2017年度 研究事業成果集 未診断疾患イニシアチブ(IRUD)

未診断疾患イニシアチブIRUD(アイラッド;Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)

戦略推進部 難病研究課

国内・海外とのデータシェアリングが多数の患者さんの診断確定に貢献

AMEDが主導し、国立精神・神経医療研究センターの水澤英洋理事長が中心となって進めている「未診断疾患イニシアチブ(IRUD)」は、スタートから2年以上が経過、大きな成果を挙げています。拠点・協力病院を430以上に拡大し、全国を網羅する診断ネットワークを構築。さらに2017年度からより正確な診断や治療などに結びつけ、世界に向けて情報発信するための取り組み(IRUD Beyond)も新たに開始しました。

取り組み

診断がつかない病気を持つ患者さんは、何年にもわたって“diagnostic odyssey”(診断をつけるための終わりのない旅)を続けています。2015年に始まったIRUDは、こうした未診断疾患を持つ患者さんとそのご家族の遺伝子を詳細に調べ、その結果をほかの類似の患者さんのデータと照合することにより診断を進めています。2018年には京都大学医学部附属病院など地域のIRUD拠点病院37と協力病院約400施設からなる全国規模の診断体制が整備されました。遺伝学的解析は、国立成育医療研究センターや横浜市立大学など5施設で構成されるコンソーシアムが担います。また、慶應義塾大学病院に設置されたデータセンターを中心としたデータネットワークにより、国内および海外(米国、オーストラリア)とのデータシェアリングが実現しています。これら全国規模の診断体制・遺伝学的解析・データネットワークの3つの柱を、国立精神・神経医療研究センターが統括しています。

■希少・未診断疾患を解明する仕組み(IRUD診断体制)

成果

2017年9月まで累計で未診断患者さんに関連した9517検体(3416家系)を登録、遺伝学的解析とマッチング作業などを行い、800例以上の患者さんの登録後半年以内に解析結果を返却することができました。診断がついた患者さんの中には、希少難病のため、国内では類似の症状を持つ患者さんがおらず、海外の患者さんとのデータマッチングにより診断が確定した6例も含まれています。IRUDによって14の新しい疾患が世界で初めて発見されましたが、うち「武内・小崎症候群」と名付けられたCDC42という遺伝子の変異で巨大血小板を伴う血小板減少、発達遅滞、リンパ浮腫を伴う疾患においては、国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)との連携による効率的な研究推進もあいまって、米国の2歳の男児の診断を確定できました。カナダでは15人がこの病気と判明し、患者家族の会が発足しました。2017年度からは、これまでの成果を発展させる研究開発分野IRUD Beyondを開始しました。柱の一つである「Beyond Genotyping」では、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)などとの連携の下、さまざまなバイオリソースの提供を得て、30~40%にとどまる診断成功率をさらに向上させる取り組みを開始しています。この他、確定された診断を治療にまで橋渡しする「Beyond Diagnosis」、IRUDや難病研究で得られたさまざまな成果などを国内外で情報共有する「Beyond Borders」を合わせた三本柱で、更なるデータシェアリングの仕組みの推進や国際連携の強化を促進します。

展望

IRUDにIRUD Beyondが加わることにより、遺伝学的解析から診断に至るスピードアップを実現し、海外とのデータシェアリングや国際連携を強化し、より多くの患者さんを早期に診断し、適切な治療、ケアにつなげられるよう取り組んでいきます。疾患の原因の解明が進むことにより、新しい治療薬の開発につながることも期待されます。

■IRUD Beyond

最終更新日 平成30年11月15日