プレスリリース ヒトES/iPS細胞凍結保存用DMSOフリー細胞凍結保存液を開発―(株)リプロセルが商品化―

プレスリリース

株式会社リプロセル
京都大学再生医科学研究所
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

NEDOプロジェクト「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発/ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」は平成27年度よりAMEDに移管され事業が継続されていますが、当該事業において、京都大学再生医科学研究所と株式会社リプロセルは、ヒトES/iPS細胞の凍結保存液として、これまで一般に使われていたDMSO入りの凍結保存液ではなく、DMSOフリーの新規化合物による細胞凍結液の商品化に成功しました。

DMSO入りの凍結保存液はその毒性が問題視され、これを用いない凍結液の開発が再生医療分野で必要とされていました。今回、私たちはDMSOの機能を代替しながらも毒性を示さない新たな化合物及びその化合物を用いた新規な緩慢凍結法の開発に成功しました。今後、再生医療分野のみならず幹細胞を用いた研究分野における新たな凍結保存法として大きな貢献ができるものと期待されています。この細胞凍結保存液は、8月24日に販売を開始する予定です。

説明図

1. 事業概要

AMED事業における担当課題である「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発/ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」では、医療の場に供される再生医療製品を安全かつ安価に製造・加工するための、各プロセスが連携した製造システムを構築することを目的としています。構築するシステムには再生医療製品の原料となる高品質のヒト多能性幹細胞等を安定的に大量供給する技術の確立等が目標として設定されており、これらを達成することによりヒト幹細胞を応用した再生医療製品開発の促進や再生医療製品及び再生医療周辺製品の国際競争力強化が図れることになります。本課題では中畑龍俊 京都大学iPS細胞研究所副所長をプログラムスーパーバイザー(PS)とし、4つのサブグループが、それぞれの課題解決に向けた研究開発を行うという体制で運営されていますが、本成果は中辻憲夫 京都大学iCeMS特任教授・設立拠点長をサブプロジェクトリーダー(SPL)としたグループで実施されたものです。

2. 成果概要

本成果は、中辻憲夫SPLが率いる研究グループでの共同研究成果を活用したものです。従来用いられてきたDMSO※1に替わる新規化合物とそれを含む凍結保存液を新たに開発し、その凍結保存効果に従来法との差のないことを実証しました。

なお、本成果に関する中辻SPLのコメントは、以下の通りです。

「これまで多能性幹細胞の凍結保存には毒性のあるDMSOを含む凍結保存液が一般的に用いられていました。DMSOを含まない凍結保存液の開発が世界中で行われていますが、今回のNEDO及びAMEDプロジェクトにおいて、京都大学・再生医科学研究所と(株)リプロセルとの共同研究から、DMSOフリーの毒性のない新規凍結保存液が開発できたことは、臨床応用を視野に入れたAMEDプロジェクトにおける重要な要素技術開発の成果と考えています。また、今回の商品に強い国際競争力があるものと確信しています。」

3.問い合わせ先

本プレスリリースの内容についての問い合わせ先

株式会社リプロセル 取締役管理部長 帯田 大悟
Tel:045-475-3887 E-mail:daigo.obita<at>reprocell.com

京都大学再生医科学研究所 幹細胞分野 産学官連携推進室・特定教授 淺田孝
Tel:075-751-4606 E-mail:tasada<at>frontier.kyoto-u.ac.jp

国立研究開発法人日本医療研究開発機構 戦略推進部 再生医療研究課
Tel:03-6870-2220 E-mail:saisei<at>amed.go.jp

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 広報部
Tel:044-520-5151

※E-mailは、アドレスの<at>の部分を@に変えてください。

参考

※1 DMSO
DMSOとはジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)の略称で、分子式(CH3)2SOで表される有機化合物です。

現在、最も多く用いられている凍結保護剤成分で、緩慢凍結と急速融解により、良好な細胞生存率が容易に得られることが知られています。一方、DMSOは培養細胞の分化誘導剤としても用いられてきており、DMSOを用いた凍結保存により細胞の分化形質が変化してしまう可能性も報告されています。

DMSOの化学構造式

掲載日 平成27年8月20日

最終更新日 平成27年8月20日