プレスリリース 自分で測り自分で創る健康社会へ ー 一人ひとりの日常生活のモニタリングと健康データの関連の解明を目指した5,000人規模の共同研究を開始ー

平成29年5月23日プレスリリース

国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
オムロン ヘルスケア株式会社
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

発表のポイント

国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構(以下、東北メディカル・メガバンク機構)とオムロン ヘルスケア株式会社(以下、オムロン ヘルスケア社)は、日常生活のモニタリングで得られた検査値と高血圧などの疾病の関連を明らかにするための、共同研究を実施する契約を平成29年5月15日(月)に締結し、共同研究を開始しました。

本研究では、東北メディカル・メガバンク機構が実施する東北メディカル・メガバンク計画の一環としてコホート調査*1の参加者5,000人に尿中のナトリウムとカリウムのバランス(塩分と野菜や果物の摂取バランス)・身体活動量・睡眠状態を10日間にわたって自ら測定してもらいます。そのデータと家庭血圧等ほかの測定値との関連を検討し、更に遺伝情報や生活習慣情報など種々の要因を考慮に入れた総合的な解析を行うことで、「自分で測り自分で創る健康社会」の基盤構築を目指します。

東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災の被災地等で健康調査を行い、被災地の健康状態の改善と遺伝要因・環境要因を考慮した次世代型医療・予防の確立を目指したもので、平成27年度より、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が本計画の研究支援担当機関の役割を果たしています。当計画では、東北大学と岩手医科大学が協力して宮城県・岩手県で15万人規模のコホート調査を実施し、平成23年度から平成28年度までの第1段階において目標としていた15万人以上の参加を実現しています。

平成29年度からは、コホート調査の参加者のその後の健康状態を調査するために、詳細二次調査*2が行われますが、当該調査に合わせて、本共同研究も実施される予定です。本共同研究では、東北大学の詳細二次調査に参加する方のうち5,000人から新たに同意を得て、共同研究に協力を求める予定です。同意いただいた方には、オムロン ヘルスケア社の尿ナトカリ計、活動量計、睡眠計を配布し、生活習慣情報を測定してもらいます。

尿ナトカリ計については、オムロン ヘルスケア社も参画している東北大学を中心としたセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラム東北拠点において、一般住民を対象としたフィージビリティ研究*3が既に行われ、有用性等が示されています。

本共同研究を通じて、より精度の高い生活習慣情報を得ることで、個人の体質に合わせた適切な予防法・治療法の開発に貢献できると考えています。またこれらのデータは、東北メディカル・メガバンク機構のバイオバンク*4に格納され、データの整理が完了すれば全国の研究者に分譲され、個別化予防・治療の研究に活用していただく予定です。

共同研究の期間は契約締結から平成30年3月31日(土)までを予定しています。

東北メディカル・メガバンク機構とオムロン ヘルスケア社は、被災地の住民の方々のご協力と、それをもとに東北大学が解析して得てきたゲノム解析情報等およびそれを可能にした技術力、そしてオムロン ヘルスケア社が保有する精密なライフスタイル評価を融合することで、世界に先駆けて「自分で測り自分で創る健康社会」を目指します。

用語解説

*1.コホート調査
ある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因・遺伝要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。
*2.詳細二次調査
最初に調査へご参加いただいた時点から健康状態がどう変化したかを把握し、生活習慣と疾病との関連を明らかにするとともに、個別化予防・個別化医療の確立に向けた研究を行うことを目的とした調査のこと。平成29年6月1日(木)から開始される。
*3.フィージビリティ研究
実際に研究用の機器等を使用した調査が実行可能か検証する研究のこと。
*4.バイオバンク
解析研究に用いることを目的とし、試料・情報を収集して長期間保存し、解析を行う研究機関に分譲するシステムのこと。

概要

1.目的および背景

健康な社会の実現のためには、一人ひとりが日々の自分の健康状態を把握し、病気を未然に防ぐことが重要です。中でも、高血圧は身体活動、食事、睡眠といった生活習慣が大きな要因となって引き起こされることが明らかになっています。

こうした生活習慣と高血圧との関係はこれまでに多くの調査が行われてきましたが、特に大規模な調査では、自己申告型のアンケート調査が多く使用されていました。自己申告型のアンケートが、その人の生活習慣の実態を正しく反映しているか、申告された量が妥当かを客観的に評価することに課題がありました。さらに、これまでの研究では、身体活動・食事・睡眠それぞれが独立に評価されてきましたが、これらは相互作用を及ぼす生活習慣のため、全てを同時に測定し、総合的に評価することが望ましいと考えられます。

近年の測定機器の進化によって、家庭での生活習慣をこれまでより簡便かつ正確に測定することが可能となってきました。身体活動を測定する機器、ナトリウム(塩分)とカリウム(野菜や果物)の摂取バランスを測定する機器(以下、尿ナトカリ計)、睡眠を計測する機器などです。

