AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:成果報告① IRUD(未診断疾患イニシアチブ)(4)

(抄録)

成果報告① IRUD(未診断疾患イニシアチブ)

水澤 英洋氏(国立精神・神経医療研究センター 理事長)

世界の難病を協議するIRDiRC

(説明は本文中に記載) 図5 国際希少疾患研究コンソーシアム
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世界では、英国はGenomics England、カナダはFORGE、米国はUDN(Undiagnosed Diseases Network)などが先行し、既に多くの成果を上げています。こういった海外のファンディング機関と製薬企業機関と、難病を協議する場として、IRDiRC(International Rare Diseases Research Consortium=国際希少疾患研究コンソーシアム)があり、AMEDも設立後すぐに加盟しました。これによって、難病研究が非常にやりやすくなりました。

IRUDはIRDiRCに積極的に参加していきたいと考えています。例えば、ADA-M(Automatable Discovery and Access Matrix)という方法が、いろんなデータの公開・シェアリングで非常に有用なのですが、その使い方に関するルールをIRUDでガイドラインを作り、IRDiRCで採用してもらって、データをうまく活用できるようにしていこうと考えており、今後の発展が期待されます。

情報を共有する「IRUD Exchange」

IRUD Exchangeは、HPO(Human Phenotype Ontology)という形で、症状等を記号化することによって、患者の個人情報を出さずにデータに対応できるシステムです。オントロジーの番号を一括変換するソフトがあり、文章で入力すると翻訳され、外国あるいは日本の症例と比較できます。これらの端末を全ての拠点病院に配布しました。

国際連携については、発足した2015年度から既に2回、国際会議をやっており、2016年は、AMEDのサポートでUDNI(Undiagnosed Diseases Network International)国際会議を日本に招致しました。

広がる「IRUD Beyond」

(説明は本文中に記載) 図6 IRUD Beyond
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今後は「IRUD Beyond」という名称で、「診断」「分析」「データネットワーク」の3領域をさらに発展させます。特に、「診断」は「治療」にまで発展させる考えで、すでに実施段階ものもあります。

「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)」ですが、新しい病型として提唱した1978年当時は、本にも病名が書いていない疾患でした。その後、日本で研究が進み、前年に類似の病気でGNE遺伝子の異常だということが分かり、2002年に日本でも同じものだと確認されました。この間24年かかりました!しかし原因が分かった結果、わが国で非常に良いモデルマウスができ、シアル酸の欠乏とそれによる治療項が判明しました。現在は第Ⅱ相治験(国際治験)の段階にまでなっています。また、希少疾患で見つかった治療薬が一般的な病気でも有用な事が分かってきており、多くのメガファーマが希少疾患分野に続々と参入してきています。

さらに今後の計画ですが、解明された遺伝子の情報を統合し、AIなどを活用して解析し、未診断の新たな病気に対し、解析や診断を支援する研究も進行中です。

終わりに

2015年から始めたIRUDは、順調に発展していると思います。これまでの1年半で、特に小児領域を中心に多くの診断を確定し、新規疾患も発見され、治療にも結びついています。国内の体制をより充実させて、網羅性を向上させるとともに、国際連携を発展させて、未診断にとどまる症例の情報共有と診断確定を目指していきたいと思います。さらに難病診療との連携により、より一般的な疾患も見据えた治療法の開発に役立てたいと考えています。 最後にこのプロジェクトに関わってくださっている多くの先生方、あるいは患者さんに深謝申し上げて、お話を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


AMEDが発足した2015年度から開始し、わずか1年半の間に全国レベルの診断体制を確立し、未診断疾患の具体的な成果が既に上がっています。会場はほぼ満席で、関心の高さを感じさせる講演でした。

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最終更新日 平成29年10月17日