プレスリリース 過去最大規模の調査・研究で小児C型肝炎の特徴を明らかに―肝硬変・肝がんは皆無―
プレスリリース
久留米大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
久留米大学医学部小児科学講座の水落建輝助教を中心とする研究グループは、小児のC型肝炎ウイルス(以下、HCV)感染に関する大規模な疫学研究を行い、本邦における小児HCV感染の疫学的特徴を明らかにしました。当研究は、世界的にも過去最大規模の疫学研究で、その研究成果は専門英文誌のJournal of Gastroenterology(オンライン版)に掲載されました。
概要
今回の調査では、全国65の小児施設から登録された、1986年から2015年に出生し研究条件を満たした348例を、出生年ごとに3群に分け、診断時年齢、最終受診時診断、治療、感染経路、ゲノタイプなどを比較検討しました。肝生検が実施されていた147例に関しては、肝組織像を詳細に検討しました。
その結果、近年の傾向は、より低年齢で診断され、母子感染が99%以上になり、ゲノタイプは2型が最多になっていました。
また、注目すべきは、欧米では1~2%に認められる肝硬変は国内では見られず、大部分の症例は肝組織で線維化がない、または軽度ということでした。肝がんもありませんでした。
結果
現在、小児のHCV感染経路は、99%以上が母子感染のため、妊娠前の女性HCV感染者への根治的な治療が、本邦のHCV感染撲滅のために重要であることを示唆する研究成果となりました。
なお、本件は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業(肝炎等克服緊急対策研究事業)で採択されている研究(研究代表者:田尻仁)により得られた成果です。
最近30年の小児C型肝炎の疫学的特徴:自然歴と肝組織像に関する全国調査
目的
方法
成績
対象は348例(男154、女194)。診断時は3.1歳、最終受診時は10.9歳で、近年、診断年齢は有意に低下していた。最終受診時の臨床診断は自然消失9%、キャリア34%、慢性肝炎4%、SVR40%、治療中5%、不明8%、肝硬変/肝癌0%であった。治療は54%に実施されていた。感染経路は母子90%、水平1%、輸血5%、不明4%で、近年、母子感染の実数は増加していなかったが、感染経路全体に占める割合は増加し、2006~2015年は99%に達していた。1992年に第二世代の輸血スクリーニングが開始されて以降、輸血感染が有意に減少し、1995年以降はなかった。Genotypeは1型が42%、2型が57%、3型が1%と小児では既に2型が最多で、近年、1型が有意に減少し、2型が増加している傾向であった。147例に肝生検が行われ、初回実施時の年齢は8.9歳、感染経路は母子86%、輸血7%であった。肝組織の線維化は、F0が33%、F1が58%、F2が9%で、F3-4はなかった。
1986~1995年生(49例) | 1996~2005年生(175例) | 2006~2015年生(124例) | |
---|---|---|---|
診断時年齢 | 76.7か月(約6.4歳) | 43.3か月(約3.6歳) | 13.0か月(約1.1歳) |
母子感染率 | 61% | 92% | 99% |
結論
お問い合わせ先
研究内容に関するお問い合わせ先
〒830-0011 福岡県久留米市旭町67
Tel:0942-31-7565 Fax:0942-38-1792
E-mail:mizuochi_tatsuki"AT"kurume-u.ac.jp
事業に関するお問い合わせ先
日本医療研究開発機構 戦略推進部 感染症研究課
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
Tel:03-6870-2225 Fax:03-6870-2243
E-mail: kansen"AT"amed.go.jp
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。
関連リンク
掲載日 平成29年6月1日
最終更新日 平成29年6月1日