2018年度 研究事業成果集 国内医療機関からのヒト(同種)体性幹細胞原料の安定供給モデル事業

企業ニーズに基づく原料供給体制の構築と課題解決への取り組み

国内医療機関からの産業利用可能なヒト(同種)体性幹細胞原料の安定的な供給の実現を目指し、医療機関または医療機関からの原料提供を支援する仲介機関が、製薬企業等へ細胞原料を供給する体制の構築に取り組んでいます。また、本事業に併走して有識者委員会を設立し、倫理的課題や社会的受容性等について議論していくとともに、本事業内で整備された仕組み等の情報を公開することで、再生医療産業の発展への寄与を目指しています。

取り組み

本事業は2018年度より開始し、国内医療機関からヒト(同種)体性幹細胞原料(以下、細胞原料)を安定的に供給するために、体制の整備をモデル的に実証しています。本事業を通して細胞原料の供給にかかる課題を克服し、自立的に持続可能な供給体制を構築することを目標としています。

モデル事業A(図1)では、医療機関が主体となり製薬企業等への細胞原料を供給する体制を構築して、細胞原料の供給を実証しています。モデル事業B(図2)では、仲介機関を主体として仲介機関が医療機関を支援して、医療機関から製薬企業等へ細胞原料を供給する体制を整備し、細胞原料の安定的な供給の実現を目指しています。

ヒト他家細胞の再生医療等製品への利用は、ドナーからの同意に基づき寄託される細胞原料に由来することもあり、法律を遵守し倫理的な観点に配慮し、社会的な透明性や受容性が高い体制で行う必要があります。そのため、本事業では、これらの課題を議論する有識者委員会を設立し、各事業者が直面する課題について議論し研究開発の推進に役立てるとともに、後継事業者に有用となる情報を社会へ発信するなど、再生医療産業の発展につなげるための取り組みを行っています。

なお、本事業は、「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」に含まれるプログラムであり、2018~2020年度の3年間を研究開発期間として予定しています。

図1 モデル事業A:医療機関が主体
図2 モデル事業B:仲介機関が主体

成果

本事業では、モデル事業A/Bの各2機関が、それぞれの特徴を活かしながら、細胞原料の供給体制の整備を進めています。細胞原料の安定的な供給の実現を目指し、商用利用可能な細胞原料取得のためのインフォームドコンセント(IC)説明文書の作成、情報管理体制の整備、原料使用企業との提携、契約体制の検討、社会的な受容性向上のための取り組みなど、着実に成果をあげています。

併走する有識者委員会においては、2017年度に商用利用に対応したIC説明文書例を含む「平成30年度 ヒト(同種)体性幹細胞の安定供給実現に向けた検討委員会 成果報告書」を作成し、AMEDホームページに公開しました。

展望

各事業者は製薬企業等との連携を進めながら、将来的な自立的運営を見据えた細胞原料供給体制の整備をさらに推進していくことが期待されます。

有識者委員会においては、事業者や企業からのニーズや課題を反映しつつ、細胞原料の産業利用における透明性の確保や自立的運営に関する議論を継続していきます。2019年度は、細胞原料の供給に関するガイダンスの作成を開始し、社会への情報発信にもさらに注力していきます。

最終更新日 令和2年6月23日