成果情報 NARO(ナロ)ジーンバンクとナショナルバイオリソースプロジェクトのデータ連携による遺伝資源の横断検索システム(PGR-Gateway)―遺伝資源への効率的なアクセスの実現に向けて―

令和元年5月10日成果情報

農研機構
国立遺伝学研究所
京都大学
日本医療研究開発機構

農研機構と国立遺伝学研究所、京都大学は、NAROジーンバンクとナショナルバイオリソースプロジェクトで保存している植物の遺伝資源1)のうち、イネとコムギの遺伝資源について横断的に検索できるシステム(PGR-Gateway)を開発し、2019年1月に公開しました。遺伝資源情報により効率的にアクセスできるようになりました。

遺伝資源は、農産物や医薬品などとして活用する直接的な価値と、地球環境保護に利用する間接的な価値を持つ、将来の人類にとって貴重な財産です。いくつかの国立研究開発法人や公設試験場、大学等では、植物種子などの遺伝資源を収集・保存し、遺伝資源の配布や遺伝資源情報の提供を行っています。遺伝資源の利用者にとって、どこの保存機関がどのような遺伝資源を保存しているかという情報は重要であり、効率的に遺伝資源を探すことができる環境の整備が求められています。

今回、国内の代表的植物遺伝資源保存事業である農業生物資源ジーンバンク事業(略称NAROジーンバンク)2)とナショナルバイオリソースプロジェクト(略称NBRP)3)は、双方が保存するイネとコムギ遺伝資源のデータ(合計でイネ2万7千点、コムギ2万9千点)を横断的に検索できるシステム(PGR-Gateway)を開発し、2019年1月7日に公開しました。

NAROジーンバンクは農学研究の立場から将来の品種改良用の素材として国内外の在来品種や育成品種を中心とした遺伝資源を、NBRPはライフサイエンス研究の立場から野生種や実験系統も含めた幅広い遺伝資源を保存しています。これまでは個別にデータベースを作成し、遺伝資源の情報を公開していました。PGR-Gatewayの公開により、我が国のイネとコムギの植物遺伝資源検索のワンストップ化が実現し、遺伝資源情報により効率的にアクセスできるようになりました。

今後は、PGR-Gatewayに他機関が保有するイネ・コムギ遺伝資源情報を追加したり、対象作物を追加することにより、食料・農業関連の遺伝資源検索の更なるワンストップ化を進めていく予定です。

ナショナルバイオリソースプロジェクトの貢献

NBRP ではNBRP-イネ総合データベース・ Oryzabase(代表機関:国立遺伝学研究所)や NBRP-コムギ総合データベース・KOMUGI(代表機関:京都大学)から、野生種や実験用系統を含む系統情報の提供、並びに、NBRPリソース総合検索APIを提供しました。

PGR-Gateway *2ヶ所から公開

関連情報

予算:
農林水産省平成30年度戦略的プロジェクト研究推進事業委託事業「海外植物遺伝資源の民間等への提供促進」

開発の社会的背景と研究の経緯

遺伝資源は、農産物や医薬品などとして活用する直接的な価値と、地球環境保護に利用する間接的な価値を持ち、将来の人類にとって貴重な財産です。いくつかの国立研究開発法人、公設試験場、大学等は遺伝資源を収集・保存し、配布や情報提供も行っています。遺伝資源の利用者にとって、どこの保存機関がどのような遺伝資源を保存しているかという情報は重要であり、効率的に遺伝資源を探すことができる環境の整備が求められています。NAROジーンバンクではNARO遺伝資源データベース(NAROGBdb)、NBRPではOryzabase(イネ、代表機関:国立遺伝学研究所)やKOMUGI(コムギ、代表機関:京都大学)等のデータベースが整理され、利用者はそれぞれのデータベースを使って目的の遺伝資源を検索しています。しかし、各データベースで検索方法や表示方法などが異なっており、利用者は同じ検索を何度も繰り返す必要があります。遺伝資源の利用者が効率的に見落としなく必要な遺伝資源を検索するためには、関連するすべてのデータベースを横断的に検索できることが理想的です。

そこで、今回の研究では、国立研究開発法人、公設試験場、大学等が保有する植物遺伝資源情報を横断的に検索できるシステムを開発することを最終的な目的として、国内の代表的植物遺伝資源保存事業であるNAROジーンバンクとNBRPの横断検索を可能とするシステムの開発に取り組みました。NAROジーンバンクは農学研究の立場から将来の品種改良の素材に利用できる国内外の在来品種や育成品種を中心に保存しているのに対して、NBRPは国立遺伝学研究所等が主体となってライフサイエンス研究の立場から野生種や実験系統も含めた幅広い遺伝資源を保存しています。横断検索システムの第一弾として、NAROジーンバンクで最も保存点数が多く利用者も多いイネとコムギに関して、NAROジーンバンクとNBRPとのデータを横断的に検索できるPGR-Gatewayを開発し、公開しました。両者の遺伝資源の横断検索が可能になることで、利用者の検索のワンストップ化を実現し、利便性の向上が期待できます。

