RIOネットワーク(研究公正推進事業) 研究開発代表者:信州大学 市川家國 特任教授 医系国際誌が規範とする研究の信頼性にかかる倫理教育プログラム

近年、国際(学術)誌は医系研究発表内容の再現性の低さに危機感を抱き、「再現性を妨げる人為的原因」と「客観性を奪う原因」を研究計画・実施・解析の全てから取り除くことを目的に、倫理規範を大幅に刷新しました。しかし、このことに対する日本国内における認識は、刷新が最近短時間に行われたということもあり、十分とは言えません。

そこで、当事業(通称:AMED支援 国際誌プロジェクト)では、人を対象とした研究およびその基礎となる動物実験に関与する研究者の方々に、有力な医系国際誌が掲げる倫理規範を身につけて頂くためのプログラムを作成しました。

テキスト教材の中では、国際誌におけるチェックポイントと、参照して頂きたいウェブサイトのリンクも紹介しています。

この教材が、研究に関わる方々が国際的な場で活躍するための一助となることを願っています。

(本サイトに掲載している教材は、平成31年3月31日までに作成されたものです)

PDF教材

領域:1)データの再現性の確保に向けた行動

単元名 内容
a.研究材料とデータの外部研究者への提供義務 単元1 データシェアリング 臨床研究で得られたデータは、同じ問題意識を持つ医師や他の研究者にとっても有用であり、互いにデータを共有したほうが効率よく、治療方法や医学を向上させることができる。本単元では、臨床研究におけるデータシェアリングの意義や規制、データの所有権の問題などについて学ぶ。
b.必要とされる研究とデータの質の担保・保管・管理とデータベースの扱い 単元2 研究のモニタリング モニタリングは臨床研究の科学的な質やデータの信頼性を確保する方法の一つである。人々の人権保護ならびに安全性確保のためには、臨床研究の科学的な品質やデータの信頼性を担保することが欠かせない。本単元では、モニタリング担当者の役割やモニタリングの種類について学ぶ。
単元3 データの管理 臨床研究を適切に計画・実施することで、信頼性の高い成果を得ることができる。収集するデータの入力ミスや入力者によるばらつきを避け、正しいデータ収集が可能になるように努力する業務がデータマネジメントである。本単元では、全研究期間を通したデータマネジメントとデータの管理について学ぶ。
単元4 データのモニタリング 臨床研究で得たデータと医療機関内の電子カルテデータとの整合性は、研究モニタリングにおける原資料の閲覧 (SDV) で検証する。また、臨床データの内容や経時的な動きもモニタリングしたり、研究の妥当性と被験者の安全性を担保するためにデータモニタリング委員会を設置することで、臨床研究をさらに適切に管理することができる。本単元では、これらの中央モニタリング、データモニタリング委員会について学ぶ。
c.誤解を生まない画像提示 単元5 画像操作の制限 本単元では、「不適切な画像操作の背景」とともに、「不適切な画像操作」および「適切な画像操作」を具体的な実験画像の例示を通して学ぶ。
Restrictions on Inage Mnupilation The objective of this module is to understand “the background of inappropriate image manipulation” and “inappropriate and appropriate image manipulations.”
d.誤解を生まない統計解析 単元6 研究の再現性の適正な表現と信頼性 生命医科学系の研究者が知っておくべき、研究の再現性・客観性・信頼性を担保する基本的な事項について概説する。
Reproducibility and Research Integrity Fundamental matters that guarantee the reproducibility, objectivity and reliability of research in life science are described.
単元7 国際誌が求める統計:チェックリストの活用 Nature、New England Journal of Medicineをはじめとする代表的な国際誌で求められる統計チェックリストの内容に触れ、今後の学習内容を俯瞰する。
Statistics Required by International Journals: Use of Their Checklists Your goal in this module is to understand the overall picture of the descriptions of statistical matters required by international journals.
単元8 正しいデータの記述の仕方 論文投稿時には、研究対象集団の特性、取得されたデータの特徴などを要約して報告する必要がある。この単元では、基本的なデータの種類とデータごとの要約方法を学ぶ。
