2016年度 研究事業成果集 コミュニケーションロボットの介護現場での有用性の調査研究

コミュニケーションロボットの介護現場での活用で大規模実証調査研究

産学連携部 医療機器研究課

1000台規模で介護現場に導入し、効果と有用性を調査

産業技術総合研究所を中心とする研究グループは、コミュニケーションロボットの介護現場における有用性について、1000台規模で実証調査研究を行いました。調査結果は平成29年5月にまとまる予定です。調査結果を基に介護現場で実際に求められている機能を特定し、今後のコミュニケーションロボット開発の方向性を明確化することを目指しています。

介護現場のロボット導入写真

背景

国は被介護者の自立度を上げ、介護現場の負担軽減を図るために「ロボット介護機器」の開発と介護現場への導入促進に取り組んでいます。これまでに高齢者の移乗や入浴・排泄支援などの分野では、開発が進み一定の成果が出ています。しかしコミュニケーションを豊かにする「コミュニケーションロボット」では、「笑顔が増えた」「会話が増えた」など主観的な報告しかありませんでした。

AMEDでは「ロボット介護機器開発・導入促進事業(基準策定・評価事業)」の一環として、1000台規模のロボットを使った実証調査研究を実施しました。ロボットの導入が、介護にどのような影響があるかを客観的に評価するためです。

取り組み

産業技術総合研究所 ロボットイノベーション研究センター(研究代表者:比留川博久センター長、研究責任者:大川弥生招聘研究員)と愛知医科大学(分担研究者:木村伸也教授)が学術・医療機関として調査研究を担当しました。最初にAMEDで実証対象となるコミュニケーションロボットを公募し、すでに市販されているロボットから19種類を選定しました。その後、調査に参加・協力する介護施設等を公募し、29の代表機関が採択されました。予備調査やロボット導入前の状況調査を経て、平成28年8月から実際に介護施設にロボットを導入し、導入前後での被介護者の変化について、被介護者の同意のもと、国家資格である介護福祉士などの専門能力を持った評価者が、WHOの国際生活機能分類に基づいて客観的に自立度を評価することにしています。

事業概略図

調査結果は統計的な分析を行い平成29年5月にまとまる予定で、同年5月末に開催するAMEDシンポジウムで速報結果が報告されます。

展望

超高齢社会において、被介護者の自立度を高め、介護者の負担軽減に役立つロボット介護機器の活用に期待が集まっています。調査結果から、介護現場におけるコミュニケーションロボットの有用性やどういったことが開発に必要かを明らかにすることで、新たなロボット介護機器の開発が進んでいくでしょう。

最終更新日 平成30年10月5日