2019年度 研究事業成果集 AMEDの国際協力への取り組み

海外機関や国際アライアンスと連携し国際共同研究を推進

AMEDは国際的な共同研究開発を展開するため、6か国・7機関と協力に関する覚書(MOC)に署名し、11の国際アライアンスに参加して協力体制を構築しています。また、27か国との間で、8事業58課題の共同研究開発が進行しています。海外事務所も活用し、国際的な研究ネットワークや研究環境基盤の構築、国際共同研究の推進、科学技術外交・保健外交上の貢献、国際的な活躍が期待される若手研究者の育成等を行っています。

取り組みと成果

国際ワークショップ等の開催による国際研究ネットワーク強化と、国際的研究環境の基盤構築

  • 2019年6月、北欧NordForskと「ライフコース」をテーマとしたワークショップを開催し、AMEDが推進するライフコースアプローチ研究での協力の準備を進めました(写真1)。
  • 2019年7月、日本の主導で設立された国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO)創設30周年を記念し、HFSPO、文科省、経産省、AMEDの共催により、記念式典と記念講演会を東京で行いました。記念講演は各国のFA、HFSP採択者や国内の高校生を招待し、ノーベル賞受賞者4名が講演、国際連携推進に寄与しました(写真2)。これに先立ち2019年5月には在米日本大使公邸においても記念式典が大使列席のもとで行われました。
  • 2019年9月、リトアニア保健省と「難病・がん」をテーマとしたワークショップを開催、専門家の交流を通じて共同研究の推進に向けた議論を行いました(写真3)。
  • 2019年11月、インド科学技術部(DST)医学研究会議所(ICMR)と「感染症・非感染性疾患・データヘルス」に関するワークショップを開催、将来の共同研究の可能性などについて議論しました(写真4)。
  • 2019年11月、インド科学技術部(DST)医学研究会議所(ICMR)
    と「感染症・非感染性疾患・データヘルス」に関するワークショップ
    を開催、将来の共同研究の可能性などについて議論しました(写真4)。
  • 2020年1月、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行に対処するため、COVID-19に関連する研究成果とデータを広く迅速に共有する声明に署名しました。これにより、論文投稿前に研究データや結果を共有することが可能になりました。
  • 2020年2月、英国AMS及びJSPSと共同で「データ主導型ヘルス分野の日英合同シンポジウム」を開催しました。英国からは高齢化の進む日本の施策や研究に高い関心が寄せられ、英国研究者と問題意識を共有し、共同研究に向けた意見交換が行われました(写真5)
  • アメリカ国立アレルギー感染症研究所(NIAID)/アメリカ国立衛生研究所(NIH)と共同で、AMEDワシントンDC事務所が「全米さくらまつりストリートフェステバル」に出展、「日米医学協力計画」をはじめとした日米の医学分野における研究協力の歴史やその成果等の展示を行い、これまでに培った成果の周知を行いました(写真6)。
  • 国際水準での評価等を目指し、公募・評価プロセスにおける国際レビューアの導入を拡大しました。併せて大量破壊兵器の設計・製造・使用に繋がる技術の拡散を防ぐための安全保障貿易管理体制を強化し、役職員への周知徹底を図りました。
写真1 2019年6月、北欧NordForskと「ライフコース」をテーマとしたワークショップを開催
写真2 2019年7月、HFSPO創設30周年記念式典と講演会を東京で開催
写真3 2019年9月、リトアニア保健省と「難病・がん」をテーマとしたワークショップを開催
写真4 2019年11月、インドDST/ICMRと「感染症・非感染性疾患・データヘルス」をテーマとしたワークショップを開催
写真5 2020年2月、英国AMSと「データ主導型ヘルス分野の日英合同シンポジウム」を開催
写真6 2019年4月、米国NIH/NIAIDとAMEDワシントンDC事
務所が共同で「全米さくらまつりストリートフェステバル」に出展

