プレスリリース 岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が未来かなえ機構と連携―気仙医療圏の地域医療情報ネットワークへコホート調査参加者健康情報等を提供開始―

プレスリリース

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構
未来かなえ機構
日本医療研究開発機構

成果のポイント

  • 岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)は、一般社団法人未来かなえ機構と情報提供について連携し、2020年8月下旬より、IMMが実施する地域住民コホート調査*1(健康調査)結果の一部について、健康調査参加者本人の同意に基づき、未来かなえネット*2(未来かなえ機構が運営する岩手県気仙医療圏の地域医療情報ネットワーク*3)への情報提供を開始します。(2020年7月1日契約締結)
  • この連携によって、未来かなえネットに参加する医療機関等の専用端末で健康調査結果の閲覧が可能となり、調査参加者が医療機関を受診した際、医師が健康情報や病状の変化を把握して適切な診断や治療に活かすことができます。
  • 過剰な検査を防ぎ、患者の苦痛軽減や医療資源の節約につながることも期待されます。

背景

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM、機構長佐々木真理)では、東日本大震災の復興支援事業である東北メディカル・メガバンク計画の一環として、文部科学省、復興庁、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED、理事長三島良直)の支援の下、2013(平成25)年度から岩手県の被災地を中心とした大規模健康調査を行い、地域医療の復興に貢献するとともに、個別化医療等の次世代医療体制の構築を目指しています。

IMMでは、調査参加者の健康維持・増進のため、健康調査結果をまとめた報告書を冊子にして一人一人に返却しています。また、各地域の医師会の協力を得て、受診可能な医療機関情報を掲載し検査値に異常がみられる方の受診を勧めるほか、健康調査結果の統計情報を各自治体に提供するなどして、被災地域における健康づくりを支援しています。

健康調査は2015(平成27)年度末まで実施し、岩手県内で合計32,913名にご参加いただきました(うち気仙医療圏(大船渡市、住田町、陸前高田市)6,908名)。その後、2017(平成29)年度より2回目の健康調査(詳細二次調査)を開始し、2020年7月末日現在、22,436名にご参加いただいています(うち気仙医療圏5,352名)。

近年、地域における医療・看護・調剤・介護等の連携や災害時の医療情報の保全等を目的に、地域医療情報ネットワークの導入が各地で進められています。気仙医療圏では、未来かなえ機構(代表理事滝田有)が2015年4月に一般社団法人として設立され、「参加施設間で情報を共有し、住民の皆さまにより安心・安全な医療・福祉・介護サービスをお届けすること」を目的として未来かなえネットを運用しています。その利活用推進の一環として、地域住民コホート調査結果の一部の情報提供を2020年8月下旬より開始します。(2020年7月1日契約締結)

情報提供の方法

情報提供の対象は、2015(平成27)年度までに気仙医療圏で健康調査に参加した方のうち、詳細二次調査に参加し、かつ情報提供について同意された方です。

同意は、詳細二次調査結果報告書に同封された情報提供に関する依頼書(資料1)と同意書(資料2)を読み、本人が同意書に必要事項を記入の上、未来かなえ機構に郵送することで取得します。未来かなえ機構は、同意者リストを暗号化USBでIMMに送付します。IMMは同意者リストに基づき、結果報告書(PDF形式)を外部のインターネットに接続されない端末で抽出し暗号化USBで未来かなえ機構に移送します(下図)。

未来かなえ機構が専用端末で未来かなえネットに結果報告書を登録すると、未来かなえネットに参加している医療機関等の専用端末で結果報告書の閲覧が可能になります。本人が同意しない場合、結果報告書が未来かなえネットに登録されることはありません。

図:同意取得から結果報告書情報提供までの流れ

情報提供の内容

詳細二次調査の血液・尿検査、アンケート調査、生理機能検査の結果報告書のうち、本人が情報提供について同意した結果報告書のみが対象となり、下表の検査項目が報告書単位で一括して情報提供されます(各報告書に含まれる検査項目は下表の通り)。結果報告書には1回目の検査結果も併記されている項目もあり、1回目と2回目の検査結果(4~5年間の健康状態の変化)を比較することも可能です。

表:提供される報告書と検査項目の一覧

なお、東北メディカル・メガバンク計画で実施している健康調査で得られる結果のうち、上記以外の調査項目(例:遺伝情報)について、未来かなえ機構へ情報提供されることは一切ありません。

今後の展望

今回の情報提供によって、未来かなえネットに参加する医療機関等で健康調査結果の閲覧が可能となり、調査参加者が医療機関を受診した際、医師が健康情報や病状の変化を把握して適切な診断や治療に活かすことができます。また、過剰な検査を防ぎ、患者の苦痛軽減や医療資源の節約につながることも期待されます。

この連携は、大規模調査研究の地域への貢献や成果還元の在り方、地域医療情報ネットワークの利活用のモデルの一つとして非常に重要であり、今後他の地域への波及も期待されます。

用語解説

*1 コホート調査:
ある特定の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因や遺伝的要因などと疾病発症との関係を解明するための調査。
*2 未来かなえネット:
2015年4月より未来かなえ機構が運用開始した地域医療情報ネットワーク。気仙医療圏の病院・診療所・歯科診療所・調剤薬局・介護施設・各市町村の地域包括支援センターを安全な仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network)で結び、医療・介護・福祉に携わる多職種が連携して医療・介護を必要とする方々を支援している。現在の参加施設数は73施設(2020年5月末)、未来かなえネットへの同意書受付数は11,676件(2020年4月末)。病院間カルテ・データ照会、訪問診療、地域包括、訪問看護などで実績があり、退院支援、薬局による服薬指導等に利活用されている。(未来かなえネット参加機関一覧
*3 地域医療情報ネットワーク:
ICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)を活用した地域の医療機関等を結ぶネットワーク。地域における医療サービスの向上や切れ目のない医療の提供を目的とする。

お問い合わせ先

東北メディカル・メガバンク計画に関して

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構 地域連携・医療情報ICT部門
副部門長 丹野高三
電話番号:019-651-5111(内線5464)
E-mail:ktanno“AT”iwate-med.ac.jp

未来かなえ機構・未来かなえネットに関して

一般社団法人未来かなえ機構
事務局長 佐藤良
電話番号:0192-22-7261
E-mail:mirai-kanae“AT”rondo.ocn.ne.jp

報道に関して

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構 広報・企画部門
部門長 遠藤龍人
電話番号:019-651-5110(内線5509)
E-mail:megabank“AT”j.iwate-med.ac.jp

AMED事業に関して

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
ゲノム・データ基盤事業部 ゲノム医療基盤研究開発課
電話番号:03-6870-2228
E-mail:tohoku-mm“AT”amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

掲載日 令和2年8月6日

最終更新日 令和2年8月6日