2018年度 研究事業成果集 AMEDの国際協力への取り組み

海外ファンディング機関との連携を強化し国際共同研究を開始

AMEDは国際的な共同研究開発を展開するため、6カ国と研究協力に関する覚書(MOC)を結び、11の国際コンソーシアムに参加しています。また、25カ国との間で、8事業52課題の共同研究開発を推進しています。国際連携の強化のため、米国ワシントンD.C.、英国ロンドン、シンガポールの3カ所に海外事務所を設置しています。

取り組みと成果

海外のファンディング機関との協力体制の構築と、海外事務所を活用したさまざまな国際ワークショップの開催、国際共同研究を開始

  • 2018年10月、豪州国立保健医療研究評議会(NHMRC)と研究協力に関する覚書(MOC)に署名し、2019年3月にがん、感染症分野をテーマにしたワークショップを共催しました(写真1)。
  • 2015年度にMOCに署名したシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)とは、さらなる連携強化を図るため、シンガポール事務所の協力の下「細胞治療」をテーマにしたワークショップを開催しました(写真2)。
  • 2015年度にMOCに署名した英国医学研究会議(MRC)とさらなる連携強化を図るため、駐日英国大使館とAMEDロンドン事務所との協力の下、MRCとの共催による感染症研究分野に関するワークショップ(写真3)と脳科学に関するシンポジウム(写真4)を開催しました。この成果を生かし、感染症分野および脳科学における日英共同研究を推進します。
  • 2017年4月に署名したスペインとのMOCの下、新たな国際共同研究プログラム(SICORP)としてナノメディシン分野の共同研究を開始しました。2018年11月には日本とスペインの共同公募により3件の共同研究課題を採択し、そのキックオフを兼ねた外交関係樹立150周年のシンポジウムを開催しました。
  • 全米医学アカデミー(NAM)が主導する、世界的な高齢化社会の課題を解決するための優れたアイデアを募るプログラム“Healthy Longevity Grand Challenge”に参画するため、2019年2月にNAMとのMOCに署名しました。世界中の共同参画機関との具体的な活動は2019年10月より始まります。
  • 米国ワシントンD.C.事務所の協力の下、「医工連携」をテーマにしたワークショップを2018年8月と2019年3月の2回開催し、分野融合的な研究領域を含む事業の設計や運営への活用を目指した情報交換を行いました。
  • ライフステージ全体から病態の理解や治療・予防法の研究を進めるため、英国ロンドン事務所の協力の下、オランダ、英国でワークショップを開催し、疫学コホートやバイオバンクの活用について検討しました(写真5)。


写真1 2018年10月、覚書署名を終え、握手をかわす豪州国立 保健医療研究評議会CEOアン・ケルソー教授(写真左)とAMED 末松理事長(写真右)(豪州キャンベラにて)


写真2 2019年2月、「細胞治療」ワークショップに集まった日 本とシンガポールの専門家(東京都中央区にて)


写真3 2019年1月、感染症分野に関する日英合同ワークショップ開催(東京都千代田区にて)


写真4 2019年2月、脳科学に関する日英共同シンポジウム開催(千葉県木更津市にて)


写真5 2019年2月、オランダのフローニンゲン大学のLifelinesコホートにて、バイオバンクやコホート研究に関連する研究者が集まりワークショップを開催(オランダフローニンゲンにて)

国際コンソーシアムにおける活動とAMEDでの事業の推進

  • 2019年2月、がん研究費配分機関国際アライアンス(ICRP)に新たに加盟しました。これでAMEDが加盟する医療研究開発の国際コンソーシアムは11になりました。慢性疾患に関するグローバルアライアンス(GACD)と、慢性疾患に関する国際的な実装研究を推進するためのワークショップを2018年7月に東京で共催しました(写真6)。また、GACDと協調して実施している「地球規模保健課題解決推進のための研究事業」の公募の共同評価会をGACD加盟6機関の参加の下、2019年1月にアルゼンチンで行いました。AMEDが推薦した2名の日本人レビューアを含む合計30名の多国籍レビューアによって英語による共同評価が実施されました。上述のワークショップの効果もあり、日本人研究者による応募提案書の評価点は前年に比べて向上しました。過去のGACDとの国際協調公募で採択された研究課題が、ベトナムで開発している医療従事者の心の健康を支援するICTプログラムによって、抑うつ・不安の予防・改善に効果を示すという新たな知見を得ることができました。このプログラムは今後ベトナムにおける医療従事者の心の健康に関する国家施策として導入されることが期待されています。
  • 日本のゲノム医療実現に向けた各事業の成果を統合する「GEMJapan」プロジェクトが、2019年2月にGA4GH(ゲノミクスと健康のためのグローバルアライアンス)の基幹プロジェクト(ドライバープロジェクト)の一つとして、アジアで初めて採択されました。我が国のゲノム研究プロジェクト群が世界を先導しているとの高い評価を得ています。


写真6 2018年7月、慢性疾患に関する国際的な実装研究を推進するためのワークショップを開催(東京都中央区にて)

国際事業の推進

  • 2018年11月、AMED事業「アフリカにおける顧みられない熱帯病(NTDs)対策のための国際共同研究プログラム」が中心となって日本-アフリカの感染症研究者が集う「第3回国際合同シンポジウム:科学技術およびイノベーションに向けたアフリカと日本との間の感染症研究協力の推進」をガーナで開催しました。感染症研究の情報共有、人的ネットワークの構築とキャパシティ・ディベロップメント等を促進しました(写真7)。
  • 米国ニューヨーク科学アカデミー(NYAS)と連携し、2018年度からインターステラ・イニシアチブを新たに実施しています。これは、世界中から優秀な若手独立研究者(PI)を公募し、その中から3人が一組となって国際的かつ学際的なチームを形成し、2回のワークショップを通じて異分野交流による新規シーズの創出にチャレンジするものです。2018年度はがんと神経科学を対象分野とし、2018年6月と2019年1月に行われたワークショップでは国内外から著名な研究者を10名以上メンターとして招聘、30名の若手PIが参加して国際共同研究計画の立案に挑みました(写真8)。
  • 政府開発援助(ODA)との連携により開発途上国の課題解決を目指すプログラム「SATREPS」では、12カ国と国際共同研究を行っています。このうちタイにおける結核に関する研究開発では、抗結核薬による副作用を予測するための宿主遺伝子検査および結核集団発生調査用の結核菌の全ゲノム配列検査の利用による有用性が、タイの国家ガイドラインへ記載されるなど成果が認められました。


写真7 2018年11月、日本-アフリカの感染症研究協力に関する第3回国際合同シンポジウムの参加者(ガーナにて)


写真8 2019年1月、ニューヨーク科学アカデミーで開催されたインターステラ・イニシアチブのワークショップ。真剣に議論する若手研究者たち(米国ニューヨークにて)

関連リンク

最終更新日 令和2年6月23日