プレスリリース AMED「国際保健課題のモニタリングフレームワークの実現可能性」の成果として制作した「Human Resources for Health Country Profiles: JAPAN―日本の保健医療人材」がWHOの公式出版物としてオンライン公開されました

平成29年10月16日プレスリリース

国立研究開発法人日本医療研究開発機構

概要

国立保健医療科学院の曽根智史次長らのチームは、日本の保健医療システムのモニタリングフレームワーク(評価指標、評価方法等)について体系的なレビューを行い、WHO及び諸外国と比較することで、日本の強みを活かした効果的な国際保健課題のモニタリングフレームワーク作成を目指した研究を行いました。本研究の一環として、我が国の保健医療人材制度の実態把握とその分析結果に基づく政策の立案を推進することを目的に保健医療人材カントリープロファイル「Human Resources for Health Country Profiles: JAPAN」(注1)が作成され、このたび同書がWHO西太平洋事務局の公式出版物としてオンライン公開されました。

なお本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「地球規模保健課題解決推進のための研究事業」の支援により行われました。

1.背景

ユニバーサルヘルスカバレッジ(Universal Health Coverage, 以下UHC)とは、すべての人が負担可能な費用で必要とする基礎的医療にアクセスできる状態であり、今日の国際保健政策の主要な課題です。UHC の達成は、2015年の国連総会で決議された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」においても、先進国、途上国が共通して取り組む課題として示されました。今日、世界中の多くの国々ではUHCの達成、維持に向け、保健医療システムの改革を進めています。WHO(*)は 、UHC、そして保健関連のSDGsを達成するには、保健システム強化が必要であり、保健医療サービスの提供量やその質、アクセスの改善に向けては、保健医療技術の開発のみならず、保健医療人材の数や質などを担保することの重要性を指摘しています。

WHOは、各地域事務局単位で、各国の保健医療人材制度の実態把握とその分析結果に基づく政策の立案を推進することを目的に、「Human Resources for Health Country Profiles(保健医療人材カントリープロファイル)」事業を展開してきました。わが国が加盟する西太平洋地域事務局(WPRO)も、低、中所得国を中心に同事業を進めてきました。しかし、加盟国各国のUHC達成、そして保健医療人材課題解決に向けては、域内の全体像を把握し、広域的な課題の抽出と対応の検討の基礎資料とするため、日本などすでにUHCを達成している国々の情報についても共通の枠組みで取りまとめ、各国と共有することが重要になります。

そこで、今回、WPRO域で初めて、高所得国の保健医療人材カントリープロファイルとなる「日本の保健医療人材」が、AMED地球規模保健課題解決推進のための研究事業(注2)研究開発課題「国際保健課題のモニタリングフレームワークの実現可能性(研究開発代表者:国立保健医療科学院 曽根智史)」の一環として作成されました。

2.研究手法・成果

本カントリープロファイルは、WHOが示す共通テンプレートに従い、保健医療人材の1.供給、2.教育、3.配置(地域や専門分野、性別による偏在等)、4.財政、5.ガバナンスに加え、社会経済状況や人口保健医療の概況等から構成されています。研究班では、医師・看護師等の国家資格24種と、その他わが国特有の保健医療人材について、公表されている各種保健統計資料からデータを収集し、分析を加えました。データ収集、分析の過程では、厚労省国際課・医政局及びWPRO担当者と協議を重ね、データの信頼性・妥当性を検討しました。

プロファイリングの結果、日本では、医師、看護師、保健師等の養成制度の体系化や免許・登録制度の整備など、保健医療人材の量、質を保持するための対応が整えられており、それが、国民皆保険制度をベースとした医療サービス提供体制や、地域保健医療行政体制の基盤になっていることが示されました。

一方で、わが国の保健医療人材の課題として、需要に対する全般的な供給不足や、診療科ごとの偏在、女性医療従事者の離職・復職への対応の必要性などが明らかになりました。また、今日の日本は、世界に類をみない速さで人口の高齢化が進んでおり、世帯構成の変化やライフスタイルや価値観の多様化と相まって、国民の保健医療に関するニーズが多様化、高度化しています。このため、今後は、持続可能な社会保障制度の確立、そして、より質の高い医療提供体制を実現するため、保健医療人材の量、質両面の一層の充実に向けた取り組みの強化が必要になることが示唆されました。

WPRO内の各国では今後、高齢化が進行し、日本と同様の課題に直面することが予想されます。このため巻末で、わが国の介護人材の仕組みを参考資料として紹介しました。

3.今後への期待

WPRO加盟国各国は、現在、生活習慣病による疾病負荷や高齢化の進展など新たな課題と対峙しながら、UHC達成を目指して、保健医療人材の必要数の確保や定着、地域偏在の解消などに向けた制度整備を行っています。加盟国の行政関係者等、保健医療人材課題に関わる多くの人々に本カントリープロファイルが活用されることにより、保健医療人材制度の整備や人材の国外流出への対応など、一国のみでは解決できない課題への解決策を加盟国各国が協働で見出せるようになることを期待しています。

なお、日本をはじめとするWPRO加盟国各国の保健医療人材カントリープロファイルは、WPROのウェブサイトに掲載されています。

参考

注1)書籍情報

図1
図1.Human Resources for Health Country Profiles: JAPAN 表紙

タイトル:

「Human Resources for Health country profiles: JAPAN」

執筆者グループ:
曽根智史、堀井聡子、福田敬、熊川寿郎、岡本悦司、小林健一、種田憲一郎(国立保健医療科学院 ※執筆当時)
ISBN:
978 92 9061 818 8

 

図2.地域別の人口1000人当たりの医療従事者数
(注2)「地球規模保健課題解決推進のための研究事業」について
地球規模の保健課題(感染症対策、母子保健、新型インフルエンザ等への緊急対策、高齢化、生活習慣病など)に関して、疾病の原因究明、予防法の検討、疾病の治療法や診断法の標準化等に関する研究を推進しています。具体的には、我が国においてこれまで蓄積してきた保健医療分野の知見や経験を活かし、先端的な科学技術を活用することにより、諸外国への貢献を図ること、アジア地域を中心とする保健医療に関する研究協力の充実を図ることを目的としていくこと、並びに、国際機関等における規範設定に資するための成果を創出していくことを目指しています。

問い合わせ先

国立保健医療科学院
〒351-0197 埼玉県和光市南2-3-6
次長 曽根 智史
TEL:048-458-6124
E-mail:sonetom“AT”niph.go.jp

AMED事業に関する問い合わせ先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
国際事業部国際連携研究課
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
TEL : 03-6870-2216
Email : chikyukibo“AT”amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

最終更新日 平成29年10月16日