AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:成果報告① IRUD(未診断疾患イニシアチブ)(2)

(抄録)

AMEDシンポジウム2日目(5月30日)成果報告① IRUD(未診断疾患イニシアチブ)

水澤 英洋氏(国立精神・神経医療研究センター 理事長)

「非常にまれで診断が付かない」患者に対応

(説明は本文中に記載) 図1 IRUDの対象となる疾患
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます

難病に対しては、医療費助成や研究推進は以前から行われてきましたが、「非常にまれで診断が付かない」患者に対しての対応が不十分ではないかということで始まったのが、IRUDです。

診断のつけやすさを横軸、希少さを縦軸としてグラフにしますと、非常にまれで診断がついていない疾患がIRUDの対象となります。

IRUDは、これら希少未診断疾患の患者に対して、体系的に診断をする医療システム、患者さんの情報を収集・蓄積して活用するようなシステムを確立することが与えられた課題です。「オールジャパン診断連携」「網羅的遺伝子的解析」「ゲノム・臨床情報共有ネットワーク」という3つの柱があります。

診断の流れ―34拠点病院、386協力病院のオールジャパン体制

(説明は本文中に記載) 図2 IRUD体制整備状況
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます

診断困難な患者さんは通常、かかりつけ医院を受診します。かかりつけ医で診断がつけられない病気の場合は、地域の拠点病院を受診することになります。拠点病院では、医師だけではなくコーディネーター等さまざまな専門家からなる診断委員会を組織し、その患者さんの主治医や地域の医師会の医師にも加わっていただきます。拠点病院の診断委員会が検討してIRUDに適した症例と判断した場合、SNP解析、マイクロアレイ解析のほか、他の保険収載されている一般的検査を行います。ホールエクソーム解析、ホールゲノム解析等の遺伝子解析は、必要に応じて行います。

解析センターが解析を行い、結果は診断委員会に戻り、かかりつけ医院や患者に6ヶ月以内にフィードバックされます。同時に、診断データはデータセンターに、リソースはリソースセンターに蓄積され、後にみんなで活用できるようにデータシェアリングされます。 米国にも類似の研究事業があります。米国の場合は患者さんに約2週間入院してもらい、検査を全て研究費で行いますが、日本では医療保険制度を活用し、外来診療ベースでできることをまずやり、診断がつかない部分については紹介基準を設け、難病研究の研究費を使って行う仕組みにしています。

2016年と2017年に行った2回の調査で、3万1653人の潜在的な患者、そのうち小児科領域では3521人が、IRUDに参加したいと考えていることが分かりました。

2017年5月現在で、拠点病院は34、協力病院の数は386となり、オールジャパンの体制になりつつあります。

セントラルIRBで一括倫理審査

(説明は本文中に記載)
図3 中央倫理審査委員会[CIRB]
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます
審査
研究を進める上で重要なのが倫理審査です。病院の倫理審査委員会による審査に通らなければ何も出来ないのですが、非常に時間がかかります。倫理審査を通ったのが年度末に近い時期だったために残りの数カ月で研究を進めなければいけないといった状況がしばしばあります。一方、諸外国では倫理審査を一括で行うことでこの問題をクリアするようになってきており、日本でもゲノム研究における倫理審査について多施設共同研究の場合は一つの倫理審査委員会による一括審査が認められました。そこでIRUDでも中央倫理審査、あるいは治験審査委員会、セントラルIRBを推進していこうということになり、東北大学病院臨床研究倫理委員会の高野忠夫氏を中心に、セントラルIRB(中央倫理・治験審査委員会)の推進が決まりました。これによって、各施設での審査が不要となり、一気に倫理審査が進められそうです。

【前ページ】はじめに【次ページ】これまでの成果

「AMEDシンポジウム開催レポート」トップページに戻る

最終更新日 平成29年10月17日