国際共同研究等の推進

  • シンガポールとは、SICORPを活用し細胞治療分野に関する研究を開始しました。また2020年2月には、2016年にMOCに署名したシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)と連携し「AMED Gene&Cell Therapy(遺伝子・細胞治療)シンポジウム」を開催、今後の研究内容について深い議論が行われました。
  • 英国とは、2017年2月に英国医学研究会議(MRC)とMOCに署名、ロンドン事務所とともに日英ワークショップ開催など国際共同研究に向けた環境整備を進めた成果として、感染症分野、再生医療分野における日英共同研究の展開が推進されています。
  • 全米医学アカデミー(NAM)とは、2019年2月にMOCに署名し、世界的な高齢化社会の課題解決に向けて優れたアイデアを募るNAM主催プログラム“Healthy Longevity Grand Challenge”に参画、日本におけるGlobal Collaboratorとして7か国の8機関と協働しています。シーズを幅広く募る第一フェーズCatalyst Awardコンペには、世界の若手研究者と国際的・学際的に構成されたInterstellar Initiative共同研究チームの課題からも登録されることとなりました。また2019年10月には、経産省等主催の第2回Well Aging Society SummitにおいてNAMのDzau総裁とAMED末松理事長(当時)が揃って健康長寿に関する基調講演を行いました(写真7)。
写真7 2019年10月、第2回Well Aging Society Summitで健康長寿について基調講演

国連SDGsや地球規模保健課題への取組みを通じた科学技術外交・保健外交上の貢献

  • 地球規模の保健課題についての現状および日本の保健外交政策に則り、WHO等の国際機関と適宜連携しながら日本の知見や経験を基盤として、各国の状況に沿った対策を作成・提案する共同研究を実施しています。例えばガーナにおける国境検疫に関する研究課題では、ガーナで初めてリフトバレー熱を検知したことを機に2020年3月には空港にカメラ・モニターを設置するなどベクターサーベイランス、出入国者サーベイランスの量質的な拡充を図り、ガーナの国家感染症対策に貢献しました(写真8)。
  • 「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」では、政府開発援助(ODA)を行うJICAとの連携により、アジア・アフリカ等の開発途上国と感染症に関する国際共同研究9課題を9か国で推進しました。また、「アフリカにおける顧みられない熱帯病対策のための国際共同研究プログラム(NTDs)」では、アフリカ地域8か国で4課題を推進し、各国のSDGs実施方針に則した具体的施策としてその目標達成に貢献しました。例えば、NTDsによって開発された、インクジェットプリンターを用いたハンセン病並びにヒトアフリカトリパノソーマ症遺伝子診断用乾燥型LAMPキットおよびハンセン病血清診断イムノクロマトグラフィーキットは、既存キットより安価で精度が高く、現地ザンビアで活用することで、地域住民のみならず、野生動物、家畜、媒介昆虫を対象としたハンセン病およびヒトアフリカトリパノソーマ症の実態調査が進みました。その結果、既存の報告よりも高い有病率の可能性が示唆されました。
  • 2019年7月、「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」のプレイベントとして、「TICAD7Pre-Event、ICREP-NTDs国際シンポジウム」を開催し、日本・アフリカ間の感染症分野の研究を推進しました(写真9)。
  • 2020年2月、「第22回汎太平洋新興・再興感染症国際会議(EID国際会議)」をNIAIDと共同でタイで開催し、「ウイルス」をテーマとした研究成果を共有しました。特に、COVID-19に関しては、緊急のセッションを設定し、各国のCOVID-19感染動向や、今後、重要となる研究内容等を参加者と共有することができました(写真10)。
写真8 2020年3月、ガーナの空港にカメラ・モニターを設置し、国境検疫のサーベイランスを拡充
写真9 2019年7月、「TICAD7」のプレイベントとして、「TICAD7Pre-Event、ICREP-NTDs国際シンポジウム」を開催
写真10 2020年2月、「EID国際会議」を米国NIH/NIAIDと共同でタイにて開催、COVID-19緊急セッションも行った

最終更新日 令和3年8月13日