統合医療に対する研究事業の方向性
「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業は、漢方、鍼灸等の「統合医療」に関する研究を行い、国民および医療従事者の健康保持や疾病治療・予防の選択肢を増やし、医療の質の向上をはかるための委託事業です。
当該事業では、「統合医療」については多種多様であり、科学的根拠が乏しいものが含まれているとの指摘もあることから、これまで厚生労働科学研究費等において、実態の把握と新たな知見の創出のための研究を進めてきました。これらの知見を踏まえつつ、平成24年3月から「統合医療」のあり方に関する検討会が開催され、平成25年2月には「これまでの議論の整理」がとりまとめられました。この中で、統合医療の各療法については、科学的知見を収集するとともに、収集された知見を基にして必要な情報を広く発信し、患者・国民及び医師が療法を適切に選択できるようにすることが重要であるとされました。そこで、厚生労働省では統合医療に関する研究の実施や、統合医療の有効性や安全性に関する学術論文等の情報についてのインターネット等を介した情報発信に取り組んでいます。
そのため、当該事業の一部として国内外の「統合医療」及び近代西洋医学と組み合わせる各種の療法に関する学術論文を収集するとともに、国内の代表的な拠点において、医師をはじめとする他職種が関わることによって行われる臨床研究を支援し、その成果を患者・国民及び医師などに還元するといった実践面のアプローチを併せて進めることによって、「統合医療」に関する科学的知見の集積を図るための研究を行うものです。
採択課題(15件)
1-1.「統合医療」に関する科学的知見を創出するためのフィージビリティスタディ
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
アロマ芳香浴の有効性・作用機序・安全性の検討―ストレス関連疾患の治療・予防からのアプローチ― |
鹿児島大学 |
浅川 明弘 |
准教授 |
抗癌剤治療による末梢神経障害に対する鍼治療の有効性に関する検証 |
大阪大学 |
大野 智 |
准教授 |
月経前症候群(PMS)に対するエクオールの効果 |
近畿大学 |
武田 卓 |
教授 |
1-2.漢方に関する科学的知見を創出するための研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
薬物乱用頭痛における抑肝散の有効性の検討 |
埼玉医科大学 |
荒木 信夫 |
教授 |
大腸憩室炎に対する大黄牡丹皮湯の有用性に関する二重盲検ランダム化比較試験 |
金沢大学 |
小川 恵子 |
臨床教授 |
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)に対する漢方製剤・桂枝加芍薬湯の治療効果の検証研究:多施設二重盲検無作為対照試験 |
横浜市立大学 |
中島 淳 |
主任教授 |
1-3.鍼灸に関する科学的知見を創出するための研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
慢性閉塞性肺疾患の進行予防における鍼治療の有効性の検討 |
田附興風会医学研究所北野病院 |
鈴木 雅雄 |
研究主幹 |
1-4.漢方及び鍼灸を除く各種療法に関する科学的知見を創出するための研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
笑い療法が生活習慣病発症・重症化予防に及ぼす影響についての前向きコホート・介入研究 |
福島県立医科大学 |
大平 哲也 |
教授 |
統合医療としてのヨガの有用性と安全性に関する研究 |
九州大学 |
岡 孝和 |
准教授 |
超高周波音響療法による認知行動療法の増強効果 |
国立精神・神経医療センター |
堀越 勝 |
認知行動療法センター
センター長 |
2-1.「統合医療」に関する科学的知見を創出するための安全性・有効性等の評価手法に関する研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
漢方薬および生薬有効成分、ならびに食物含有有効成分の安全性・有効性を科学的、客観的に評価する手法の開発 |
国立がん研究センター |
上園 保仁 |
分野長 |
甘草の副作用、偽アルドステロン症発症予防のためのバイオマーカーの開発 |
名古屋市立大学 |
牧野 利明 |
教授 |
3-1.「統合医療」についての、患者・国民及び医師の適切な選択に資するような情報発信のあり方についての研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
統合医療についての患者・国民及び医師の適切な選択に資するような情報発信のあり方に関する研究 |
金沢医科大学 |
元雄 良治 |
教授 |
3-2.「統合医療」の各種療法について、国内外での利用実態や健康被害の状況の実態把握などを通じた安全性・有効性等に関する研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
国内外における統合医療の利用提供実態および健康被害の調査と社会的決定要因分析による日本型統合医療の提案 |
日本薬科大学 |
新井 一郎 |
教授 |
3-3.「統合医療」の国際標準化などの基盤整備に関する研究
研究開発課題名 |
機関名 |
研究開発代表者名 |
職名 |
ISO/TC249における国際規格策定に資する科学的研究と調査および統合医療の一翼としての漢方・鍼灸の基盤研究 |
千葉大学 |
並木 隆雄 |
准教授 |