成果情報 カルタヘナ法の「第一種使用規程承認申請書」及び「生物多様性影響評価書」に関する作成ガイダンスの策定

成果情報

国立成育医療研究センター
日本医療研究開発機構(AMED)

国立成育医療研究センター成育遺伝研究部部長 小野寺雅史らの研究班は、「医薬品等規制調和・評価研究事業 遺伝子治療におけるカルタヘナ法の第一種使用規程の考え方に関する研究」において、「第一種使用規程承認申請書(アデノウイルス及びヘルペスウイルスベクター用、アデノ随伴ウイルスベクター用)」及び「生物多様性影響評価書」に対する作成ガイダンスを策定し、国立成育医療研究センター成育遺伝研究部ホームページで公開しました。

研究の背景

近年の目覚ましい分子生物学の進歩により、様々な遺伝子組換えウイルスを利用した遺伝子治療用製品が開発され、臨床の場でその有効性と安全性が実証されつつあります。一方、我が国ではこれら遺伝子組換えウイルスは、カルタヘナ議定書に基づき制定された「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」で定義する「遺伝子組換え生物等」に該当するため、当該遺伝子組換えウイルスベクターを使用した遺伝子治療臨床試験は環境中への拡散を防止せずに行う「第一種使用等」となり、試験開始前に第一種使用規程を定め、生物多様性影響評価書を添付し、所管大臣よりその使用に関する承認を得なければなりません。

さて、遺伝子組換えウイルスの第一種使用等での最大の関心事項は、使用したウイルスの患者体外への排出であり、また、排出されたウイルスの第三者及び環境中生物への感染による生物多様性への影響評価であります。これに対して当初は、一定期間、患者を個室に隔離したり、排泄物中の排出ウイルスに対し厳重な不活化処理を義務付けていましたが、この規程は治療を受ける患者にとって精神的、身体的負担が大きいものがあり、また、医療従事者にとってきわめても煩雑でありました。さらに、ウイルスの排出シグナルが得られたとしても必ずしも感染性を有するものではなく、生物多様性確保の観点から合理的な管理体制を定めることは喫緊の課題であり、各ウイルスベクターの排出レベルと排出されたウイルスの感染能の有無を検証し、これまで得られた知見と合わせて遺伝子組換えウイルスの影響評価ガイダンスを作成することは必要と考えられます。

本研究では、これらのことに鑑み、現在、主に使用されている複数の遺伝子治療用ウイルスベクターを取り上げ、これらベクターの遺伝子治療用製品に関する第一種使用等の取扱いの記載内容に関するガイダンスを作成いたしました。なお、同時に海外でのこれら遺伝子組換えウイルスの排出に関する規制を調査し、海外規制当局や欧米の遺伝子組換えウイルスベクター開発者と情報交換を行うことで遺伝子組換え生物の環境影響評価に対する欧米との違いを資料スライドにまとめましたので、本成果物と合わせ国際共同治験等の実施に係るコンセンサスの構築に役立つことを祈念します。

研究の概要と成果

本研究では、現在、主にin vivo遺伝子治療において遺伝子治療用製品として使用されているアデノウイルス(Ad)、ヘルペスウイルス(HSV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来の遺伝子組換えウイルスベクターを取り上げ、これらベクターに関する「第一種使用規程承認申請書」とそれに添付する「生物多様性影響評価書」の作成ガイダンスを、製薬関連企業ならびに医薬品医療機器総合機構(PMDA)の関係者と複数回にわたる話し合いの下に策定し、今般、国立成育医療研究センター成育遺伝研究部HP内で公開致しました(「遺伝子細胞治療に関する規制及び学会等での資料/ AMED・遺伝子治療におけるカルタヘナ法の第一種使用規程の考え方に関する研究・成果物(2019.10.21)」)。

本ガイダンスが、我が国の遺伝子治療用製品の開発促進において大いに役立つことを期待しております。

特記事項

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)医薬品等規制調和・評価研究事業「遺伝子治療におけるカルタヘナ法の第一種使用規程の考え方に関する研究」H28-H30(研究開発代表者:国立成育医療研究センター成育遺伝研究部部長 小野寺雅史)の一環で行われました。

お問い合わせ

本研究成果に関するお問い合わせ

国立成育医療研究センター成育遺伝研究部 部長
小野寺 雅史
E-mail:onodera-m”AT”ncchd.go.jp

事業に関するお問い合わせ

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
創薬戦略部 医薬品等規制科学課
Tel:03-6870-2235
E-mail:kiseikagaku”AT”amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

掲載日 令和元年11月27日

最終更新日 令和元年11月27日