2016年度 研究事業成果集 認知症予防のための調査レジストリ IROOP™(アイループ)

認知症予防のための調査レジストリ運用開始 IROOP™(アイループ;Integrated Registry Of Orange Plan)

戦略推進部 脳と心の研究課

数万人の健常者の認知機能アンケートを実施、予防や創薬に活かす

平成28年7月5日、国立精神・神経医療研究センターは、国立長寿医療研究センターなどとともに、認知症予防を目的とした大規模な健常者登録システム(レジストリ*)「IROOP™」の運用を開始しました。予防を目的とした数万人規模のレジストリは日本で初めてです。半年ごとにアンケートを行い認知機能の経過に関わる因子を調査・解析し、認知症の発症予防を目指しています。

IROOP™の概要

取り組み

認知症の多くは、健常者、前臨床期、軽度認知障害(MCI=MildCognitive Impairment)を経て、軽度・中等度・進行期の認知症へと移行します。最近の研究では環境要因や生活習慣病への取り組みにより認知症の有病率が下がったという報告もありますが、認知症を発症する前の健常者の生活習慣や認知機能の変化の追跡が不可欠といわれています。

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の松田博史・脳病態統合イメージングセンター長らのグループは、国立長寿医療研究センター(NCGG)などとともに、インターネットを用いて登録するシステム(レジストリ)「IROOP™」を開発しました。認知症を発症していない40歳以上の健康な人を対象に、AMEDの認知症研究開発事業として行っています。このレジストリは認知症発症前から認知機能の経過をとらえることで、①認知症のリスク因子を見つけ出し、生活習慣の改善などにより発症予防につなげること、②登録者の中から発症前の「超早期」の人を見つけ認知機能の改善が期待される治療薬の開発につなげるなどに役立てることが目的です。

成果

IROOP™の現在の登録者数は約5000人です。登録を希望する40歳以上の健常者は、IROOP™のホームページから氏名や生年月日、生活習慣や自分や家族の病歴など約160項目の質問事項に回答します。その後、日米で有効性が確認されている簡単な認知機能検査「あたまの健康チェック」を電話で受け、さらに半年ごとに追跡調査を実施します。希望者には開発中の治療薬や予防薬の臨床研究や治験の募集情報などが登録したメールで案内されます。登録や検査は全て無料です。

コールセンターによる認知機能検査

個人情報は識別コードのみで管理され、企業や研究者は個人が特定されない状態でIROOP™に蓄積されたデータを利用できます。

展望

IROOP™は、NCNPやNCGGが実施するその他の認知症レジストリ研究とも連携しています。また、米国の「Brain Health Registry」(BHR)とも協調し、グローバルに研究を展開していきます。

*レジストリ:
医学の前向き研究(開始してから新たに生じる事象を調査する研究)の進め方の一つで、多施設での疾患情報をデータベースに登録し、疾患の原因や経過などについて統計的に検討する方法

最終更新日 平成30年10月5日