創薬企画・評価課 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究開発課題について

中華人民共和国で令和元年12月に初めて報告され、その流行が世界各国へ拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、速やかな研究開発が必要な状況にあります。
この社会的緊急性に鑑み、政府全体の取組の一部として、AMEDは以下の通り研究開発課題を支援することを決定しました。

(1)診断法開発

開始年度 研究開発代表者 所属機関・役職 研究開発課題名 研究概要
R1 鈴木 忠樹 国立感染症研究所 感染病理部 部長 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究 中国湖北省武漢市を発端とする新型コロナウイルス感染症は、最初の患者の発見からわずか2ヶ月程度の間に感染者数4万名、死者1000人を超える大規模な流行となっており、世界的に迅速かつ有効な対策が求められている。しかしながら、このウイルスの性状や病原性などの解析は未だ十分でなく、ウイルスの病原体検査系に関しても医療現場で使用可能な迅速診断系や血清抗体診断法は未だに確立されておらず、COVID-19疑い患者の病原体検査は極めて困難な状況である。本研究では、COVID-19の迅速診断キット開発に関する基盤技術の開発とプロトタイプキットの開発、血清抗体診断系の開発を行う。COVID-19は世界中に蔓延する可能性が危惧されており、この感染症の実態を把握し適切な医療を提供するためにも、診断法開発は緊急に進める必要がある。

(2)治療法開発

開始年度 研究開発代表者 所属機関・役職 研究開発課題名 研究概要
R1 竹田 誠 国立感染症研究所 ウイルス 第三部 部長 新型コロナウイルスの増殖機構の理解と治療剤開発に関する研究 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)について、複数のアプローチにより新型コロナウイルス感染増殖を阻害する化合物を同定する。感染機構の解明ならびに構造生物学的データを基盤として、既存承認薬ライブラリーその他化合物ライブラリーのスクリーニングなどを通じて、ウイルス感染を抑制する感染阻害分子の探索を行う。また、ハイスループットモノクローナル抗体単離技術を用いて、SARS-CoV-2に対するヒト型治療用モノクローナル抗体を迅速に樹立する。本研究ではこれらの治療薬の創製を目的とする。
現在、感染機構の解析、高純度タンパク精製と構造解析、低分子化合物ライブラリースクリーニング、治療用抗体標的組換え抗原作製とこれら抗原を活用したヒトモノクローナル抗体の研究開発、既存薬のスクリーニング、ウイルス増殖モニタリングシステム用リアルタイムRT-PCR系の開発と天然化合物ライブラリーのスクリーニング、等が進行中である。
研究参加機関:国立感染症研究所、北海道大学、北里大学、九州大学

(3)ワクチン開発

開始年度 研究開発代表者 所属機関・役職 研究開発課題名 研究概要
R1 長谷川 秀樹 国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター センター長 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発に関する研究 中国湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルス(2019-nCoV)の感染患者が報告され、最初の患者の発見からわずか2ヶ月程度の間に、世界中で4万名を超える感染者と1000人を超える死亡者が報告されており、世界的に公衆衛生上の非常に大きな問題として早急な対策が求められている。一方で、このウイルス感染症に対する治療薬及び予防法は確立されていない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中に蔓延する可能性が危惧されており、その予防の為のワクチン開発が必須である。本研究では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発を目的とする。
R1 河岡 義裕 東京大学 医科学研究所 教授 新型コロナウイルス(2019-nCoV)の制圧に向けての基盤研究 本研究では、2019-nCoVに対する有効な治療薬とワクチンを開発することを目的として、1)2019-nCoV感染症の動物モデルを確立する。2)2019-nCoV感染患者から樹立した2019-nCoVに対するヒトモノクローナル抗体が治療用抗体として有用であるのかどうかを動物モデルで検証する。3)コロナウイルスの感染防御抗原であるスパイク(S)蛋白質をコードする遺伝子ワクチンを作製し、同ワクチンの感染防御効果を動物モデルで検証する。

(4)臨床開発研究

開始年度 研究開発代表者 所属機関・役職 研究開発課題名 研究概要
R1 湯澤 由紀夫 藤田医科大学 大学病院 病院長 SARS-CoV2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験およびファビピラビルを投与された中等症・重症患者における臨床経過の検討を目的とした多施設観察研究 ファビピラビルは、富山化学工業株式会社 (富士フイルム富山化学株式会社) が創製した抗ウイルス薬であって、効能・効果を「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症 (但し、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」に限定して、2014年3月に厚生労働省の承認を受けている。その作用機序は、生体内で変換された三リン酸化体 (T-705RTP) が、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害するものであることから、インフルエンザウイルス以外のRNAウイルスへも有効性が期待されるものの、SARS-CoV2感染に対する有用性を示すエビデンスはなかった。
本研究は、特定臨床研究によりSARS-CoV2感染無症状・軽症患者に対するファビピラビルの有用性およびファビピラビルを投与された中等症・重症患者の臨床経過を明らかとすることを目的とする。
 

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最終更新日 令和2年4月21日