2016年度 研究事業成果集 スマート治療室

スマート治療室の実証を東京女子医科大学と広島大学で開始 Smart Cyber Operating Theater

産学連携部 医療機器研究課

IoTで手術の精度を向上し、リスクを低減させた次世代“治療室“

AMEDは、次世代の手術室「スマート治療室」の研究開発を支援しています。「スマート治療室」では、IoT(モノのインターネット)を活用して治療室内のさまざまな医療機器の情報を統合し、医師やスタッフが手術の進行や患者さんの状況をリアルタイムで把握しながら治療を進めることができます。平成28年に東京女子医科大学と広島大学で実証を始めています。

ハイパー版モデルのスマート治療室(東京女子医科大学)

取り組み

スマート治療室は、AMEDの「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」の一環として、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の村垣善浩教授を中心に、広島大学など5大学、デンソーなど医療機器メーカー12社が参加して開発している産学連携のプロジェクトです。今まで、治療現場にある膨大な種類の医療機器は、メーカーも仕様も異なるため情報を統合することは難しく、情報の判断や共有は医師や医療スタッフの経験やノウハウにより差が生じていました。

スマート治療室は産業用のミドルウエアを活用してさまざまな医療機器を連携・接続させることにより、各種の情報を統合してモニターに表示することができます。例えばスマート治療室内で撮影したMRI画像に、病変部位と電気メスや医師の腕の動きを重ねて表示したり、がんの悪性度及び後遺症のリスクの可能性を数値で確認しながら治療を行うことが可能で、病変部位の切り残しや切り過ぎを防ぐことができます。これまで暗黙知となっていた“名医”と呼ばれる熟練医師のノウハウがデータ化され、若手医師にも安全で質の高い治療ができるようになり、患者のQOLにも寄与します。

現状

平成28年6月、スマート治療室のベーシックモデル(術中MRIを軸に基本的な医療機器をパッケージ化した基本仕様モデル)が広島大学に完成しました。ここでは既に脳外科手術などを行い、患者への適用について検証中です。また、時を同じくして、東京女子医科大学にハイパー版モデル(さらに多数の医療機器を加え、手術室全体をネットワーク化した最終目標モデル)が完成しました。こちらでは手術ナビゲーションなどについて実証しています。

展望

「スマート治療室」は、それぞれ異なるメーカーの多様な医療機器をミドルウエアで連携・管理するため、今回研究開発に参加している企業の機器だけではなく、さまざまな機器を接続することができます。平成28年秋から従来接続していた17種類に加え、さらに12種類の医療機器等の接続実証試験を実施しており、ベーシック版のネットワーク機能を強化したスタンダード版を信州大学に導入し、2020年度上市を目指しています。

最終更新日 平成30年10月5日