プレスリリース IMMが北三陸塾と連携し健康調査結果を情報提供被災地域の医療情報ネットワークへの成果還元で地域医療に貢献

プレスリリース

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構
NPO法人北三陸塾
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

成果のポイント

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)は、特定非営利活動法人 北三陸塾と連携し、IMMが実施する地域住民コホート調査*1(健康調査)結果の一部について、調査参加者本人の同意に基づき、北三陸ネット*2(北三陸塾が運営する岩手県久慈医療圏の地域医療情報ネットワーク*3)への情報提供を開始しました。(2017年12月1日契約締結)

この連携によって、北三陸ネットに参加する医療機関等で健康調査結果の閲覧が可能となり、調査参加者が医療機関を受診した際、医師が健康情報や病状の変化を把握して適切な診断や治療に活かすことができます。また、過剰な検査を防ぎ、患者の苦痛の軽減や医療資源の節約につながることも期待されます。

背景

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM、機構長 佐々木真理)では、東日本大震災の復興支援事業である東北メディカル・メガバンク計画の一環として、文部科学省、復興庁、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED、理事長 末松誠)の支援の下、2013(平成25)年度から岩手県の被災地を中心とした大規模健康調査を行い、地域医療の復興に貢献するとともに、個別化医療等の次世代医療体制の構築を目指しています。

IMMでは、調査参加者の健康維持・増進のため、調査結果をまとめた報告書を冊子にして一人一人に返却しています。また、各地域の医師会の協力を得て、受診可能な医療機関情報を掲載し検査値に異常がみられる方の受診を勧めるほか、調査結果の統計情報を各自治体に提供するなどして、被災地域における健康づくりを支援しています。

健康調査は2015(平成27)年度末まで実施し、岩手県内で合計31,861名にご参加いただきました(うち久慈医療圏(久慈市、洋野町、野田村、普代村)5,348名)。その後、2017(平成29)年度より2回目の健康調査(詳細二次調査)を開始し、2018年1月末日現在、5,382名にご参加いただいています(うち久慈医療圏2,620名)。

近年、地域における医療・看護・調剤・介護等の連携や災害時の医療情報の保全等を目的に、地域医療情報ネットワークの導入が各地で進められています。久慈医療圏では、北三陸塾が2014年10月にNPO(特定非営利活動法人)として設立され、「医療・介護・福祉に携わる職員を中心とした意見交換・情報共有の場として、在宅及び施設入所者を含む、地域全体の療養が必要な方及び介護が必要な方を関係機関が連携して支援する体制づくりを進める」ことを目的として北三陸ネットを運用しています。その利活用推進の一環として、地域住民コホート調査結果の一部の情報提供を開始しました。(2017年12月1日契約締結)

情報提供の方法

情報提供の対象は、2015(平成27)年度までに久慈地域で健康調査に参加した方のうち、詳細二次調査に参加し、かつ情報提供について同意された方です。

同意は、詳細二次調査結果報告書に同封された情報提供に関する依頼書と同意書を読み、本人が同意書に必要事項を記入の上、北三陸塾に郵送することで取得します。北三陸塾は、同意者リストを暗号化USBでIMMに送付します。IMMは同意者リストに基づいて結果報告書(PDF形式)を抽出し暗号化USBで北三陸塾に移送します。(図1)

北三陸塾が北三陸ネットに結果報告書を登録すると、北三陸ネットに参加している医療機関等のうち、本人が閲覧を許可した医療機関等のみで結果報告書の閲覧が可能になります。本人が同意しない場合、結果報告書が北三陸ネットに登録されることはありません。また、同意した場合でも、許可された医療機関以外での閲覧はできません。


図1 同意取得から結果報告書情報提供までの流れ

情報提供の内容

詳細二次調査の血液・尿検査、アンケート調査、生理機能検査の結果報告書のうち、本人が情報提供について同意した結果報告書のみが対象となります。

なお、東北メディカル・メガバンク計画で実施している遺伝情報をはじめとする上記以外の調査項目について、北三陸塾へ情報提供されることは一切ありません。

今後の展望

今回の情報提供によって、北三陸ネットに参加する医療機関等で健康調査結果の閲覧が可能となり、調査参加者が医療機関を受診した際、医師が健康情報や病状の変化を把握して適切な診断や治療に活かすことができます。また、過剰な検査を防ぎ、患者の苦痛の軽減や医療資源の節約につながることも期待されます。

この連携は、大規模調査研究の地域への貢献や成果の還元、地域医療情報ネットワークの利活用の方法として草分け的な事例になると考えられ、今後他の地域への波及も期待されます。

用語解説

*1.コホート調査:
ある特定の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因や遺伝的要因などと疾病発症との関係を解明するための調査。
*2.北三陸ネット:
2016年3月より北三陸塾が運用開始した地域医療情報ネットワーク。久慈医療圏の病院・診療所・歯科診療所・調剤薬局・介護施設・各市町村の地域包括支援センターを安全なネットワークで結び、医療・介護・福祉に携わる多職種が連携して医療・介護を必要とする方々を支援している。2017年12月現在の参加施設数は66施設、同意書受付数は3933件。電子紹介状、病院間カルテ・データ照会、訪問診療、地域包括、訪問看護などで実績があり、認定看護師によるカンファランス、退院支援、薬局による服薬指導等に利活用されている。
*3.地域医療情報ネットワーク:
ICT(Information and Communication Technology,情報通信技術)を活用した地域の医療機関等を結ぶネットワーク。地域における医療サービスの向上や切れ目のない医療の提供を目的とする。

お問い合わせ先

東北メディカル・メガバンク計画に関して

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構 地域連携・医療情報ICT部門
副部門長 丹野 高三
TEL:019-651-5111(内線5464)
E-mail:ktanno"AT"iwate-med.ac.jp

北三陸塾・北三陸ネットに関して

北三陸塾
事務局長 大川 良三
TEL:0194-53-0056(リハビリタウンくじ内)
E-mail:info"AT"kita-sanriku.org

報道に関して

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構 広報・企画部門
部門長 遠藤 龍人
TEL:019-651-5111(内線5509)
E-mail:ryuendo"AT"iwate-med.ac.jp

AMED事業に関して

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
基盤研究事業部 バイオバンク課
TEL:03-6870-2228
E-mail:tohoku-mm"AT"amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス"AT"の部分を@に変えてください。

掲載日 平成30年2月9日

最終更新日 平成30年2月9日