これらの機器のうち尿ナトカリ計については、東北メディカル・メガバンク機構、オムロン ヘルスケア社がともに参加しているセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラム東北拠点において、市町村の健康診査・保健指導での活用を進めてきました。その結果、尿ナトカリ計がコホート対象者に十分使用可能であること、さらにこれらの機器を大規模ゲノムコホート注研究で活用することにより、遺伝子に応じた生活習慣と健康関連指標の関連を高精度で評価する可能性が明らかになりました。これを受け東北メディカル・メガバンク機構と主に高血圧に起因し、生活の質(QOL)を著しく低下させる「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」を目指すオムロン ヘルスケア社が協働して、本共同研究を開始することになりました。

本共同研究においては、上記の尿ナトカリ計、活動量計及び睡眠計を用いた測定を家庭にて同時に10日間行い、これまでの自己申告型のアンケート調査に基づく生活習慣測定との比較を行います。また、10日間の尿ナトカリ計の測定データ、活動量計の測定に基づく身体活動データ及び睡眠計により評価された睡眠状態データと家庭血圧等種々の健康指標との関連を分析します。今回導入する機器で得られたより精密かつ正確なデータを解析に用いることにより、生活習慣と健康指標との関連がより明瞭に分析されることが期待されます。

一方、本共同研究により蓄積されるデータを活用して、より精密な高血圧発症予想プログラムの開発を目指すとともに、さらに東北メディカル・メガバンク計画で解析してきたゲノム情報と統合することで遺伝要因との関連検討も行います。

注:ゲノムコホート
対象者集団を長期間追跡し、疾病の発症・悪化を追跡するコホート研究のうち、ゲノム情報を収集しているもの。

2.データ収集手法

本共同研究は、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査で行う詳細二次調査に参加するために、平成29年度に石巻、多賀城、岩沼の3つの地域支援センターを訪れた方の中で同意を得た方に対して行います。

平成25年度から平成28年度にかけて行った調査(ベースライン調査)においては、地域支援センターに来所いただいた方に対し、家庭血圧測定・歩数計調査など「日常」における健康状態の把握を行ってきました。本共同研究では、より正確な身体活動、睡眠、そして尿中のナトカリ比(食塩分と野菜や果物の摂取バランス)の測定を実施することで、より精密な生活習慣の把握を目指します。

具体的には、東北メディカル・メガバンク機構の詳細二次調査参加者で同意が得られた方に活動量計、尿ナトカリ計、睡眠計を貸与いたします。参加者は10日間の計測後、宅配便にて機器をセンターに返却します。なお、睡眠計については台数に限りがあるため、多賀城センターのみでの貸与となります。

身体活動の測定は、起床後に活動量計を装着し、入浴時を除き就寝時まで装着していただきます。尿ナトカリ計によるナトリウム(塩分)とカリウム(野菜や果物)の食事バランスは、毎日朝晩2回の尿より測定します。睡眠の測定は、睡眠計を用いて毎日就寝時に測定を開始し、起床時に測定を終了していただきます。

詳細二次調査

平成28年度までにコホート調査に参加した方にお願いする、2回目にあたる健康調査で、最初に調査へご参加いただいた時点から健康状態がどう変化したかを把握・分析します。調査内容は生活習慣や食習慣に関するアンケート、血液・尿検査、生理学的検査などです。

参加者は1回目の調査結果と比較することで、自らの健康状態の変化がわかり、更に2回目の調査から加わる新しい検査により、さらに詳しく健康状態を知ることができます。

本調査は平成29年6月1日(木)から開始されます。

地域支援センター

東北大学東北メディカル・メガバンク機構は宮城県内7箇所(気仙沼、大崎、石巻、多賀城、仙台、岩沼、白石)に健康診査設備を備えた地域支援センターを設けて、詳細な健康調査を実施してきました。詳細二次調査では、コホート調査参加者のみなさまに地域支援センターで検査を受けていただきますが、本共同研究はそのうち石巻、多賀城、岩沼の3つのセンターで行われます。
 

3.研究の特徴

(1)ナトカリ比等の測定に着目した理由と背景

日本人の要介護認定の原因疾患第1位は脳血管疾患ですが、その原因の一つは高血圧です。高血圧の原因の1つとして、高塩分食が古くから知られていますが、以下の2つの理由により、減塩指導はなかなか成果をあげにくくなっていました。

1つ目の理由は、塩分量(ナトリウム量)の減少に反応して血圧が低下する者とそうでない者がいることです。これにより減塩しても血圧が下がらないかもしれないということで減塩の徹底がなされてきませんでした。

2つ目の理由は、簡便な塩分摂取量の評価法がなかったことです。食事中の塩分摂取量のゴールドスタンダードは、24時間蓄尿で測定される尿中ナトリウム排泄量であり、一般の方に測定していただくのは非常に困難でした。随時尿で測定された尿中ナトリウムやクレアチニンから24時間尿中ナトリウム排泄量を推定する計算式も普及しつつありますが、1回の随時尿からの推定であり、個々人の塩分摂取量を代表する値になりうるかどうかは議論の分かれるところでした。

