プレスリリース 先天性巨大色素性母斑に対する新たな臨床研究を開始―2016年実施の手法を改良し、「先進医療B」承認を目指す―

平成30年2月20日プレスリリース

関西医科大学
日本医療研究開発機構

本件のポイント

  • 母斑組織の高圧不活化処理を培養皮膚作成企業で実施
  • 多施設での実施可能性を検討、模索
  • 移植手術日程に時間的猶予、良質な皮膚再生を目指す

学校法人 関西医科大学(大阪府枚方市 理事長・山下敏夫、学長・友田幸一)形成外科学講座森本尚樹准教授らの研究チームは、2016年に世界で初めて実施した先天性巨大色素性母斑に対する臨床研究を発展させ、新たな加圧処理体制を採用した臨床研究を今月から、開始します。

前回の臨床研究では加圧処理機器を手術室に持ち込んで実施していたため、当該機器を用意できない病院では治療を実施できない、というデメリットがありました。そこで今回、森本准教授らの研究チームは場所に依存しない術式を模索しました。株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(愛知県蒲郡市 代表取締役社長執行役員・畠賢一郎氏)本社(愛知県蒲郡市)に加圧処理機器を設置し、患者さんから採取した母斑組織と健常な皮膚組織を輸送。母斑組織の加圧処理と健常な皮膚組織の培養を一括で実施する体制を構築しました。同事業所で処理された組織は返送され、再び患者さんに移植されます。この手法により、手術設備が整った病院であれば先天性巨大色素性母斑の治療を行うことが可能になると予想されます。

同時に、従来の手法より組織採取~加圧処理~移植手術までの手術日程を柔軟に組むことが可能になることから、組織の回復が進むことで移植皮膚の生着率が向上すると期待しています。なお、今回の臨床研究は5例を予定しており、その結果をもって厚生労働省が定める「先進医療B」の承認を目指します。

本研究の背景、これまでの流れ

本研究は本学形成外科学講座森本尚樹准教授をリーダーとし、国立循環器病研究センター研究所、京都大学、大阪工業大学が共同で取り組んでいるものです。また、平成27年4月1日に設立された日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」から支援を受けています(研究開発課題名「先天性巨大色素性母斑を母地とした悪性黒色腫に対する予防的低侵襲治療方法の開発」)。

なお本研究の端緒となった先行研究は、平成26年11月25日に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づく第二種分野臨床研究として、平成28年2月から症例の登録を開始し、予定していた症例数の登録が完了しました。

今回の臨床研究の流れ

  1. 母斑と、1.5cm×1cm程度の皮膚を(母斑のない部位から)採取、術前検査を実施。
  2. 母斑を切除し、人工皮膚を貼付します。切除した母斑は株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングへ輸送。同事業所にて母斑組織の加圧処理を行い、健常な皮膚は培養(皮膚の表皮細胞を増やす)し、自家培養表皮を作ります。
  3. 「2」の手術から2週間後(2~5週間後)に、加圧処理済み母斑組織と健常な皮膚から培養した自家培養表皮を移植します。

本研究における高圧処理(母斑組織の不活化)

共同研究者の大阪工業大学藤里教授、国立循環器病研究センター研究所山岡部長らは、10,000気圧で組織から細胞を取り除く技術を開発しました。元々、高圧処理は古くから食品加工の分野で研究されてきた安全な処理技術です。例えば卵を7,000気圧で10分処理すると、圧力でタンパク質が変性するためゆで卵の様に固まります。これは、マリアナ海溝の7倍も深い海に相当する高い圧力です。一方、水はほんの少ししか縮まないため、水(生理食塩水)に浸して加圧すれば卵は割れません。また、6,000気圧を超えると細菌やウイルスなども死滅するため、高圧処理は殺菌法としても期待されている手法です。

今回の研究では、母斑組織を比較的低い2,000気圧で10分間処理します。これにより、皮膚の主要成分であるコラーゲンなどを損傷することなく自然のまま残し、母斑細胞などの細胞を完全に死滅させることに成功しました。過去の実験で、高圧処理した母斑からは母斑が再発しないこと、高圧処理済みの母斑を患者さんに移植するとうまく適合し、培養表皮を組み合わせることで患者さん自身の皮膚を再生できることを確認しています。

自家培養表皮について

自家培養表皮(製品名:ジェイス、(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)は患者さんの皮膚組織を採取し、表皮細胞を培養してシート状としたもの。患者さん自身の表皮がほぼ再生されています。ジェイスは、本邦初の細胞使用製品として2007年10月に国から承認を受け、重篤な広範囲熱傷のみに使用可能(保険適用)となっています。体表全体を覆うくらいの大きさの培養表皮が作成できますが、真皮がない部分には生着しません。

今回の臨床研究では、既存の標準的な治療では対応しきれない先天性巨大色素性母斑があり、母斑細胞が真皮の深い部分まで存在する方を対象にします。また、治療では通常廃棄される母斑組織を再利用しますので、自家皮膚完全リサイクル治療法と呼んでいます。

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最終更新日 平成30年2月20日