2017年度 研究事業成果集 糖尿病・循環器疾患で大規模データベース構築―DREAMS/JROAD-DPC

糖尿病・循環器疾患で大規模データベース構築―DREAMS/JROAD-DPC

戦略推進部 難病研究課

医療の質の向上を目指し、特定の病気の診療情報を収集

AMEDは患者さんの診療情報を全国の病院から収集し、大規模な症例データベースを構築する取り組みをいくつかの疾患で始めています。集められた情報はビッグデータとして解析され、診療の実態調査や有効な治療法の選択、政策提言などを目的とした研究などに役立てられます。ここでは循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業で実施している糖尿病(J-DREAMS)および循環器疾患(JROAD-DPC)の取り組みについてご紹介します。

取り組みと成果

糖尿病や循環器疾患は、重大な合併症や死亡のリスクがあり、健康寿命を損なう、患者数が大変多い生活習慣病です。診療の質を高めるためには、全国の病院の診療実態や患者さんの情報を正確に把握することが必要となります。そこで、全国の患者の診療情報を収集して大規模データベースを構築する取り組みが進められています。

J-DREAMS

糖尿病領域では、国立国際医療研究センターの植木浩二郎糖尿病研究センター長が研究代表者となり、日本糖尿病学会との共同事業、「診療録直結型全国糖尿病データベース事業(J-DREAMS)」を行っています。近年、電子カルテは多数の施設で導入されていますが、施設によりシステムやフォーマットが異なるため、正確なデータを収集することは困難でした。J-DREAMSではこの問題を解決するシステムを構築、糖尿病診療に特化した標準テンプレートを各病院の電子カルテシステムに組み込むことにより、どの病院からでも診療情報を同じフォーマットで自動的に収集できるようにしました。データの格納方式には「SS-MIX2」という標準仕様が用いられ、集められたデータは患者さんの個人情報を匿名化した上でデータベースに蓄積されます。

J-DREAMSでは、糖尿病認定教育施設を中心とする32施設の参加を得て、2015年12月からデータの収集が始まりました。2017年11月時点で3万5129人の患者さんのデータが登録されています。患者さんの検査情報や薬剤情報、さらには合併症情報なども比較検討できるようになっており、例えば患者さんのHbA1cの平均値は7.18%であることが分かりました。

■J-DREAMS

JROAD-DPC

循環器病領域では既に、日本循環器学会が主導する循環器疾患診療実態調査(JROAD)が構築・運営されていますが、さらに、検査、処置、投薬など診療の実態を正確かつ詳細に把握することを目的として、JROADの中にDPC(診断群分類包括評価)の情報を集めた新たなデータベース(JROAD-DPC)を、国立循環器病研究センターの安田聡副院長を中心とするグループが構築しました。

JROAD-DPCが2012年4月から2016年3月までの4年間に収集した解析データは約360万件に及びます。2012年4月から1年間のデータ(610施設、26万1812床、70万4593件、患者さんの内訳は心筋梗塞3万5824例、心不全10万8665例)を用いて解析を行ったところ、診療ガイドラインで推奨されている標準的な薬剤の処方割合は病院間でばらつきがあることが分かりました。全国レベルでのデータを用いて医療の質の評価とその改善に貢献することが期待されます。本事業は、日本循環器学会・日本脳卒中学会が共同で担当するもので、登録事業の推進については二学会が作成した「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」においても記載されています。

■JROAD-DPC

展望

J-DREAMSは規模をさらに大きくする計画で、2021年3月までに100施設の参加を目指しています。JROAD-DPCは脳血管疾患データベースも活用して多疾患罹患の実態解明にも取り組みます。今後、診療の実態把握にとどまらず、治療の最適化や重症化の防止、予防などにつながるさまざまな研究が開始され、患者さんに還元される知見が得られることが期待されます。

*DPC:
「Diagnosis(診断) Procedure(診療行為) Combination(組み合わせ)」の略で病名や治療内容に応じて  診断群分類し、分類毎に1日当たりの入院費用を定めた医療費の計算方式

最終更新日 平成30年11月15日