一方、近年研究用に開発された尿ナトカリ計は、1回の測定では24時間蓄尿のナトカリ比との相関は中程度であるものの、極めて簡便に測定でき、かつその結果を測定者が自分の目で確認できるという利点があります。更に、測定が簡便なため自宅に持ち帰ってもらえば、数日間の測定をしていただくことができます。また、尿ナトカリ計で測定したナトカリ比の7日間の測定値は、24時間蓄尿で得られたナトカリ比と極めて高い相関を得られることが国際的な論文にて裏付けられており、個々人の塩分(ナトリウム)と野菜や果物(カリウム)の摂取比を高いレベルで推定できます。特に、カリウムには体内のナトリウムを排出させる作用があり、欧米のDASH食研究の結果ではカリウムを多く摂取し、ナトカリ比を低く抑えることにより血圧の上昇を抑制することができることも知られており、塩分摂取量の測定と同様な食事習慣の指標として注目されています。

東北メディカル・メガバンク機構とオムロン ヘルスケア社が尿ナトカリ計を用いた共同研究を行うことで、上記2つの課題、すなわち塩分感受性の有無の確認と測定の困難さが解決されることになります。前者については、東北メディカル・メガバンク機構が対象者の同意のもとで対象者全員の遺伝情報を解析することにより、対象者の塩分感受性を明らかにすることが可能になります。後者については、対象者が尿ナトカリ計を用いて簡便かつ長期に随時尿を測定することで、塩分摂取量と同様な食事習慣指標であるナトカリ比を推定することが可能になります。同様に精度の高い身体活動量計、睡眠計を組み合わせることで、絶対評価された生活習慣と体質が血圧等にどう関連するかを明らかにしていきます。

食事習慣の推定手法 測定の精度 簡便さ その場で結果が見られるか
24時間蓄尿

随時尿からの推定(1回)

ナトカリ比(1回)

ナトカリ比(7回)

(2)新規性

従来の研究では、身体活動・食事・睡眠それぞれが独立して評価されてきましたが、本来これらの要因は相互作用を及ぼす生活習慣であるため、総合的に生活習慣を評価することが必要となります。本研究では、参加者の方が3つの機器を同期間に用いて測定していただくため、各生活習慣要因の相互作用を検討することが可能となり、血圧への影響をより詳細に検討することができるようになります。

 
(3)研究体制(2者の役割)
  • 東北メディカル・メガバンク機構:
    • 地域支援センターにおける詳細二次調査の際に、本共同研究で使用されるウェアラブル機器の管理・貸与、対象者に対する測定法の指導、対象者への本共同研究の説明並びに同意の取得。
    • 返却された機器からのデータ読み取り、抽出されたデータの整形、データ保存。
    • 収集されたデータと、東北メディカル・メガバンク計画で取得したデータを合わせた解析の実施。
  • オムロン ヘルスケア社:
    • 東北メディカル・メガバンク機構に対する、機器の貸与、東北メディカル・メガバンク機構職員への測定法の指導。
    • 東北メディカル・メガバンク機構の研究者との共同によるデータ解析。
    ※なお、対象者への説明および、データ抽出・管理には関与しません。
図研究の流れ

4.実施期間及び場所

(1)共同研究の期間:
平成29年5月15日(月)から平成30年3月31日(土)
(2)実施場所:
東北大学東北メディカル・メガバンク機構

5.今後の展開

(1)スケジュール
平成29年6月より、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査詳細二次調査の開始にあわせて、対象者への機器の貸与を開始する。今年度中に収集したデータの分析結果をもとに、共同研究の延長についても検討する。
(2)期待される将来の社会的価値
本研究は、一人ひとりが直接左右できる生活習慣(身体活動・食事・睡眠)と、健康指標(血圧値)との関係を解き明かそうという試みです。一人ひとりが、自らの生活習慣を把握する具体的な物差しを持った上で、重要な健康指標として確立された血圧値を個人がコントロールしていくモデルをつくり、「自分で測り自分で創る健康社会」の確立を目指していきます。

問い合わせ先

報道に関すること

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
広報・企画部門
担当 長神 風二(ながみ ふうじ)
電話:022-717-7908
FAX:022-717-7923
E-mail:f-nagami“at”med.tohoku.ac.jp

共同研究に関すること

オムロン ヘルスケア株式会社
広報渉外部 担当
飯島かおり(いいじま かおり)、中島智(なかじま さとし)
電話:(東京)03-6718-3595 (京都)075-925-2004
E-mail:pr_ohq“at”omron.co.jp

AMEDに関すること

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
基盤研究事業部 バイオバンク課
電話:03-6870-2228
E-mail:tohoku-mm“at”amed.go.jp

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最終更新日 平成29年5月23日