ニュース 分子標的薬開発のための糖鎖欠損細胞株の確立―カナダApplied Biological Materials社とライセンス契約を締結―

平成29年5月8日 プレスリリース

国立大学法人東北大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

研究概要

東北大学未来科学技術共同研究センター/東北大学大学院医学系研究科抗体創薬研究分野の加藤 幸成 (かとう ゆきなり) 教授、東北大学大学院医学系研究科抗体創薬共同研究講座の金子 美華(かねこ みか)准教授の研究グループは、分子標的薬の開発などライフサイエンス研究における糖鎖機能解析に有用な様々な糖鎖欠損細胞株の開発に成功しました。糖鎖欠損細胞株の開発により、東北大学で開発中の抗糖ペプチド抗体(GpMab)やがん特異的抗体(CasMab)のエピトープ解析にも威力を発揮します。本研究成果は、2017年2月に、米国のがん研究専門誌Cancer Medicineに掲載されました。さらに、2017年5月に、各種糖鎖欠損細胞株についてApplied Biological Materials社(本社:リッチモンド、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)とライセンス契約を締結しました。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業)によってサポートされました。また、2017年度から開始されたAMED創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業の支援制度の活用により、東北大学とのMTA(Material Transfer Agreement:研究成果物提供契約)の下に各種糖鎖欠損細胞株の譲渡を受けることが可能です。

研究のポイント

  • 分子標的薬の開発に必要な新規ツールとして、各種糖鎖欠損細胞株を開発した。
  • モノクローナル抗体の認識部位の解析にも威力を発揮する。
  • AMED創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業において、東北大学とのMTAの下に各種糖鎖欠損細胞株の譲渡を行っている。

研究内容

近年の医療では、がんをはじめとする疾患の原因や性質の異なる患者に、最も適切な治療が行われています。疾患の原因となる分子のみに作用する薬は分子標的薬注1と呼ばれ、近年の医薬品開発においては、抗体医薬注2をはじめとする分子標的薬の開発が活発に進められています。抗体医薬の開発においては、創薬の標的となる分子を同定することが極めて重要ですが、新規の標的分子の発見および解析は、いまだ非常に困難であることが現状です。これまでの標的分子の探索においては、タンパク質の本体に焦点が当てられてきましたが、生体の膜タンパク質や分泌タンパク質のほとんどは多様な糖鎖によって修飾された糖タンパク質であり、糖タンパク質に対する分子標的薬の開発が望まれています。

東北大学未来科学技術共同研究センター/東北大学大学院医学系研究科抗体創薬研究分野の加藤幸成教授、東北大学大学院医学系研究科抗体創薬共同研究講座の金子美華准教授の研究チームは、糖鎖とペプチドの両方を認識するモノクローナル抗体注3(GpMab注4)の開発を進めてきました。その結果、がん細胞のみに反応し、副作用を限りなく低減させる抗体医薬(CasMab;キャスマブ注5)の開発に複数成功しています。これらの抗体が認識する部位(エピトープ)の解析には、各種糖鎖が欠損した細胞株が有用であることが知られていましたが(図1)、制限なく使用できる糖鎖欠損細胞株が日本で入手困難でした。

東北大学では、2012年度から5年間、AMED創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業)において、糖鎖欠損細胞株の開発を実施してきました。その結果、複数の糖鎖欠損細胞株の開発に成功しました(図2)。さらに、2017年度から開始されたAMED創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業において、東北大学・加藤研究室の細胞バンク(図3)から、東北大学とのMTAの下に各種糖鎖欠損細胞株の譲渡を行っています。これらの糖鎖欠損細胞株は、抗体医薬の解析のみならず、ライフサイエンス研究における糖鎖機能解析に威力を発揮すると考えられています。

用語説明

注1.分子標的薬:
がん細胞の持つ特異的な性質を分子レベルでとらえ、それを標的として効率よく作用するようにつくられた薬のこと。がん細胞を狙って作用するため、副作用をより少なく抑えながら治療効果を高めると期待されている。
注2抗体医薬:
抗体を利用した医薬品のこと。抗体医薬品は、がん細胞などの細胞表面の目印となる抗原を特異的に認識するため、高い治療効果と副作用の軽減が期待できる。
注3モノクローナル抗体:
単一抗体のこと。血清から精製するポリクローナル抗体と異なり、抗体産生細胞から無限に生産が可能であり、抗体医薬に使われている。
注4GpMab:
糖鎖とペプチドの両方をエピトープに含む抗糖ペプチド抗体のこと。
注5CasMab(キャスマブ):
がん特異的抗体のこと。がん細胞と正常細胞に全く同じアミノ酸配列のタンパク質が発現していても、糖鎖などの翻訳後修飾の差を利用することにより、がん特異的抗体の作製が可能となった。
説明図・1枚目(説明は本文中に記載)図1:糖鎖欠損細胞は種々のライフサイエンス研究に有用である
説明図・2枚目(説明は本文中に記載)図2:糖鎖欠損細胞は抗体のエピトープ解析に有用である
説明図・3枚目(説明は本文中に記載)図3:糖鎖欠損細胞株の細胞バンク

論文題目

Development and characterization of anti-glycopeptide monoclonal antibodies against human podoplanin using glycan-deficient cell lines generated by CRISPR/Cas9 and TALEN
「CRISPER/Cas9やTALENによって作製した糖鎖欠損株による抗糖ペプチド抗体の樹立と解析」
著者:Kaneko MK, Nakamura T, Honma R, Ogasawara S, Fujii Y, Abe S, Takagi M, Harada H, Suzuki H, Nishioka Y, Kato Y.
掲載誌:Cancer Medicine

参考

お問い合わせ

研究に関すること

東北大学未来科学技術共同研究センター
東北大学大学院医学系研究科抗体創薬研究分野
教授 加藤 幸成(かとう ゆきなり)
Mail:yukinarikato“AT”med.tohoku.ac.jp

報道に関すること

東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
講師 稲田 仁(いなだ ひとし)
TEL:022-717-7891
FAX:022-717-8187
Mail:pr-office“AT”med.tohoku.ac.jp

AMED事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
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TEL:03-6870-2219
Mail:20-DDLSG-16“AT”amed.go.jp

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最終更新日 平成29年5月8日