プレスリリース 重症熱性血小板減少症候群の有効な治療法の開発につながる臨床研究成果を発表

平成29年11月9日プレスリリース

国立大学法人愛媛大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

愛媛大学の安川正貴副学長(大学院医学系研究科・教授)が、長崎大学・河野茂学長および国立感染症研究所ウイルス第一部・西條政幸部長とともに自主研究組織を立ち上げ、治療法が確立されていない「重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)(※1)」の新規薬物療法に関する臨床研究を行ってきました。

本研究は、これまでの基礎研究並びに国立感染症研究所が実施した動物実験によりSFTSに有効である可能性が示されている富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が創製した抗ウイルス薬「アビガン錠R」(一般名:ファビピラビル)の治療効果と安全性を調べるため、西日本の医療機関34施設が、地方衛生研究所の協力を得て、平成28年5~12月に実施した医師主導型臨床研究です。

このたび、その研究成果がまとめられ、平成29年10月26日に開催された「第87回日本感染症学会西日本地方会学術集会・第60回日本感染症学会中日本地方会学術集会・第65回日本化学療法学会西日本支部総会」において、愛媛大学医学部附属病院・東太地講師により発表されました。

研究を主導した安川正貴副学長は、今回の研究により、有効な治療法の開発につながる知見を得たと考えています。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」(研究開発課題名:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する診断・治療・予防法の開発及びヒトへの感染リスクの解明等に関する研究)において採択され、公的資金援助をうけて実施したものです。

重症熱性血小板減少症候群の新規薬物療法に関する臨床研究概要

臨床研究では、SFTS患者10名にファビピラビルを5~14日投与したところ、ファビピラビルによる重篤な有害事象は認められませんでした。患者10名中2名が死亡しましたが、8名は回復しています。死亡例は治療開始時の体内のウイルス量(血液中のウイルスコピー量を測定)が高い傾向にあり、すでにSFTSウイルス感染による多臓器不全に至っていたことから抗ウイルス剤の治療効果が得られなかったものと思われます。従って、ウイルス量が高くならない時点での早期診断・早期治療が重要と考えられます。

ファビピラビル投与症例の多くは、速やかな白血球数と血小板数の回復が認められ、治療開始後の血小板の増加が予後の指標となる可能性が示唆されました。また、SFTS患者におけるウイルス量の推移を測定することが出来(下記グラフ参照)、薬物動態と合わせて、ファビピラビルを用いた本疾患への薬物療法に関する貴重なデータとして学会発表に至ったものです。

図1

死亡した2例は血中ウイルス量が高値であった。治癒した患者では速やかなウイルス量の減少を認め、治療開始13日以降はいずれも血中ウイルスは検出されなくなった。

用語解説

(※1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSは、2011年に中国の研究者らによって発見されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスによるダニ媒介性感染症で、我が国においてもこれまでに300例以上が確認されています。重症例では神経症状、出血傾向、血球貪食症候群、多臓器不全などが出現する致命率が極めて高いウイルス感染症です。

お問い合わせ先

本件に関する問い合わせ先

愛媛大学大学院医学系研究科
血液・免疫・感染症内科学講座
教授 安川 正貴
TEL:089-960-5296

AMED事業に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
戦略推進部感染症研究課
TEL:03-6870-2225
E-mail:shinkou-saikou"AT"amed.go.jp

※Emailは上記アドレス"AT"の部分を@に変えてください。

最終更新日 平成29年11月9日