プレスリリース 直腸がんの局所再発に対する医師のためのWEB相談システム運用を開始―全国5施設の専門医が対応、手術による根治を目指す―
プレスリリース
国立研究開発法人 国立がん研究センター
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市)は、直腸がんが局所再発した患者さんに対して手術で根治できる可能性があるか、全国5施設の専門医が国内の医師からの問合せにWEBを用いて応じる、相談システム「CONNECT-LR(Consultation system to bring the Next Chance for the Treatment of Locally recurrent Rectal cancer:コネクトエルアール)」を開発し、2019年8月20日より運用を開始しました。
直腸がんの局所再発は完全切除による根治が期待できる疾患ですが、手術可否の判断や治療には、高度な専門性や技術が必要です。「CONNECT-LR」では、日本国内の医師であれば誰でも無料で、直腸がんの局所再発の診断や治療方針、手術可能な施設や受け入れに関する相談を行うことができます。医師が自身の施設にいながら専門医に簡単に相談できる環境を構築することで、より多くの対象となる患者さんが根治手術を受ける機会が増えることを目指しています。さらに今後、本システム運用の有用性が評価された場合、他領域の難治性がん・希少がんへの応用が期待されます。なお本システムの運用は、日本医療研究開発機構(AMED)平成31年度革新的がん医療実用化研究事業、難治性がんの標準的治療法の開発に関する臨床研究「直腸がん局所再発に対する標準治療確立のための研究開発(研究代表者:東病院大腸外科長 伊藤雅昭)」の支援を受け実施します。
研究の背景
直腸がんの根治手術(注1)後に初めて再発する部位の頻度は、骨盤内に再発する局所(切除した直腸の付近)が9.6%、肺7.5%、肝臓7.3%であり、局所再発の発生頻度が高いことが特徴です。直腸がんの局所再発は、手術による完全切除(がん組織の遺残のない切除)によって根治が期待できるため、日本及び欧米のガイドラインでは完全切除が可能な場合、手術による切除が推奨されています。しかし、直腸がんの局所再発の診断・治療は難しく、特に切除可否の判断は、担当医の経験や知識、技量によることが大きいため、切除不能と判断され根治の機会を得られないケースもあります。
また、高い専門性を持った医師は限られているため、診断・治療の判断に迷った際、直接専門医に相談するのは簡単ではありません。本研究では、直腸がんが局所再発したより多くの患者さんに対して完全切除による根治を目指せるよう、担当の医師が自身の居る場所にとらわれずに容易に相談できる環境を構築しました。
システムの特徴
「CONNECT-LR」は、株式会社ファインデックスの製品を活用し開発した、WEBを用いた相談システムであり、国内の医師は誰でも無料で利用可能です。システム登録申請後に本システムを通じて、利用者(医師)は専門医(コンサルタント)に対し、直腸がんの局所再発の診断・治療・手術可能施設に関する相談を行うことができます。各相談内容に対してコンサルタントは、原則1週間以内に返答します。本システム専用のメール送受信機能を利用するため、CTやMRI等の画像の送受信が、セキュアな環境で安全かつ容易に行うことができます。
専門医(コンサルタント)
- 国立がん研究センター東病院 大腸外科:伊藤 雅昭、塚田 祐一郎
- 兵庫医科大学病院 下部消化管外科:池田 正孝
- 山形県立中央病院 外科:須藤 剛
- 久留米大学病院 消化器病センター:藤田 文彦
- 関西医科大学附属病院 消化管外科:関本 貢嗣
今後の展望
直腸がんの局所再発は手術の難易度が高いため、切除可能な病変であってもかかりつけの病院では切除が困難である場合、専門医がいる病院へ紹介される場合が多くあります。本システムが国内で広く利用されることで、より多くの対象となる患者さんが根治手術を受けられることを目指しています。
また本システムの有用性が評価された場合、他領域の難治性がん・希少がんへの応用が期待されます。
研究費
日本医療研究開発機構 平成31年度(令和元年度) 革新的がん医療実用化研究事業
難治性がんの標準的治療法の開発に関する臨床研究
- 研究開発課題名:
- 直腸癌局所再発に対する標準治療確立のための研究開発
- 研究代表者:
- 国立がん研究センター東病院 大腸外科長 伊藤 雅昭
- 研究期間:
- 2019年4月1日~2022年3月31日
用語解説
- 注1 根治手術:
- 病気を完全に治すことを期待して行う手術のこと。根治手術では、がんをすべて取り除くことを目標としているため、腫瘍の切除に加え、がんの再発や転移が起こらないよう、がんが広がっている可能性がある臓器や組織なども含めて切除する場合があります。
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E-mail:cancer“AT”amed.go.jp
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掲載日 令和元年10月3日
最終更新日 令和元年10月3日