研究の内容・意義

  1. 今回開発したPGR-Gatewayは、国際連合食糧農業機関(FAO)らが開発し国際的に広く用いられている植物遺伝資源の来歴データの記述形式であるMulti-Crop Passport Descriptors(MCPD)4)を用いています。
  2. PGR-Gatewayでは、NBRPとNAROジーンバンクのイネ・コムギ遺伝資源の来歴データをそれぞれMCPD形式に自動的に変換し、横断検索を可能としました(図1)。データの更新は、各機関のデータベースに対して1日1回自動的に行われ、新しい遺伝資源の追加があればPGR-Gatewayに直ちに反映されます。
  3. PGR-Gatewayでは植物種、作物名・品種名・原産地等の情報から遺伝資源を検索できます(図2、3)。
  4. 検索結果の一覧画面には、NBRPとNAROの該当遺伝資源が表示されます。一覧画面の登録番号には、各機関が遺伝資源に付与したID番号が対応し、各登録番号をクリックすることで、当該遺伝資源の詳細情報が表示されます。
  5. PGR-Gatewayは、NAROジーンバンクのWebサイトNBRPのリソース総合検索サイトから公開しています。

今後の予定・期待

PGR-Gatewayによって、各利用者がNAROジーンバンクとNBRPの保存するイネとコムギ遺伝資源をワンストップで効率的に検索することが可能になります。検索結果から、NAROジーンバンクもしくはNBRPのWebサイトに進み、それぞれの保有する遺伝資源の配布手続きを行うことができます。現在は、原産地情報など植物遺伝資源導入の際に付加されている来歴データのみが検索対象です。特性による検索に関しては、今後の追加を検討しています。また、PGR-Gatewayでは、参加登録機関や対象作物を追加・拡張していくことが可能です。今後は、都道府県との連携も進めていきます。

用語の解説

1)遺伝資源
遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物、その他に由来する素材のうち、現実の、又は潜在的な価値を持つものです。例えば、植物の種子、糸状菌や細菌などの微生物があり、農産物や医薬品などとして活用します。
2)農業生物資源ジーンバンク(NAROジーンバンク)
農業分野に関わる遺伝資源について探索収集から特性評価、保存、配布および情報公開までを行う事業です。農研機構遺伝資源センターを中心(センターバンク)として、全国各地にある植物・微生物・動物・DNA各部門のサブバンクと連携して我が国の食料・農業上の開発および利用等に貢献しています(NAROジーンバンクのWebサイト)。
3)ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として、ライフサイエンス研究の基礎・基盤となる実験素材・系統(動物・植物・微生物等)について、収集、保存、提供および情報公開等を行っています。文部科学省傘下の独立行政法人および大学等が参画しています(ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)のwebサイト)。国立遺伝学研究所はイネ、京都大学はコムギの代表機関です。
4)Multi-Crop Passport Descriptors(MCPD)
国際生物多様性センター(Bioversity International)とFAOが共同で開発した、遺伝資源のパスポート情報の交換を容易にするために広く使用されている国際規格です。最新版は、MCPD V.2.1です。

参考図 


図1:NBRPとNAROジーンバンクのイネ・コムギ遺伝資源についての統合データベース(PGR-Gateway)の構築
それぞれの来歴データをMCPD形式に自動的に変換するシステムを開発し、統合データベース(PGR-Gateway)を構築しました。

図2:NAROジーンバンクからの統合データベース(PGR-Gateway)の横断検索結果
横断検索画面の機関「SHIGEN」はNBRPとして国立遺伝学研究所に、「NARO」はNAROジーンバンクに保存されていることを示します。
 

図3:NBRPからの統合データベース(PGR-Gateway)の横断検索結果
検索結果表示画面の機関「SHIGEN」はNBRPとして国立遺伝学研究所に保存されていることを示します。
 

お問い合わせ先 

研究推進責任者

農研機構遺伝資源センター
センター長 加藤 浩

研究担当者

農研機構遺伝資源センター
竹谷 勝、山﨑 福容
Tel:029-838-7016

情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター バイオリソース部門・植物遺伝研究室
教授 佐藤 豊

バイオリソース情報部門・系統情報研究室
准教授 川本 祥子

京都大学大学院農学研究科
准教授 那須田 周平

広報担当者

農研機構遺伝資源センター 調整室
西川 智太郎
Tel:029-838-8707 Fax:029-838-7054
プレス用E-mail:grc-kikaku"AT"gene.affrc.go.jp

国立遺伝学研究所リサーチ・アドミニストレーター室 広報チーム
Tel:055-981-5873 
E-mail:infokoho"AT"nig.ac.jp

京都大学総務部広報課 国際広報室
Tel:075-753-5729 Fax:075-753-2094
E-mail:comms"AT"mail2.adm.kyoto-u.ac.jp

AMED事業に関するお問い合わせ先

日本医療研究開発機構(AMED)
基盤研究事業部 バイオバンク課
Tel:03-6870-2228 
E-mail:national-bioresource"AT"amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

最終更新日 令和元年5月10日