2016年度 研究事業成果集 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム―BINDS

創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム―BINDS (バインズ;Basis for Supporting Innovative Drug Discovery and Life Science Research)

創薬戦略部 医薬品研究課

クライオ電顕などの外部開放・解析技術支援で研究者を強力支援

AMEDが2017年度に開始した「創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)」は、優れたライフサイエンス研究の成果を医薬品などの実用化につなげるため、放射光施設、クライオ電子顕微鏡などを整備・維持し、全国の研究者に原則無料で開放しています。構造解析、タンパク質生産などに高度な技術を持つ最先端研究者のサポートも受けられます。多くの研究者に大いに利用していただき、日本の創薬研究がさらに加速することを期待しています。

■全国28大学・研究機関の施設・技術を無料開放

取り組み

2017年4月にスタートした「BINDS」は、基礎生物学から創薬に至るまでの幅広いライフサイエンス研究を、医薬品などの実用化につなげることを目的に、制度を利用する全国の研究者(以下、外部研究者)のバックアップを行う、外部研究者の方にぜひ利用していただきたい制度です。

2016年度で終了した前身の「創薬等支援技術基盤プラットフォーム(PDIS)」は、国が整備した大型研究施設を開放し、高度の専門技術を持つ最先端の研究者が外部研究者からの要請に応じて技術的な「支援」を行い、さらに関連の支援技術の「高度化」も進めるという前例のない取り組みとして高い関心を集めました。後継のBINDSは、利用できる大型研究設備にクライオ電子顕微鏡を加え、外部研究者の研究をより加速できるよう運営体制を見直しました。

利用可能な大型施設・装置は、クライオ電子顕微鏡、放射光施設(SPring-8、Photon Factory)、化合物ライブラリー、次世代シーケンサーなどです。また、構造解析、タンパク質生産、ケミカルシーズ・リード探索、構造展開、ゲノミクス解析、疾患モデル動物作出、薬物動態・安全性評価、インシリコスクリーニングなどの最先端技術による支援も行っています。外部研究者はこれらを原則無料で利用することができます。

「構造解析ユニット」「ケミカルシーズ・リード探索ユニット」「バイオロジカルシーズ探索ユニット」「インシリコユニット」「プラットフォーム機能最適化ユニット」の5ユニットで構成され、課題間・ユニット内外での研究連携も図りながら、効率的に研究成果が創出されるようバックアップします。

成果

2017年度一年間のBINDS利用申し込みは951件で、審査を経て約800件が制度を利用。前事業と比べて、大幅に増加しました。BINDSの枠組みで実施し、途中から各ユニットの研究者と外部研究者による共同研究を行い、優れた成果を創出したケースが多数あります。プラットフォーム機能最適化ユニットによりデータベースクラウドを提供し、ワンストップ窓口を設けるなど、支援の全体像を分かりやすくしたこともBINDSの特徴の一つです。いくつかのユニットの特徴を紹介します。

  • ケミカルシーズ・リード探索ユニットでは化合物ライブラリーを基盤として、スクリーニング支援や創薬シーズ探索などを支援しています。化合物ライブラリーには、新たに大村天然化合物、分子標的ペプチドライブラリーが加わりました。
  • バイオロジカルシーズ探索ユニットではゲノム解析と薬物動態・安全性評価を中心に行います。ゲノム編集技術を用いた病態・疾患モデル動物を超短期間で作出する技術の他、人工染色体技術を用いたヒト化マウスにより臨床予測性の大幅な向上が可能になりました。
  • インシリコユニットでは計算科学を駆使して、タンパク質立体構造予測、インシリコスクリーニングなどの支援を行っています。

展望

  • 構造解析ユニットでは構造生命科学研究を飛躍的に発展させる高性能のクライオ電子顕微鏡を東京大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)に各1台導入しました。2018年度中にこれらの効率的な活用を促すための「BINDSクライオ電顕共用ネットワーク」を構築して利用を開始する予定です。
  • 従来はアカデミアの研究者を主な利用者としていましたが、2018年4月から競争優位性に関わる成果を公表せずに利用できるなどの新しいルールを定め、企業利用に特化したスキームも展開します。

最終更新日 平成30年11月15日