プレスリリース 「エクソソーム中のマイクロRNAを介したがん転移機序の解明」―エクソソームを標的としたがん転移阻害への期待―

平成28年12月8日プレスリリース

国立大学法人東京医科歯科大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)

発表のポイント

  • 高い転移性の口腔扁平上皮がん細胞ら分泌されるエクソソームが、転移性の低いがん細胞の増殖、移動・浸潤を亢進させることを明らかにしました。
  • エクソソーム中のマイクロRNA(miR-1246)が、がん抑制遺伝子として知られているDENND2Dを制御することで、がん細胞の移動・浸潤能力を上昇させることを見出しました。
  • 今後、エクソソームおよびエクソソーム中マイクロRNAを標的としたがん治療への応用が期待されます。

東京医科歯科大学・難治疾患研究所・分子細胞遺伝分野の村松智輝助教、稲澤譲治教授らの研究グループは、口腔扁平上皮がん細胞株からin vivo selectionにより樹立した高転移性亜株のエクソソーム中に内包されるマイクロRNA (miRNA)が、がん細胞の移動・浸潤に寄与していることを同定しました。この研究は、文部科学省科学研究費補助金(25250019, 15K18401, 26890012)、文部科学省新学術領域研究(15H05908)「がんシステムの新次元俯瞰と攻略」、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」(P-DIRECT)ならびに「次世代がん医療創生研究事業」(P-CREATE)などの支援のもと遂行され、その研究成果は、国際科学雑誌 Scientific Reports (サイエンティフィック リポーツ)に、2016年12月8日午前10時(英国時間)にオンライン版で発表されます。

研究の背景

がん死の多くは、がん転移による多臓器不全に起因します。がん転移は、複雑かつ多段階のステップによって成立する事象であり、その分子メカニズムは徐々に明らかになりつつあります。近年、細胞から分泌される小胞(エクソソーム)が、がん転移先の微小環境(ニッチ)形成やがん細胞自身の教育などを行うことにより、がん転移において重要な役割を果たしていることが報告されてきました。エクソソームの中には、RNAやタンパク質が豊富に存在しており、それらはがん細胞同士およびがん細胞と周辺細胞のコミュニケーションを行う分子として同定されています(図1)。特に、エクソソーム中にはマイクロRNA(miRNA)と呼ばれるノンコーディングRNAが含まれており、その機能にも注目が集まっています。一般的に、miRNAとは、20~25塩基程度のRNAであり、複数の標的遺伝子を持ち、標的遺伝子の3’UTR(3’untranslated region)に結合し、翻訳または転写を抑制することが知られています。
説明図・1枚目(説明は図の中に記載)
本研究では、口腔扁平上皮がん細胞株(HOC313)から樹立した高転移性亜株(HOC313-LM)から分泌されるエクソソームを回収し、エクソソームおよび内包されているmiRNAの働きを解析し、エクソソームを介したがん転移のメカニズムを明らかにすることを目標としました。

研究成果の概要

HOC313-LM(高転移性亜株)の培養液中からエクソソームをカラムクロマトグラフィーを用いて回収し、各種エクソソームマーカー遺伝子(CD9, CD63, CD81)の発現および免疫電子顕微鏡においてエクソソームの存在を確認しました(図1)。エクソソームの機能を解析するため、HOC313-P(親株)にエクソソームを処理し、細胞増殖能、移動・浸潤能アッセイを行いました。その結果、エクソソームを処理することにより、上記機能の亢進を認めました。さらに、研究グループはエクソソームに内包されるmiRNAの解析を行いました。HOC313-PおよびHOC313-LMの全RNAとエクソソームに内包されたRNAを用いてmiRNAの網羅的発現アレイ解析を施行しました。この発現アレイデータを用いて最終的にmiR-342-3pmiR-1246をがん促進性miRNAの候補として抽出しました。これらmiRNAをそれぞれがん細胞に導入すると、細胞の移動・浸潤能が亢進することを見出しました。さらに、miR-1246を過剰発現させたサンプルの遺伝子発現プロファイルがHOC313-LMに類似していることがわかったので、miR-1246の標的探索を行いました。標的予測データベースの結果を基に、miR-1246の直接の標的としてDENND2Dを同定しました。DENND2Dを発現抑制することにより、細胞の移動・浸潤が亢進することを明らかにしました(図2)。
説明図・2枚目(説明は図の中に記載)

研究成果の意義

本研究では、高転移性亜株由来のエクソソームが、がん細胞同士の細胞間コミニューケーションを担い、がん悪性化に寄与していることならびにエクソソームに内包されたmiR-1246が、DENND2Dの発現抑制を介してがん細胞の移動・浸潤を亢進させることを明らかにしました。エクソソームの分泌機序ならびに内包される分子の全容解明は、重要な課題であり、今回の成果により、核酸抗がん薬開発の必要性を示すことができたと考えています。

お問い合わせ先

研究に関すること

東京医科歯科大学大学難治疾患研究所
分子細胞遺伝分野
氏名 稲澤 譲治(イナザワ ジョウジ)
氏名 村松 智輝(ムラマツ トモキ)
TEL:03-5803-5820 FAX:03-5803- 0244
E-mail:johinaz.cgen“AT”mri.tmd.ac.jp

AMED事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
戦略推進部 がん研究課
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
TEL: 03-6870-2221 FAX: 03-6870-2244
E-mail:cancer“AT”amed.go.jp

報道に関すること

東京医科歯科大学 広報部広報課
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TEL:03-5803-5833 FAX:03-5803-0272
E-mail:kouhou.adm“AT”tmd.ac.jp

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最終更新日 平成28年12月8日