トピックス 2024年度 HFSP中曽根賞受賞者が発表されました

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国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO)は、2024年度のHFSP中曽根賞がマイケン・ネーダーガード教授に授与されると発表しました。

受賞理由は「睡眠の重要性についての私たちの理解を変えたグリンファティック・システム(glymphatic system)の画期的な発見と解明に関する研究」に対してです。

ネーダーガード教授は現在、米国ロチェスター大学医療センターの神経科学部門・神経外科・神経内科の教授であり、 Center for Translational Neuromedicineの共同所長として同センター内のグリア疾患研究・治療部門の責任者を務めています。さらに、デンマークのコペンハーゲン大学のCenter for Translational Neuromedicineの共同所長であり、同大学のグリア細胞生物学の教授でもあります。

ネーダーガード教授は、グリンファティック・システム(脳における老廃物の処理システム)に関する画期的な解明により、傑出した功績を挙げている研究者として知られており、その研究成果は、神経生物学の従来のパラダイムを突き破り、認知機能の維持において睡眠が果たす極めて重要な役割を明らかにし、睡眠、グリンファティック・システム、神経変性疾患の間の多面的な関係を明らかにしました。

過去 10 年間にわたるネーダーガード教授の画期的な研究により、グリンファティック・システムによって睡眠中に潜在的な神経毒性代謝物が除去されることが明らかになり、科学界は脳の健康、特に睡眠の回復力と神経変性疾患に対する保護的役割について、これまでとはまったく異なる理解へと方向転換しました。ネーダーガード博士は、睡眠中にβ-アミロイドを含む潜在的な神経毒性代謝産物を除去するグリンファティック・システムの役割に注目することで、睡眠研究に新たな道筋を築き、睡眠と神経変性疾患の間の重要な洞察を提示しました。

ネーダーガード教授の先駆的な研究成果は、さまざまな脳疾患の診断と治療のための有望な新しい戦略の継続的な開発を促しており、神経科学の分野に永続的な影響を及ぼし、神経変性疾患の新しい診断ツールと治療法につながる可能性があります。65 歳以上の年齢層が急速に増加している世界において、ネーダーガード教授は、革新的な洞察を提供し、睡眠を通じた治療探求の新時代を先導しました。

「ネーダーガード教授は、『睡眠』が脳の健康を促進し、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの病気の予防に重要な役割を果たす必要不可欠な生物学的機能であるということを解明したことにより、私たちの理解の仕方を恒久的に変えました。このことは2024年のHFSP中曽根賞の栄誉に値する基本的な発見です。」とパべル・カバトHFSPO事務局長が賛辞を述べています。

マイケン・ネーダーガード教授の評価や引用の詳細については、HFSPウェブサイトに掲載されている2024年のHFSP中曽根賞の解説を参照してください。

HFSP 2024年中曽根賞 解説ページ

HFSP 及びHFSP中曽根賞について

国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO)は、生命科学のフロンティアにおける国際的・学際的な共同研究と若手研究者が学際的研究能力を身につけるトレーニングを推進するために1989年に設立されました。その目的は、生命科学に焦点を当てた最先端の学際的研究を振興するために、大陸間に跨がる研究者の共同研究や若手研究者が自身の専門と異なる分野の研究機関に長期間滞在してトレーニングを受けることを推し進めることです。HFSPOは、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、イタリア、日本、大韓民国、ニュージーランド、ノルウェー、南アフリカ、シンガポール、スイス、英国、米国の政府や研究支援機関、ならびに欧州委員会からの財政支援を受けて運営されています。このプログラムでは、これまでに世界中の7,600人以上の科学者に対して共同研究助成及びポスドクのフェローシップを授与しています。

HFSP中曽根賞は、生命科学の最先端の分野で重要なブレークスルーをもたらした科学者を顕彰するために2010年に創設されました。プログラム開始以来、29名のHFSP研究グラント受賞者と4名のHFSP中曽根賞受賞者がノーベル賞を受賞しています。ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの創設を提唱した日本の中曽根康弘元首相の先見の明を私たちに思い起こさせます。
これまで、Karl Deisseroth (2010) 、Michael Elowitz (2011) 、Gina Turrigiano (2012) 、Stephen Quake (2013) 、Uri Alon (2014) 、James Collins (2015) 、Jennifer Doudna 、 Emmanuelle Charpentier (2016) 、David Julius (2017) 、SvantePääbo (2018) 、Michael Hall (2019) 、Angelika Amon (2020) 、Anthony Hyman、Clifford Brangwynne (2021) 、Aviv Regev、Franz-Ulrich Hartl 、Arthur L.Horwich (2022) 、Rotem Sorek (2023) の各氏が受賞されています。

(注)本記事はHFSPOの記事をもとに構成したものです。
https://www.hfsp.org/awardees/hfsp-nakasone-award

本件に関するお問い合わせ先

日本医療研究開発機構(AMED)
国際戦略推進部 国際企画課
Tel:03-6870-2216
E-mail:amed-hfsp"AT"amed.go.jp ※E-mailは上記アドレス"AT"の部分を@に変えてください。

最終更新日 令和6年4月24日