AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:成果報告① IRUD(未診断疾患イニシアチブ)(3)

(抄録)

AMEDシンポジウム2日目(5月30日)成果報告① IRUD(未診断疾患イニシアチブ)

水澤 英洋氏(国立精神・神経医療研究センター 理事長)

これまでの成果

(説明は本文中に記載)
図4 疾患関連遺伝子候補の探索
常染色体優先遺伝モデル
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます

現在までの成果をご紹介したいと思います。この制度を利用した患者さんの解析を行い、拠点病院の段階で診断がつく確率は77.9%でした。残りの約2割については、解析センターでさまざまな解析を行い、うち34.4%の患者さんの診断を確定することができました。

遺伝子解析によって検出される遺伝子の病的変異の数は、最初は1万くらいあります。それを東北メディカル・メガバンクが提供している健常な日本人の遺伝子データ等を使って3つくらいまで絞り込みます。そこからさらに頻度や症状で絞り込んで候補遺伝子が決まります。

このようにして世界で初めて見つけた疾患が12例ありました。このうち2例は外国とのデータシェアリングによって診断をつけることができました。

また、ミューテーション(変異)は見つかったが、同一症例の患者さんが見つからないために特定できない、もう一例あれば原因遺伝子が絞れるという症例が77例あります。39年間にわたって未診断の状態だった方は、まだ診断は確定できないのですが、原因となる遺伝子が絞り込めたということをご説明しただけで大変喜ばれました。

また、患者さんだけではなくご両親の遺伝子も調べているのですが、原因となる突然変異がご両親の遺伝子にはないことが分かり、病気がご両親のせいではないということがはっきりして喜ばれた例もあります。このように、IRUDには診断をつけるだけではなく、さまざまな診療上の貢献があります。

具体例をいくつかご紹介します。まず、IRUDによって、CDC42という遺伝子が疾患原因として新しく見つかりました。巨大血小板を伴う血小板減少症から皮膚斑状が出るほか、発達遅滞、リンパ浮腫を伴います。これは新しく発見した疾患ということで「TAKENOUCHI-KOSAKI SYNDROME」と名づけられました。

その他、脳腫瘍や皮膚疾患を伴う「Schimmelpenning症候群類縁疾患」について、BRAFの遺伝子のミューテーションが見つかり診断がついたことにより、この疾患の特異的阻害剤が既に存在していたので治療に成功した例もあります。診断がつくことは、診断だけにとどまらず、治療にも結びつくのです。

原因不明の重症炎症性疾患が、IFIH1のミューテーションである「Aicardi-Goutières症候群」であるという診断がつき、治療できた例もあります。また、初診から30年経っても病的変異が見つからなかった症例で新たにミューテーションが見つかり、治療の可能性が出てきた例もあります。

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最終更新日 平成29年10月17日