成果情報 「母集団薬物動態/薬力学解析ガイドライン」策定

成果情報

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)研究支援・推進部 課長補佐 石黒昭博らの研究班は、「母集団薬物動態/薬力学解析ガイドライン」を策定し、厚生労働省及びPMDAのホームページで公開しました。

研究の背景

近年の医薬品開発において、試験デザインや至適な用法・用量を検討する際に、医薬品の投与後の薬物動態(Pharmacokinetics: PK)、薬理反応、有効性又は安全性データの一連の関係について数理学的なモデルを構築し、医薬品の投与から臨床効果が発現するまでの過程を推定する試みとしてModeling & Simulation(M&S)が注目されています。医薬品開発におけるM&Sの主な利用方法は、臨床試験で得られたデータを基にモデルを構築するトップダウンアプローチと、ヒトの生理学的な情報、in vitro試験データ等の生化学的、物理化学的な情報を利用してモデルを組み上げ解析するボトムアップアプローチに大別されます。これらのアプローチの代表的な解析方法として、トップダウンアプローチでは、母集団薬物動態(Population PK: PPK)解析、母集団薬物動態/薬力学(PPK/Pharmacodynamics: PPK/PD)解析や曝露-反応(Exposure-Response: ER)解析、ボトムアップアプローチでは生理学的薬物速度論(Physiologically based PK: PBPK)モデル解析が挙げられ、いずれのアプローチも血中濃度や臨床エンドポイントといった薬剤応答の予測等に利用される方法です。

PMDAに提出された新有効成分含有医薬品の承認申請資料中におけるM&Sの利用状況に関する調査では、集計を開始したH25年度には約60%の申請品目でPPK解析が、約30%の品目でPPK/PD解析又はER解析が実施されていました。また、H26-28年度には約10%の申請品目でPBPKモデル解析が実施されていました。臨床薬物動態を評価するためにPPK解析を実施する際の留意点は「医薬品の臨床薬物動態について」(平成13年6月1日付け医薬審第796号 厚生労働省医薬局審査管理課長通知)により基本的な考え方が示されましたが、近年の医薬品開発でのM&Sの利用状況等から、M&Sの適切な利用を促進するために、最新の科学的知見に基づくM&Sに関する行政指針の必要性が高まっています。

研究の概要と成果

本研究班では、最新の科学的知見に基づくM&Sに関する実用的な行政指針を作成することを目的として、産官学のメンバーから成る班の活動をH27年から開始しました。上記の近年の医薬品開発でのM&Sの利用状況や、欧米の医薬品規制当局によるM&Sに関するガイドラインの作成状況等を考慮して、PPK解析及びPPK/PD解析に関するガイドライン、医薬品のER解析に関するガイドライン、並びにPBPKモデルによる解析及び解析報告書に関するガイドラインの作成に取り組んでいます。この度、最初の指針となるPPK解析及びPPK/PD解析に関するガイドラインの作成を完了し、『「母集団薬物動態/薬力学解析ガイドライン」について』(令和元年5月15日付け薬生薬審発0515第1号)として厚生労働省から通知されたことから、PMDAのウェブサイトにおいてもその通知を公開しました。本通知に示す現時点において科学的に妥当である一般的な方法が、今後の医薬品開発においてPPK解析及びPPK/PD解析を実施する際の参考となり、M&Sの適切な利用促進の一助となることを期待しています。

特記事項

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)医薬品等規制調和・評価研究事業「小児医薬品及び難病等アンメットニーズ医薬品を含む臨床開発等におけるモデリングとシミュレーションの活用に関連する指針等の作成に関する研究」H27-H28年度(研究開発代表者:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審議役(次世代審査等推進・科学委員会等担当) 鹿野真弓)及び同事業「小児及び難病等アンメットニーズ医薬品開発におけるファーマコメトリクスの利活用に関する研究」H29-31年度(H29年度 研究開発代表者:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審議役(次世代審査等推進・科学委員会等担当)鹿野真弓、H30-31年度 研究開発代表者:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 研究支援・推進部 課長補佐 石黒昭博)の一環で行われました。

お問い合わせ先

本研究成果に関するお問い合わせ

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
レギュラトリーサイエンスセンター 研究支援・推進部
企画調整課/先端科学対策課
課長補佐 石黒昭博
E-mail:ishiguro-akihiro"AT"pmda.go.jp

事業に関するお問い合わせ

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
創薬戦略部 医薬品等規制科学課
Tel:03-6870-2235
E-mail:kiseikagaku"AT"amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

掲載日 令和元年9月19日

最終更新日 令和元年9月19日