トピックス 2026年度 HFSP中曽根賞受賞者が発表されました

トピックス

国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO)は、2026年度のHFSP中曽根賞がエリン・シューマン博士に授与されると発表しました。
受賞理由は「神経シナプスの機能と可塑性、mRNAによる機能発現、そして記憶形成過程における変化に関する画期的な成果」に対してです。
シューマン博士は現在、ドイツ・フランクフルトにあるマックス・プランク脳研究所の所長であり、ゲーテ大学の生物学協力教授、及びオランダのラドバウド大学のドンダース神経科学センターおよび理学部において、「シナプス機能と可塑性」の教授も務めています。
シューマン博士の画期的な研究は、ニューロン間の情報伝達、可塑性、そして記憶の保持に不可欠なタンパク質が、ニューロン間の接合部であるシナプスで局所的に産生されることを明らかにしました。この知見は、すべてのタンパク質は細胞体で産生され、その後シナプスへと輸送され、そこで機能するという従来の考えを覆すものです。
シューマン博士の研究は、神経生物学以外の分野にも影響を与えています。タンパク質合成を研究するには、細胞内で新しく合成されたタンパク質を同定し、可視化する必要があります。シューマン博士と彼女の同僚は、科学者があらゆる細胞、組織、または器官で新しく合成されたタンパク質をタグ付け、識別、可視化できる手法を発明しました。彼女の先進性により、正常状態および変化した状態における細胞の変化を促進するタンパク質を同定するための新しいツールが開発され、生命科学のあらゆる分野で利用されています。
「エリン・シューマン博士の発見は、ニューロン全体ではなく個々のシナプスに焦点が当てられるようになった神経科学分野全体に影響を与えており、HFSPOは彼女を称えることを大変光栄に思います。これが中曽根賞の本質です。文字通り、一つの学問分野全体のフロンティアを切り拓いた先駆者に贈られるのです。」とパべル・カバトHFSPO事務局長が賛辞を述べています。
エリン・シューマン博士の評価や引用の詳細については、HFSPウェブサイトに掲載されている2026年のHFSP中曽根賞の解説を参照してください。

HFSP 2026年中曽根賞 解説ページ

HFSP 及びHFSP中曽根賞について

国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO)は、生命科学のフロンティアにおける国際的・学際的な共同研究と若手研究者が学際的研究能力を身につけるトレーニングを推進するために1989年に設立されました。その目的は、生命科学に焦点を当てた最先端の学際的研究を振興するために、大陸間に跨がる研究者の共同研究や若手研究者が自身の専門と異なる分野の研究機関に長期間滞在してトレーニングを受けることを推し進めることです。HFSPOは、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、イタリア、日本、大韓民国、ニュージーランド、ノルウェー、南アフリカ、シンガポール、スイス、英国、米国の政府や研究支援機関、ならびに欧州委員会からの財政支援を受けて運営されています。このプログラムでは、これまでに世界中の7,600人以上の科学者に対して共同研究助成及びポスドクのフェローシップを授与しています。

HFSP中曽根賞は、生命科学の最先端の分野で重要なブレークスルーをもたらした科学者を顕彰するために2010年に創設されました。プログラム開始以来、31名のHFSP研究グラント受賞者と4名のHFSP中曽根賞受賞者がノーベル賞を受賞しています。ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの創設を提唱した日本の中曽根康弘元首相の先見の明を私たちに思い起こさせます。
これまで、Karl Deisseroth (2010) 、Michael Elowitz (2011) 、Gina Turrigiano (2012) 、Stephen Quake (2013) 、Uri Alon (2014) 、James Collins (2015) 、Jennifer Doudna 、 Emmanuelle Charpentier (2016) 、David Julius (2017) 、SvantePääbo (2018) 、Michael Hall (2019) 、Angelika Amon (2020) 、Anthony Hyman、Clifford Brangwynne (2021) 、Aviv Regev、Franz-Ulrich Hartl 、Arthur L.Horwich (2022) 、Rotem Sorek (2023) 、Maiken Nedergaard(2024)、Jacob (Yaqub) Hanna (2025)の各氏が受賞されています。

(注)本記事はHFSPOの記事をもとに構成したものです。
HFSP Nakasone Award

本件に関するお問い合わせ先

日本医療研究開発機構(AMED)
国際戦略推進部 国際企画課
Tel:03-6870-2216
E-mail:amed-hfsp"AT"amed.go.jp ※E-mailは上記アドレス"AT"の部分を@に変えてください。

最終更新日 令和7年7月25日