解析する方法。ToMMoでは、核磁気共鳴(NMR)法と質量分析(MS)法を用いている。核磁気共鳴(NMR)法とは、生体分子を含む様々な分子を強力な磁場の中において、分子中の各原子が持つ核磁気モーメントを計測することにより、分子の構造や量を測定する方法。定量性に優れているのが特徴である。質量分析(MS)法とは、物質を荷電粒子に変え、質量電荷比(m/z)にて分離されたスペクトルとして検出する方法。生体内、食品及び環境に含有される様々な物質の存在量を測定することができる。網羅性に優れているのが特徴である。
*3.プロテオーム解析:
オミックス解析の一つ。生体中のタンパク質を網羅的に解析する方法。ToMMoでは質量分析(MS)法を用いている。

お問い合わせ先

研究に関すること

東北大学東北メディカル・メガバンク機構
オミックス解析室
室長 小柴 生造(こしば せいぞう)
電話番号:022-274-6016

報道担当

東北大学東北メディカル・メガバンク機構
長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
ファクス:022-717-7923
Eメール:f-nagami"AT"med.tohoku.ac.jp

AMED事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
基盤研究事業部 バイオバンク課
電話番号:03-6870-2228
Eメール: tohoku-mm"AT"amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

掲載日 平成30年8月30日

最終更新日 平成30年8月30日