2017年度 研究事業成果集 アフリカにおける顧みられない熱帯病(NTDs)対策のための国際共同研究プログラム

西アフリカ・ブルキナファソでデング熱媒介蚊制御の集学的研究

国際事業部

ウイルスを媒介する蚊の制御を目的とした実践的技術を開発

蚊を媒介として感染するデング熱は「顧みられない熱帯病(NTDs)」の一つで、都市部をはじめ全世界で感染が拡大しています。東京慈恵会医科大学の嘉糠洋陸教授と西アフリカのブルキナファソのワガ第一大学との共同研究グループは、AMEDの「アフリカにおける顧みられない熱帯病(NTDs)対策のための国際共同研究プログラム」で、デング熱を媒介する蚊の制御を目的とした国際共同研究を進めています。

■現地でのフィールド調査

ブルキナファソ市街地でのネッタイシマカの採集

取り組み

「アフリカにおける顧みられない熱帯病(NTDs)対策のための国際共同研究プログラム」は、2015年5月に東京で開催したグローバル・リサーチ・カウンシル(GRC:世界のファンディング機関長の会議)において、安倍晋三首相がアフリカのNTDs国際共同研究をスタートさせる旨を表明したことを受けて創設されました。

NTDsの一つであるデング熱は、ヤブ蚊の吸血によって媒介され、死に至る合併症(重症型デング熱)に発展することもあります。近年、各国の都市部でも感染が増加しており、世界の感染者は年間3億9000万人に上るとされています。本邦でも2014年に約70年振りの国内流行が発生しました。

「西アフリカ・ブルキナファソにおけるデング熱媒介蚊制御のための集学的研究」の研究開発代表者である東京慈恵会医科大学の嘉糠洋陸教授は、共同研究機関であるブルキナファソのワガ第一大学のAthanase BADOLO准教授と共に、デング熱媒介蚊の制御を目的としたプロジェクトを実施しています。媒介者となるヤブ蚊の診断・疫学・性状・行動について、衛生動物学、昆虫学、ウイルス学、獣医学などを結集した研究に取り組んでいます。

現在最も有効な予防法は媒介となるヤブ蚊の駆除であるとされることから、媒介を制御する要素となる新規技術開発を目的に研究を進めています。


ブルキナファソ村落での蚊の採集

成果

2017年8月、ブルキナファソのワガ第一大学内に東京慈恵会医科大学とワガ第一大学との共同研究室(「慈恵AMEDラボ」)を設置し、より実践的な制御法の開発を加速させています。

■ブルキナファソの「慈恵AMEDラボ」

●病原体を迅速かつ簡便に検出する方法の開発
従来のRNA検出法よりも簡便かつ安定な診断方法として、デングウイルスの一形態であるDNAを標的とした、病原体を迅速かつ簡便に検出する方法を開発しました。媒介蚊1匹から、ウイルスの存在を調べる技術基盤です。2018年度にはこの方法を応用したマイクロチップ型試作機を製作し、有効性の検証を行います。
●媒介蚊の性質をコントロールする方法の開発
細菌など微生物を蚊に取り込ませることで、ウイルスの媒介者とならないようにする方法の開発を目指しています。昆虫に共生する細菌のボルバキアをネッタイシマカに取り込ませることによって、デングウイルスなど蚊が媒介するウイルスを蚊から排除できることが分かりました。

展望

これらの研究成果の他、蚊の遺伝子改変、媒介蚊種等の疫学など、多方面からデング熱媒介を制御する技術開発が進められています。西アフリカでの成果はその他の途上国や日本でも展開可能であることから、早期の実用化が望まれます。

*NTDs:
Neglected Tropical Diseases

最終更新日 平成30年11月15日