Proper Data Desceiption Learning objectives are as follows;
to understand the types of data,
to learn the difference between the mean and median, and how to use them,
to learn the difference between the standard deviation and standard eror, and how to use them,
to understand the meaning and features of the 95% confidence interval.
単元9 記述統計量とグラフの描き方 取得されたデータを要約し報告する際には、視覚的補助を目的としたグラフ等が用いられる。この単元では、基本的なグラフの作成方法とグラフを用いた適切な報告方法を学ぶ。
Descriptive Statistics and Graphing Learning objectives are to name each graph and explain its significance, and to explain the meaning of error bars and how to use them.
単元10 検定とP値:統計的エビエンスとは 治療や薬剤などの効果を検証する際には、統計的仮説検定が利用される。この単元では、仮説検定の基本的な意味や仮説の立て方、p値などの検定の結果の解釈や注意点を学ぶ。
Testing and P-Values: Statistical Evidence Your goals in this module are to be able to describe the process of hypothesis testing, to explain the meaning of p-values, and to interpret the results of hypothesis testing.
単元11 多重性の問題:研究計画の重要性 複数の仮説、複数のアウトカムについて仮説検定を行う場合には、多重性の問題が生じうる。この単元では、多重検定の問題の基本や対処方法、適切な解析計画の立て方などを学ぶ。
単元12 症例数の設計 研究に参加してもらう研究対象者の数は、研究の計画段階で科学的根拠をもって設定する必要がある。この単元では症例数計算の基本、各状況における実際の症例数計算の方法を学ぶ。
単元13 検定の選び方 統計解析ソフトに関する十分な知識を有しないままに解析を行うことは、再現性のない非科学的な研究結果へとつながる。この単元では、各状況における適切な仮説検定の選び方と、その特徴を学ぶ。
単元14 多変量解析 研究対象者を無作為に各群に割りつける「無作為化 」を行わない研究では、研究対象者の背景が比較群間で不均衡になることで、治療の効果を適切に評価できなくなってしまう「交絡」という現象が起こる。本単元では、研究において無作為化を行う意義と、無作為化が実施できない時に、統計的に交絡を除去する多変量解析の基本について学ぶ。
単元15 線形回帰モデル 本単元では、線形回帰モデルの使い方と解析結果の解釈の仕方、および線形回帰分析を行う際に注意すべき仮定や確認方法、その仮定が満たされていない場合の対策方法を学ぶ。
単元16 ロジスティック回帰モデル アウトカムが「死亡・生存」や「疾患のあり・なし」のような2つの状態を取る(2値変数)場合の多変量回帰分析には、ロジスティック回帰モデルを用いる。本単元では、ロジスティック回帰モデルの基本と使い方、ロジスティック回帰モデルで扱うオッズ比の考え方について学ぶ。
単元17 生存時間解析 ロジスティック回帰モデルにおいて、追跡時間やイベントが発生するまでの時間を考慮せずにオッズ比やリスク比を用いると、誤った解析結果を導いてしまうことがある。本単元では、イベントの発生の有無だけでなく、イベントが発生するまでの時間を考慮に入れたKaplan-Meier法での解析について学ぶ。
単元18 比例ハザード回帰モデル 本単元では、生存時間解析で用いられる多変量比例ハザード回帰分析とその周辺事項について学ぶ。
単元19 無作為化 研究参加者の背景を比較群間で揃えるデザインとして、無作為化比較試験が行われる。この単元では、基本的な無作為化の概要から、一般的に利用されることの多い無作為化手法の違いを学ぶ。

領域:2)データの客観性の確保へ向けた行動

単元名 内容
利益相反の開示と管理 医生命科学研究領域では、資金提供者の目的と科学的・学術的研究の目的とが合致しない場合もあるが、特定の立場の利益のみを重視しない客観的かつ公平な記述が求められる。本単元では、医生命科学研究者の主要な研究成果発表先である国際的な学術雑誌が論文投稿時に求める利益相反に関するさまざまな事項を学ぶ。

