プレスリリース グリア細胞をターゲットにした疼痛(神経障害性疼痛)治療薬P2X4受容体アンタゴニスト(NC-2600)の国内第Ⅰ相臨床試験開始について

プレスリリース

国立大学法人九州大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
国立研究開発法人科学技術振興機構
日本ケミファ株式会社

九州大学(理事・副学長:井上 和秀)と日本ケミファ(社長:山口 一城)は、神経障害性疼痛※1に対する新規治療薬として日本医療研究開発機構(AMED)による支援のもと共同開発を進めているP2X4受容体※2アンタゴニスト(NC-2600)について、2016年6月から国内における第Ⅰ相試験を開始いたしました。

2003年、井上副学長の研究グループは、神経障害性疼痛モデル動物を用いて中枢神経系においてP2X4受容体の異常な発現増加を確認するとともに、同受容体の働きにより神経が異常に興奮し、通常痛みを感じない刺激でも痛みを引き起こすことを明らかにしました。また、同受容体の選択的アンタゴニストの投与により強い疼痛抑制効果を確認したことから、この作用機序が新たな神経障害性疼痛の治療薬につながる可能性を見出しました。

その後、日本ケミファとの共同研究により、2015年に経口投与で有効性が期待できる開発候補化合物を見出し、先ごろ非臨床試験を順調に終了したことを受け、この度、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験計画を提出し、第Ⅰ相試験を開始いたしました。

神経障害性疼痛を有する患者さんは、過酷な痛みに悩まされ辛い日常生活を余儀なくされている一方、現状では治療薬の選択肢は少なく、新たな治療薬の開発が求められています。今回開発したP2X4受容体アンタゴニストは世界で初めてグリア細胞※3をターゲットにした疼痛治療薬他の薬剤で、末梢性の神経障害性疼痛に加え、中枢性の神経障害性疼痛にも効果が期待されています。

なお、本研究は2009年度に科学技術振興機構(JST)の「A-STEPシーズ育成タイプ:課題名「P2X4受容体アンタゴニストの神経因性疼痛治療薬としての創薬研究」(研究者:井上 和秀、企業:日本ケミファ(株))」として採択され、2012年度にステージゲート評価によって「A-STEP実用化挑戦タイプ(創薬開発)」課題に移行しました。その後、2015年度よりAMEDに移管され、継続的な公的支援を受けながら開発を進めております。

説明図

本試験の概要

試験課題名 NC-2600 第Ⅰ相臨床試験
対象疾患 末梢及び中枢神経の損傷に伴って発症する神経障害性疼痛
主要評価項目 健康な成人男性を対象に安全性、忍容性を確認

用語説明

※1 神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、様々な原因によって起こる神経の損傷や機能異常によって生じる痛みです。神経損傷の原因となる疾患が治っても痛みだけが慢性的に持続する難治性の疼痛で、神経の損傷部位により末梢性神経障害性疼痛と中枢性神経障害性疼痛に分類することが出来ます。また、神経障害性疼痛は、病態や発症機序が複雑で多様なため、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの鎮痛薬の効果がほとんど期待できないことが知られています。
※2 P2X4受容体
P2受容体はATPをリガンドとするプリン受容体の総称で、イオンチャネル型受容体であるP2X受容体とGたんぱく質共役型受容体であるP2Y受容体の2種類に大別されています。今回の標的であるP2X4受容体はP2X受容体の7つのサブタイプ(P2X1~7)のうちの1つであり、中枢神経系において、神経障害性疼痛の発症に大きく関与していることが知られています。
※3 グリア細胞
中枢神経系には大きくわけて神経細胞とそれを支えるグリア細胞の2種類の細胞が存在しており、情報伝達を行う神経細胞を支え栄養を与えるのがグリア細胞だといわれています。 グリア細胞は主に3種類あり、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアと呼ばれています。ミクログリアは脳内で何か異常が起これば直ちにそこに移動し、形を大きく変化させ、病原体など異物を認識すれば排除しようとサイトカインなどを放出し、細胞が死んでしまえばそれを食べて組織をきれいに保とうとする中枢神経系における免疫担当細胞のような働きをしています。

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掲載日 平成28年6月17日

最終更新日 平成28年6月17日