プレスリリース AMEDによる未診断疾患イニシアチブ<IRUD>の「仕組み作り」を国際誌で報告、更なる国際連携の出発点に―診断がつかないまま悩んでいる難病等の患者さんに光を―

プレスリリース

ポイント

  • 1972年以降国の難病対策が成果をあげる一方、診断さえつかない患者さんは病名も治療法も見つからず悩んでいます。
  • AMEDは難病克服プロジェクトの一環として、未診断疾患イニシアチブ<IRUD(アイラッド)>を主導し、より多くの患者さんの診断確定を目指す仕組み作りを推進しています。
  • このたび、IRUDの意義や取り組みをまとめた方針書が査読付国際専門誌に掲載されることになりました。
  • AMEDは、この方針書の精神に共鳴する国内外の個別研究が結び付き、新たな診断・治療法の開発につながることを期待しています。
  • AMEDは、疾病の希少性に由来する難病分野のさまざまな困難を克服すべく、研究者のみでは取り組みづらい環境整備にも引き続き主体的に貢献します。

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED、理事長 末松 誠)は、通常の医療で診断がつかない患者さんを対象とした「未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases: IRUD[アイラッド])」を、設立初年度である2015年から推進しています。このたび、AMED職員が執筆したこのIRUDの方針書が、人類遺伝学分野の国際専門誌に査読を経て受理され、2017年7月5日に掲載されました。

我が国では、1972年に難病対策要綱が制定されて以降、医療費助成だけでなく50年近くにわたる難病研究等が大きな成果をあげてきました。しかし、これまで未報告の新しい病気や、報告はされていても患者数が少なく通常の医療の中で診断が困難な病気を持つ患者さんは、これらの支援を受けることができず、病名や治療法も見つからないまま様々な症状に悩んでいます。

そこでAMEDは、難病克服プロジェクトの一環として難治性疾患実用化研究事業でIRUDを開始し、「診断体制の全国配置」「網羅的遺伝学的解析を含めた革新的検査の活用」「海外とも共有可能なデータベースの確立」を3本柱として研究を進めてきました(別紙1)。診断がつかず悩んでいる患者さんは、かかりつけ医を通じて拠点病院への紹介を受け、受診し、「複数の臓器で症状がある」「血縁者、兄弟に同じような病状を認める」など一定条件を満たすと判断された場合にIRUDの対象となり、総合的に診断が検討されます(別紙2)。

今回掲載されるIRUDの方針書は、個別研究の成果ではなく、難病研究の歴史など我が国の強みを踏まえた独自の「仕組み作り」について報告しています。近年の遺伝子解析技術の革新、海外の同種の診断プロジェクト例(アメリカ、カナダ、イギリスなど)、非常に患者数が少ない病気における情報の国際共有の重要性、国際的なフォーマット標準化の動きなど、IRUDを取り巻く環境を包括的に記述しつつ、それを踏まえたIRUDの趣旨と方向性、そしてIRUDで特に重視したいマイクロアトリビューション(用語解説1参照)にも言及し、「研究のための研究」にとどまらせない社会還元型の取り組みであることを強調しています。

IRUDの開始から2年近くが経過し、既に世界で初めての病気の発見や、様々な患者さんの診断確定など、多くの成果があがっています。さらに、AMEDは2017年度からIRUDの成果を発展させる「IRUD Beyond」を本格的に開始しました(別紙1)。医療分野の基礎研究から実用化まで一貫して推進するAMEDならではの立場を活かし、IRUDでの診断成功率の向上、データや成果等の国際共有の推進とともに、原因と判明した遺伝子等を標的とする遺伝子治療の開発など、様々な難病の新たな治療法の開発を加速します。この展開が見据える先は難病にとどまらず、ひいては疾患領域を越えて、生活習慣病などの「Common Disease(用語解説2参照)」の医療向上にもつながる可能性を秘めています。

研究開発成果の最大化そして医療の向上のためには、研究者の努力だけでなく、AMED職員の貢献による環境整備、そして効果的な情報発信とコミュニケーションも同様に重要です。今回の報告は、国内外の専門家へ呼びかけることを念頭に、国際専門誌の査読を経ることで学術的にも一定の質を担保することを狙ったものです。医療を支えるすべての方々と一体感を持って皆が活躍できる社会をつくりあげることが大切であるとAMEDは考えています。

IRUDはAMED難治性疾患実用化研究事業の研究開発課題「未診断疾患に対する診断プログラムの開発に関する研究」を中心として、国立精神・神経医療研究センター(研究開発代表者・成人拠点病院とりまとめ:水澤英洋先生)、国立成育医療研究センター(小児拠点病院とりまとめ:松原洋一先生)、慶應義塾大学(データネットワークとりまとめ:小崎健次郎先生)、横浜市立大学(解析コンソーシアムとりまとめ:松本直通先生)など全国の研究機関(お問い合わせ先欄「IRUD研究班ポータルサイト」参照)によって推進されています。

IRUDの方針書は、2017年7月5日発行の「European Journal of Human Genetics」誌に「Policy」論文として掲載されました。

論文情報

タイトル:
著者:
足立剛也、川村和男、古澤嘉彦、西崎祐史、今西典昭、梅原千慶、泉和生、末松誠(日本医療研究開発機構 ※執筆当時)
DOI:
10.1038/ejhg.2017.106

別紙

用語解説

1. AMEDの進める「マイクロアトリビューション」:
かかりつけ医や大学病院等の医師、看護師、研究者、遺伝カウンセラー等の診療スタッフや研究支援者、そして患者さん、患者さんのご家族等全ての関係者のご協力を適切に認め合う、IRUDが重視する考え方(発展途上の概念であり、学術的な定義や広く一致した認識には至っていないことに注意)。
2. 「Common Disease(コモンディジーズ)」:
希少疾患(Rare Disease)の対義語。例えば、生活習慣病や感染症、アレルギー疾患等比較的多くの患者さんが罹患する疾患の総称として用いられる。

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日本医療研究開発機構 戦略推進部難病研究課(IRUD担当)
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
Tel:03-6870-2223 Fax:03-6870-2243
E-mail:irud“AT”amed.go.jp

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〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
Tel:03-6870-2245
E-mail:contact“AT”amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

掲載日 平成29年7月6日

最終更新日 平成29年7月6日