プレスリリース 胃がんをリアルタイムで監視する時代へ―EBウィルス関連胃がんを血液で検出する手法に関する研究論文の掲載―

平成29年3月14日プレスリリース

京都府公立大学法人京都府立医科大学
国立大学法人徳島大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器外科学 市川大輔准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部人類遺伝学分野 井本逸勢教授、増田清士准教授ら研究グループは、血液中の遊離DNAを用いて解析するリキッドバイオプシー(液体生検)技術により、血液検査のみでEBウィルス関連胃がんの検出を可能にする方法を開発し、本件に関する論文が、2017年2月24日『Oncotarget』オンライン版に掲載されましたのでお知らせします。

近年の解析技術の進歩により、胃がんはがんゲノムの特徴によって効果的な治療法の選択に繋がることが明らかとなってきました。Epstein-Barrウィルス(EBV)感染は胃がんの約一割の症例で認められます。そのようなEBV関連胃がんでは、現在開発中のものを含めていくつかの分子標的薬が効果を示す可能性のある遺伝子の変化が高率に検出されることから、重要な分子マーカーになると考えられます。現在は手術時に摘出されたがん組織を用いて、EBV感染の有無が診断できますが、がんの治療中や再発時にがん組織をとることは侵襲が大きいために実際に検査が行われることは稀です。

そこで今回、循環血液中の遊離DNAをリアルタイムPCR法によって解析するリキッドバイオプシー(液体生検)技術を用い、がん組織を用いることなく、胃がんのEBV感染を低侵襲で検出する方法を開発しました。

本研究成果により、血液によるがんの進行状況などの診断が可能となり、治療効果の予測・判定や、再発の監視などをリアルタイムにかつ低侵襲に行えるようになるため、今後の胃がん診断に有用なツールとして期待できます。

掲出雑誌

科学雑誌「Oncotarget」[2017年2月24日(金)オンライン版掲載]

論文名

Clinical utility of circulating cell-free Epstein–Barr virus DNA in patients with gastric cancer.
[日本語:Epstein-Barrウィルス関連胃がん患者では、循環血漿中のDNAを用いることにより低侵襲でリアルタイムに胃がんの診断や経過観察を可能にする]

責任著者

京都府立医科大学消化器外科 准教授 市川大輔
徳島大学大学院医歯薬学研究部人類遺伝学分野 教授 井本逸勢

研究概要

1.研究背景

これまで胃がんは病因や組織構造に多様性があることが知られていましたが、近年の解析技術の進歩によって、がんゲノムに認められる特徴に着目したグループ分けが効果的な治療法の選択につながることが明らかになってきました。

Epstein-Barrウィルス(EBV)感染は胃がん全体の約1割の症例に認められ(EBV関連胃がん)、他のタイプに比べて特定の遺伝子が高頻度に変異していることや、がん細胞が免疫力を抑え込む仕組みの一つが活性化していることが報告され、今後これらの変化に対する分子標的治療が開発され有効性が示されれば、血中のEBVは重要な分子マーカーになります。

EBV関連胃がんは、がん細胞内にEBV感染が認められるので、現在は手術時に摘出されたがん組織を用いて、その陽性・陰性が診断されています。

一方、がんの治療中や再発時には侵襲が大きいために検査を行うことは困難で、治療の効果を定量的に評価したり再発時に治療法を選択したりするための情報を得ることができません。

2.研究内容

そこで同研究グループで、これまで開発していたリキッドバイオプシー技術を用い、循環血漿中に流れるがん細胞内EBV由来のDNAを高精度に検出する方法を開発しました。

リキッドバイオプシー技術とは、血液などの体液中に存在するDNAやRNAの中にわずかに存在する疾患由来の変化を検出することによって、疾患の診断や治療効果予測を行う技術です。例えば、がんの場合には、がん細胞に認められるDNAの変異を血液中で検出することで、がん組織を用いることなく、非侵襲的にがんの早期診断や再発の早期検出、大きさの推定や治療効果の判定などが行える技術として期待されています。

本手法は、これまでにも胃がんにおける分子標的治療薬の標的であるHER2遺伝子増幅を、がん組織を用いることなく高感度で低侵襲に検出できる方法として、研究成果を上げてきました。

本手法は検体採取が採血のみで検出するため、手術によるがん細胞の摘出に比べ、遙かに患者の身体への負担を抑えることができます。

また、手術前に血液でEBV感染が検出されていた症例では、EBVのDNA量が腫瘍の大きさと相関したことから(図1)、EBV関連胃がんの治療後にEBVのDNA量の変化を見ることで治療効果が判定できる可能性があります。
説明図・2枚目(説明は本文中に記載)図1.血漿中EBウイルスDNA量と腫瘍径は相関する

血漿中に流れる癌細胞由来のEBウイルスDNA量を検査することで、体内に存在するEBウイルス関連胃癌細胞の量を安全で高感度に検出できる

加えて、手術でがんを取り除き一旦EBVのDNAが消失した後も経過を追っていると、他の検査(画像や腫瘍マーカー)で再発が発見される前に血中でEBVの再出現が検出されました。(図2)

説明図・2枚目(説明は本文中に記載)図2.経過中にEBウイルス関連胃癌の再発を検出した例
手術前に血液でEBウイルス感染がわかっていた症例で、手術後に一旦EBウイルスDNAが消失した後、その他の検査で再発が見つかる以前に血中で検出が確認された。

3.まとめと今後の展望

今回の研究によって、血中でEBV由来DNAを検出することにより、胃がんの治療戦略に有用な手法の確立以外にも、治療効果が判定できる可能性や、再発の早期発見マーカーに繋がっていく可能性があります。

また、血液のみでEBV関連胃がんの診断ができることで、治療効果の予測・判定や再発の監視が非侵襲的にリアルタイムで行えることになり、今後の胃がん診療に有用なツールとなることが期待できます。

今後研究グループでは、症例を増やして臨床的な有用性を確認するとともに、検査の実用化のためのさらなる高精度化を図るべく技術開発を進めていきます。

論文著者

Shoda K, Ichikawa D, Fujita Y, Masuda K, Hiramoto H, Hamada J, Arita T, Konishi H, Kosuga T, Komatsu S, Shinozaki A, Okamoto K, Imoto I, Otsuji E.

研究資金

  • 日本医療開発研究機構(AMED)オーダーメイド医療の実現プログラム
  • 文部科学省科学研究費助成事業

お問い合わせ先

研究に関すること

京都府立医科大学大学院 医学研究科消化器外科学
准教授 市川大輔
電話:075-251-5527
E-mail:ichikawa“AT”koto.kpu-m.ac.jp

徳島大学大学院 医歯薬学研究部人類遺伝学分野
教授 井本逸勢
電話:088-633-7075
E-mail:issehgen“AT”tokushima-u.ac.jp

日本医療研究医開発機構 バイオバンク事業部
電話:03-6870-2228
E-mail:kiban-kenkyu“AT”amed.go.jp

広報に関すること

京都府立医科大学 広報センター
担当/中尾
電話:075-251-5275
E-mail:kouhou“AT”koto.kpu-m.ac.jp

徳島大学 医学部総務課総務係
担当/立山
電話:088-633-9986
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日本医療研究医開発機構 経営企画部企画・広報グループ
電話:03-6870-2245
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最終更新日 平成29年3月14日