領域:3)研究対象の保護へ向けた行動

単元名 内容
a.人権保護 単元1 研究対象者の保護 多くの学術誌は、研究対象者の人権保護という観点に立った投稿・発表規程を設けている。生命医科学系の研究を実施する上では、これらの事項を理解することが不可欠となる。本単元では、学会発表や学術誌への投稿時に研究対象者にどのように配慮すべきか、注意すべき事項について学ぶ。
b.実験動物愛護 単元2 動物を用いた研究論文:国際学術誌の投稿規定とARRIVEガイドライン 本単元では、代表的な国際学術誌の投稿規定のうち、動物実験に関わる規定を参照し、その要求する倫理規範を理解するとともに、動物実験の成果を論文化する際の要点について学ぶ。

領域:4)その他

単元名 内容
a.研究成果のデュアルユースに向けた配慮 単元1 研究がもたらす影響の多様性 デュアルユース研究とは、一義的には、その成果が民生目的と軍事目的のどちらにも使える研究のことを指す。研究者は自分の研究が持つ潜在的な応用可能性を考慮する必要がある。本単元では、デュアルユース研究の歴史を概観しつつ、学術誌が投稿を受け付ける際に研究者に求めている事項について学ぶ。
b.オーサーシップと出版前発表制限 単元2 著者の資格・権利・責任と盗用 学術・研究活動に対する社会の信頼を失墜させないように、学界と学術誌は協力して適正な著者資格の確立に取り組み、その一環として、学術誌はさまざまな投稿規定を策定している。本単元では、著者の資格・権利・責任と盗用について、代表的な医学・生命科学系国際学術誌が定める投稿規定の基本を学ぶ。
単元3 著作権と出版前の発表の制限 本単元では、論文の著作権と発表制限に関して代表的な医学・生命科学系国際学術誌が設ける規定を通して、学術誌が求める倫理規範について学ぶ。

動画教材

領域:1)データの再現性の確保に向けた行動

単元名 内容
d.誤解を生まない統計解析 単元8 正しいデータの記述の仕方 1 EZRのインストール
2 データセットの作り方
3 平均値と標準偏差
4 中央値と四分位範囲
5 標準誤差と信頼区間
単元9 記述統計量とグラフの描き方 6 棒グラフ
7 箱ひげ図
8 ヒストグラム
9 標本(患者)背景表
単元10 検定とP値:統計的エビエンスとは 10 仮説検定とP値
単元11 多重性の問題:研究計画の重要性 11 多重検定問題
単元12 症例数の設計 12 症例数計算 対応のない2群の平均値の比較
13 検出力計算 対応のない2群の平均値の比較
単元13 検定の選び方 14 t検定
15 t検定の仮定
16 データ変換とt検定
17 マンホイットニーのU検定
18 対応のあるt検定
19 対応のあるt検定の仮定
20 ウィルコクソン符号付順位検定
21 分散分析(ANOVA)
22 クラスカルワリス検定
23 相関の検定
単元14 多変量解析 動画なし
単元15 線形回帰モデル 24 単変量の場合
25 多変量の場合
26 線形回帰モデルの残差診断
27 線形回帰分析における被説明変数のデータ変換
単元16 ロジスティック回帰モデル 28 オッズ比の計算
29 交絡因子の考慮
30 交互作用の考慮
31 多変量ロジスティック回帰分析
32 ロジスティック回帰分析 交互作用の考慮
33 ロジスティック回帰モデルによる予測
単元17 生存時間解析 34 Kaplan-Meier曲線
単元18 比例ハザート回帰モデル 35 比例ハザート回帰分析
36 時間依存型の共変量を考慮した生存時間解析
37 競合リスクを考慮した回帰モデル
単元19 無作為化 動画なし

最終更新日 令和元年9月2日