プレスリリース 卵子をかたち作る遺伝子群を同定―卵細胞質の大量作製が可能に―
プレスリリース
九州大学
理化学研究所
日本医療研究開発機構
九州大学大学院医学研究院の林克彦教授、浜崎伸彦助教(現ワシントン大学/HHMI特別研究員)、理化学研究所生命機能科学研究センターの北島智也チームリーダー、京極博久客員研究員の研究グループは、マウスの卵子をかたち作る遺伝子群を同定しました。また、この遺伝子群を胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞に導入することで、短期間のうちに大量の卵子様細胞を作製することに成功しました。
卵子の細胞質(卵細胞質)は個体発生能を司る特殊な機能をもち、不妊治療やクローン動物の作製にも用いられています。しかしながら、これまでにこの特殊な卵細胞質がどのようにつくられるかについては不明な点が多く残されていました。本研究では卵子ができあがる過程を丹念に調べた結果、卵細胞質の形成に必要な8つの遺伝子(転写因子)を突き止めました。驚くべきことに、その8つの遺伝子をES細胞やiPS細胞に発現させると、急激に細胞質が成長し、受精能をもった卵子様細胞に変化しました。また、これらの遺伝子の数を最小4つに減らしても同様の作用があることがわかりました。この方法を用いると、生物学・医学的に貴重な卵細胞質をこれまでより短期間で大量に作製することができます。この成果により、個体の発生に必要な卵細胞質の形成機構の解明や人工的に作られた卵細胞質を用いた不妊治療技術の開発が期待されます。
本研究成果は2020年12月16日(水)16時(英国標準時間)に国際学術雑誌「Nature」に掲載されます。なお、本研究は文部科学省科研費、日本医療研究開発機構(AMED)、武田科学振興財団、The Open Philanthropy Projectの支援を受けました。
論文情報
- 掲載誌
- Nature
- 論文名
- Reconstitution of the oocyte transcriptional network with transcription factors
- DOI
- 10.1038/s41586-020-3027-9
お問い合わせ
研究に関するお問い合わせ
九州大学大学院医学研究院ヒトゲノム幹細胞医学分野 林克彦(はやしかつひこ)
TEL:092-642-4844 FAX:092-642-4846
E-mail:hayashik“AT”hgs.med.kyushu-u.ac.jp
報道に関するお問い合わせ
九州大学 広報室
TEL:092-802-2130 FAX:092-802-2139
E-mail:koho“AT”jimu.kyushu-u.ac.jp
理化学研究所 広報室 報道担当
E-mail:ex-press“AT”riken.jp
AMEDの事業に関すること
日本医療研究開発機構(AMED)
創薬事業部 医薬品研究開発課 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)
TEL:03-6870-2219
E-mail:20-ddlsg-16“AT”amed.go.jp
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。
関連リンク
掲載日 令和2年12月17日
最終更新日 令和2年12月17日